働き方改革

平成31年4月からフリーランスも産前産後は国民年金保険料が免除に!社労士が制度を解説!

2019年4月から国民年金第1号被保険者である女性が出産する際に、産前産後の期間について、国民年金保険料を免除する制度が導入されることになりました。

これは、フリーランスや自営業、パートタイム勤務の方などで厚生年金に加入しておらず国民年金に加入している女性にとっては朗報ではないでしょうか。

今回の制度改正でこれまで、厚生年金保険に加入している労働者については、産前産後期間と育児休業期間中は保険料の免除対象となっていましたが、今後は厚生年金保険に加入していないフリーランスも産前産後休業期間中に関しては保険料免除の仕組みが導入されることになります。

今回はフリーランス必見のこの国民年金保険料の産前産後休業期間の免除制度について解説していきます。

1. 制度が導入された背景

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現在個人の立場で働く「フリーランス」は、1,000万人を超えるといわれています。さらに、民間調査によればフリーランスの経済規模は20兆円に上るとの推計がでています。

多様な働き方が推進される風土が醸成されるなか、フリーランスの存在感は一層増してきています。

一方で、フリーランスについては労働法規制や社会保障が十分ではないという現状があることは以前から執筆してきたとおりです。

企業で雇用される労働者は手厚い社会保障がある一方、フリーランスに対する社会保障はまだまだ未整備です。
妊娠・出産のところの保障について切り取って見てみても、企業で雇用され厚生年金保険の被保険者であれば、申出により産前産後休業期間に加え育児休業期間の社会保険料が本人分・会社分ともに免除されます。

また、要件を満たせば、産前産後休業期間には健康保険から出産手当金、育児休業期間中には雇用保険から育児休業給付金というものが支給され休業中の所得補償も一定程度なされます。

しかし、フリーランスの場合には厚生年金に加入していないため、産前産後休業期間中に出産手当金を受け取ることができませんし、雇用保険にも加入していませんので育児休業給付金を受けることもできません。

ある民間のアンケートによればフリーランスの女性が産後1か月以内に仕事復帰する割合は約45%というような数字も出ているようですが、これもこうした所得補償がないことが大きな要因としてはあるのではないかと考えられます。

こうした企業で働く雇用者とフリーランスの格差について、多様な働き方を実現することで労働参加率を上げるという政府の大きな方針のもと、現在フリーランスについても法的な保護が必要ではないかという方向で検討を始めています。
(詳細は「フリーランスも将来は労働法の保護対象になるかも?フリーランスの保護をめぐる政府の動きを徹底解説!」をご覧ください。)

平成31年4月から産前産後休業期間中の国民年金保険料が免除されるというこの動きも、こうしたフリーランスと雇用労働者の差を是正するという大きな方向性の枠組みでとらえると理解がスムーズかと思います。

2. 制度の詳細

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では、制度の詳細についてみていきましょう。

①対象者は?

保険料が免除される対象となるのは、「国民年金第1号被保険者」で出産日が平成31年2月1日以降の方となります。フリーランスや自営業者については国民年金第1号被保険者となっていますが、その中でも平成31年2月以降に出産日がある方となるので注意が必要です。
なお、本免除は所得による対象除外などはありません。

②国民年金保険料が免除される期間は?

国民年金保険料が免除される期間はどのくらいかというと、「出産予定日又は出産日が属する月の前月から4か月間」になります。
なお、双子などの多胎妊娠の場合は、「出産予定日又は出産日が属する月の3か月前から6か月間」の国民年金保険料が免除されます。

文面だけでは理解しにくいので具体例をだしてみていきます。

例1:出産予定日が2019年7月15日の場合
出産予定日が属する月(7月)の前月は、6月ですので、6月から9月の4か月分の保険料が免除となります。
※双子の場合には、4月から9月の6か月分の保険料が免除されることになります。

例2: 出産予定日が2019年3月15日の場合
出産予定日が属する月(3月)の前月は、2月ですので、2月から5月が本来は保険料免除期間となりますが、法の施行日が2019年4月1日からのため4月、5月の2月分が免除されるということになります。
※双子の場合でも4月、5月の2月分が免除されることになります。

実際にどのくらいの金額の負担が減るかというと、平成31年4月からの国民年金保険料は1万7000円(物価上昇率などは考慮していません)となりますので、7万円程度(多胎妊娠の場合は10万円程度)現状より負担が減ることになります。

厚生年金の被保険者の場合には産前産後休業期間に加え育児休業中も保険料が免除されるため、まだまだ格差はあるところですが、今回の制度導入でも、結構な金額の負担が減ることになりますので忘れずに申請したいところです。
なお、保険料を前納している場合でも保険料が還付されますので忘れずに手続きをしましょう。

さらに、重要なことは産前産後期間として認められた期間は、将来、被保険者の年金額を計算する際は、保険料を納めた期間として扱われますので免除された期間も将来の年金額が控除されることはありませんので安心してください。
申請して損なことは一つもないので絶対に申請しましょう!

③申請方法

ではどのように申請すれば保険料が免除されるかというと、「住民票のある市(区)役所・町村役場の国民年金担当窓口」に申請書を提出することが必要です。
申請書は平成31年4月以降役所で手に入るほか、年金事務所のホームページからダウンロードできるようになるということです。
また、出産前に申請書を提出する場合には、母子健康手帳などの持参が必要ですが、出産後に届書の提出をする場合には、出産日は市区町村で確認できるため原則不要とのことです。

この手続きは、出産予定日の6か月前から提出可能になるので、余裕をもって手続きをしましょう。
※ ただし提出ができるのは平成31年4月から

なお、国民年金の手続きは被保険者ご自身で手続きをすることになりますのでフリーランスの方はご自身で手続きすることになります。

一方で企業の人事担当者の方からみると、企業等が直接手続きに関わるケースはないといえますが、従業員の配偶者や、退職する従業員が該当することもあるかもしれませんので、質問があった場合にはアナウンスしてあげると親切かもしれませんね。

3. おわりに

今回見てきたように産前産後期間中の国民年金保険料免除は、これまでの企業における雇用者とフリーランスの社会保障格差を埋める小さな一歩と言えるかもしれません。

しかし、フリーランスと企業の雇用者との社会保障の格差は依然として大きくなっています。年金だけでなく健康保険についてもその保障内容、保険料など格差があります。

また、フリーランスには労働基準法などの労働者を守る法律は原則適用されません。
そのため、労働基準法はもちろん、労働者の安全や健康への企業の義務などを定めた安全衛生法、業務上・通勤時の怪我や疾病の際に利用できる労災に関する法律も適用されません。

過剰な保護はむしろフリーランスの競争力を阻害するようなことを招きかねませんが、まだまだフリーランスへの保護は未整備で改善されるべき課題が残されています。
今後の動きにも注目していきたいところです。

この記事を書いた人

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寺島 有紀

寺島戦略社会保険労務士事務所 所長 社会保険労務士。 一橋大学商学部 卒業。 新卒で楽天株式会社に入社後、社内規程策定、国内・海外子会社等へのローカライズ・適用などの内部統制業務や社内コンプライアンス教育等に従事。在職中に社会保険労務士国家試験に合格後、社会保険労務士事務所に勤務し、ベンチャー・中小企業から一部上場企業まで国内労働法改正対応や海外進出企業の労務アドバイザリー等に従事。 現在は、社会保険労務士としてベンチャー企業のIPO労務コンプライアンス対応から企業の海外進出労務体制構築等、国内・海外両面から幅広く人事労務コンサルティングを行っている。 2019年4月に、「これだけは知っておきたい! スタートアップ・ベンチャー企業の労務管理――初めての従業員雇用からIPO準備期の労務コンプライアンスまで この一冊でやさしく理解できる!」を上梓。 寺島戦略社会保険労務士事務所 https://www.terashima-sr.com/

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