働き方・採用専門家

フリーランスも将来は労働法の保護対象になるかも?フリーランスの保護をめぐる政府の動きを徹底解説!

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「働き方」は大きな変革期に!

現在、私たちの「働き方」は大きな変革期にあります。

少子高齢化の進展やIT技術の飛躍的革新によって、「週5日、朝は9時にオフィスに出社して夕方18時に帰る」という固定的な働き方だけではなく、テレワークを利用したりクラウドの業務ソフトを利用したりすることで働く場所、時間の制限がなくなり、柔軟な働き方が可能となってきています。

また、昨今一部の大企業の副業解禁、複業・パラレルワークを認めるなどのニュースも耳にするようになりました。
現在個人の立場で働く「フリーランス」は、1,000万人を超えるといわれています。さらに、ある民間調査によればフリーランスの経済規模は20兆円に上るとの推計がでています。

このように現在フリーランスの存在感は一層増してきている一方で、フリーランスについては労働法規制や社会保障が十分ではないという現状があります。企業で雇用される社員が当然に保障される権利の数々が、フリーランスには適用されない例は多くありますし、実際にフリーランスで働いている方は日々実感しているところではないでしょうか。

最近では「フリーランスの保活問題」も話題になりましたが、フリーランスの女性はなかなか保育園入園が難しいという現状、さらに産後すぐに復帰せざるを得ないといった問題も注目されています。

今までは、企業で雇用される社員のように、手厚く保護される対象ではなかったフリーランスですが、実は現在、政府ではこのように雇用ではないフリーランスについても法的な保護が必要ではないかという方向で検討を始めていることをご存知ですか?

3月30日、厚生労働省から「雇用類似の働き方に関する検討会」の報告書というものが公表されました。
この「雇用類似の働き方に関する検討会」が、まさにフリーランスの法的な保護を検討する政府の有識者会議なのですが、今回この検討会で報告書として発表された内容に、今後のフリーランスの保護の在り方についての課題や方向性がまとめられています。

政府は今後、この報告書でまとめられた課題を労働政策審議会という更に上部組織にてさらに検討をすすめていくとしており、今現在、フリーランスで働いている方や、フリーランスを活用している企業様は是非必見の内容となっています。

今回は、この政府でまとめられた報告書の内容をわかりやすくかみ砕いて説明していきたいと思います。

政府の動き 報告書がまとめられた経緯は?

そもそも、なぜフリーランスを保護するべきではという動きが今起こったのでしょうか。この「雇用類似の働き方に関する検討会」なるものが、発足することになったきっかけはなんだったのでしょうか。実は、これは現在国会やメディア等で連日大きな話題となっている「働き方改革」がその大きなきっかけとなっています。

働き方改革といえば、企業に勤める労働者だけのもののようなイメージがあるかと思いますが、実はフリーランスにも関わる内容なのです。そこで改めて、「働き方改革」とはなにかというと、「働く人の視点に立って、日本の労働制度や働き方について、日本の企業文化、日本人のライフスタイル、日本の働くということに対する考え方そのものに手を付けて、労働生産性や労働参加率を向上し、誰もが生きがいを持って能力を発揮できるような一億総活躍社会を目指すための改革」です。

そしてこの「働き方改革」をどう実現していくのかを示したロードマップとして、約1年前の平成29年3月に政府は「働き方改革実行計画」を決定・公表したのですが、この中で、「ワーク・ライフ・バランスを確保して、健康に、柔軟に働くこと」や「ライフスタイルやライフステージの変化に合わせて多様な仕事を選択できること」など柔軟な働き方がしやすい環境整備のために、テレワークや副業・兼業の普及を図っていくことが述べられています。

加えて、この実行計画の中では、昨今のクラウドソーシングの急速な拡大の実情、自宅等で雇用契約によらずに仕事を請け負う非雇用型のテレワーカーが増えている現状、さらにはそうした非雇用型テレワーカーが、仕事内容の一方的な変更や、それに伴う過重労働、不当に低い報酬やその支払い遅延、著作物の無断転用など様々なトラブルに直面している実態について問題視されており、その実態を把握するために、政府は有識者会議を設置し法的保護の必要性を中長期的課題として検討するとしています。

実行計画の言葉を引用しているので、少しわかりくいかもしれませんが、非雇用型テレワーカーはつまり、クラウドソーシングサービスなどを利用してPC等を用いて一定の業務を請け負っているフリーランスと認識してもらえばイメージが湧きやすいと思います。

こうしたフリーランスの実態を把握し、法的保護の必要性を検討するために、平成29年10月から4回にわたって実際に有識者会議が行われ、つい先日、今後の課題や方向性をまとめた報告書が発表されたというわけです。
また、政府のフリーランスへの保護の方向性を理解するために、もう一つ見ておきたい内容があります。

平成29年6月に閣議決定された「未来投資戦略2017 society 5.0の実現に向けた改革」というものの中で、「生産性・イノベーション力の向上につながる働き方の促進」として、
「『雇用関係によらない働き方』について、良好な就業形態となるよう、実態を把握した上で、働き手が自律したキャリア・スキル形成を行うことを可能とする支援策を検討・実施するほか、保護の在り方に関する検討等を行う。こうした取り組みを通じて、企業・組織に属さない働き方を選択肢の一つとして確立させる。」
と述べられており、フリーランスという働き方が「生産性・イノベーション向上につながる働き方」と位置付けられ、働き方の選択肢の一つとして確立させていくべきという政府の方針がよく伝わってきます。

フリーランスという就労形態は今後の日本経済の発展、イノベーション向上の鍵となり、ますます発展していくであろうという見込みのもと、適切に法整備を進めていこうという意気込みのようなものも感じます。
では、次からは、実際に有識者会議で3月末に公表された「雇用類似の働き方に関する検討会」の報告書にはどのような課題がまとめられたのかを見ていきたいと思います。

報告書でまとめられたフリーランスの問題点・保護の方向性とは?

報告書
そもそもフリーランスが置かれている現状は、現在ではなにが問題なのでしょうか?報告書の中で、フリーランスの方へのヒアリング等によりフリーランスが抱える問題点を下記の9点に整理し、この問題点に対し保護の方針を検討していくとしています。

いずれもフリーランスにとっては、「わかる!」といった内容になっているのではないでしょうか。

<報告書で示された、フリーランスが抱える問題点>
①契約条件の明示
→契約条件が文書等で明示がなされていないことが多い

②契約内容の決定・変更・終了のルールの明確化、契約の履行確保
→発注者から一方的な契約条件の決定や変更。また契約について作業途中での一方的な打ち切りなどの解約トラブルがある

③報酬額の適正化
→収入の不安定さや低収入

④スキルアップやキャリアアップ
→雇用関係によらない働き方をしていても能力開発やキャリアアップは重要であり、継続的なスキル開発の重要性や、ビジネス・法務の知識等に関するスキル当も含め何らかの支援が必要

⑤出産、育児、介護等との両立
→育児、子育て等、ライフステージにおける所得の補てんや休暇等が必要

⑥発注者からのセクシュアルハラスメント等の防止
→ヒアリングでは、ハラスメントに関するトラブルの声があり、受けてからのトラブルの解決策が未熟との声

⑦仕事が原因で負傷し、又は疾病にかかった場合、仕事が打ち切られた場合の支援
→事故が発生し怪我や病気になってしまった場合の収入、失業保険が適用されない等へのカバー策の必要性

⑧紛争が生じた際の相談窓口等
→労働者であれば、ハローワークや労働基準監督署、総合労働相談コーナーといった各種の相談先があるが、雇用関係によらない働き方については、自分が労働者であるか否かといった点や、契約、処遇改善等に関して相談する先がない

⑨その他
→その他、仕事が不安定であることから仕事があるときに受注しすぎてしまう。ハローワーク等で仕事の紹介を望む声や、雇用者の健康保険・厚生年金と、フリーランスが加入する国民健康保険・国民年金との格差を是正すべき

フリーランスの公的保障関連の動きを今後もチェック!

上記でまとめられた問題点をみていくと、いわゆる企業に雇用される労働者は通常保護されている内容がない、不足しているということへのフリーランスの方の不安であったり、問題意識が見て取れます。

フリーランスには労働基準法などの労働者を守る法律は原則適用されません。そのため、労働基準法はもちろん、労働者の安全や健康への企業の義務などを定めた安全衛生法、業務上・通勤時の怪我や疾病の際に利用できる労災に関する法律は適用されませんし、企業に雇用されている労働者に比べた社会保障の薄さ等、フリーランスは不安を抱えています。

このように、保護が十分でなかったフリーランスについて、政府が保護を具体的に検討する方針を示したことはフリーランスにとってはとても心強いことです。一方で過剰な保護はフリーランス人材の就労の機会が奪われることにもなりかねません。

今後、引き続き労働政策審議会にてこの問題は継続的に審議されることになっており、保護されるフリーランスの要件等、保護の方針もより具体的になっていくことが予想されます。
フリーランスを活用する企業様、フリーランス人材の皆様も政府の動きには注目していきたいところです。

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この記事を書いた人

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寺島 有紀

寺島戦略社会保険労務士事務所 所長 社会保険労務士。
一橋大学商学部 卒業。
新卒で楽天株式会社に入社後、社内規程策定、国内・海外子会社等へのローカライズ・適用などの内部統制業務や社内コンプライアンス教育等に従事。在職中に社会保険労務士国家試験に合格後、社会保険労務士事務所に勤務し、ベンチャー・中小企業から一部上場企業まで国内労働法改正対応や海外進出企業の労務アドバイザリー等に従事。
現在は、社会保険労務士としてベンチャー企業のIPO労務コンプライアンス対応から企業の海外進出労務体制構築等、国内・海外両面から幅広く人事労務コンサルティングを行っている。
2020年9月15日、「IPOをめざす起業のしかた・経営のポイント いちばん最初に読む本」(アニモ出版)が発売。 2020年7月3日に「Q&Aでわかる テレワークの労務・法務・情報セキュリティ」発売。第1章労務パートを執筆。 2019年4月に、「これだけは知っておきたい! スタートアップ・ベンチャー企業の労務管理――初めての従業員雇用からIPO準備期の労務コンプライアンスまで この一冊でやさしく理解できる!」を上梓。

寺島戦略社会保険労務士事務所HP: https://www.terashima-sr.com/