キャリアドリフトとは?キャリアドリフトの概念やポイントを紹介!
キャリアデザインとキャリアドリフト
「キャリアデザイン」の概念については、日本でも認知が進んでいます。若手の頃から自分のキャリアの計画を立てるように指導をされた方も多いのではないでしょうか。
一方、キャリアデザインについて、以下のようなデメリットを指摘するのが神戸大学大学院の金井壽宏教授です。
コンサルタントなどに『キャリアはデザインするものです』と言われた途端、真面目な人は『そうか、一生をしっかりデザインしなきゃ』と考え込んでしまう。その結果、始終どう生きるべきかと悩み、キャリアは変えるものだということが前提になってしまっている人も少なくないのです。
そして、金井教授が日本で初めて提唱したキャリア理論が「キャリアドリフト」です。
本記事では、キャリアデザインとともに是非覚えていただきたい概念である「キャリアドリフト」について解説をし、具体的な方法をご紹介していきます。
キャリアドリフトとは?
キャリアドリフトの「ドリフト」には「漂流する」という意味があります。
金井教授はこのようにも言います。
何十年にも及ぶキャリアの全体をデザインしきれるはずがありません。時には流された方がいい、いやむしろ流されるべきです。そうしてこそ思わぬ掘り出し物や、新たなチャンスに巡り合って大きく飛躍できる。流されるというと聞こえが悪いですが、ポジティブに捉えれば、偶然も『味方につけながら』、流れの勢いに乗るという意味合いにもとれます。節目でキャリアをデザインしたら、しばらく流れに乗る。この繰り返しが、よいキャリアを築くことにつながるのだと思います。
つまり、節目節目では自分のキャリアデザインを行うものの、節目と節目の間はデザイン(≒予定)していない出来事や偶然の出会いなどをチャンスにしながら柔軟に対応する、「あえて流される」キャリア観です。
このように、キャリアデザインとキャリアドリフトは相反する概念ではありません。キャリアデザインもキャリアドリフトも、キャリアを形成していくためには必要な考え方と言えるでしょう。
金井教授が指摘しているように、キャリアデザインとキャリアドリフトを繰り返すことで、柔軟かつ、自分の理想とするキャリアに近づくことができます。
キャリアドリフトのメリットとは?
キャリアドリフトのメリット①:当初の目標に固執せず、環境の変化に対応しやすくなる
キャリアデザインに沿って職業人生を送っていると、どうしても自分のキャリアデザインと実際の自分の業務との間にズレを感じることが出てきます。
そこで当初の目標に固執しすぎてしまうと、キャリアの可能性が狭まり環境の変化に対応できなくなることもあります。
しかし、キャリアドリフトの考え方を頭において業務を行えば、自分が計画していたキャリアデザインの中では想定していない出来事も、チャンスととらえ柔軟に対応することで新しいキャリアの可能性が開けます。
キャリアドリフトのメリット②:モチベーションが維持しやすい
自らのキャリアデザインに忠実に従おうとするあまり、想定と異なる業務や役割が与えられた場合に仕事へのモチベーションが保てなくなることがあります。その結果、所属している組織へのロイヤリティも感じられなくなり、転職を繰り返し、元々想定していたキャリアデザインからもかけ離れてしまうということもあり得るでしょう。
一方でキャリアドリフトに沿って業務を行っていると、今行っている業務や、打診された新しい役割などを「自分を評価して与えられた業務」「新しいキャリアのチャンス」と考えられるようになり、与えられた仕事に対するモチベーションを高められ、積極的に仕事に取り組めるようになります。
特に日本は欧米諸外国と異なり、就職時に自分の職務内容について明確に提示されない場合が多いです。「キャリアデザインで設定した目標の職務内容以外は絶対にやらない」という姿勢は、日本で仕事をする上では窮屈なものになります。
ある程度流されるキャリアのあり方を受け入れることで自分のキャリアに新たなチャンスが開ける可能性があるのです。
キャリアドリフトの方法とは?
では、キャリアドリフトとは具体的にどのように行っていくのでしょうか?
以下ご紹介する3点を繰り返していくことで、キャリアデザインとキャリアドリフトを繰り返し理想のキャリアを築いていきます。
キャリアドリフトの方法①:業務内容の変更に柔軟に対応しながら「節目」を意識する
キャリアドリフトの一番のポイントは、節目となる時期にキャリアデザインを行ったら、キャリアデザインにこだわりすぎず、業務内容の変更にも柔軟に対応していくことです。
しかし、節目の時期は意識してその時の業務の棚卸しを行います。これまでのキャリアデザインとの乖離を認識して、今後のキャリアデザインを行なっていきましょう。
「節目」となる時期のポイントは、年齢・危機感・メンターからの声・楽しさ・ライフイベントの5つです。
1.年齢
20代・30代・40代で、それぞれ目指す姿や自分の周りの環境は異なるでしょう。そうした年齢の節目に合わせて自分のキャリアデザインを行っていくといいでしょう。
2.危機感
キャリアドリフトをしたまま数年が過ぎ、「自分はこのままで良いのか?」と感じることもあります。そうした危機感は敏感にキャッチし、自分が計画していたキャリアデザインや自分の理想の姿との乖離をしっかり受け止め、今後のキャリアデザインに活かしましょう。
3.メンターからの声
自分のキャリアや仕事に対するメンターがいる方は、ぜひメンターの意見を参考にして下さい。客観的な視点でアドバイスが得られます。
4.楽しさ
仕事をしていて楽しいか?楽しい瞬間があるか?という点はその仕事の適性を測る上で重要な指標です。逆に仕事に面白さを感じられないなら、キャリアデザインの再検討が必要な時期と言えます。
5.ライフイベント
結婚、出産、介護など、ライフイベントがあった時にもキャリアデザインを再検討していきましょう。家族の関わり方、仕事とプライベートの配分等、多くの変化が求められる時期です。
キャリアドリフトの方法②:自分の信念に基づいた方向修正を
今ご紹介した「キャリアの節目」には、自分の気持ちや感覚が大きく関わってきます。そして、「自分の気持ちや感覚」を大切にすることは、自分が目指すキャリア像を築いていく上で非常に重要になります。
計画立てたキャリアデザインを完璧に実現することが本来の目的ではなく、自分のなりたい姿・社会貢献を実現することがキャリアにおける自分の目的のはずです。
節目に感じた自分の気持ちや感覚を大切に、自分の信念に基づいてキャリアデザインの方向修正を行っていきましょう。
キャリアドリフトの方法③:新しいキャリアデザインを信じて全力で取り組む
自分の感覚に基づいてキャリアデザインのアップデートを行ったら、その時得た仕事に全力で取り組みましょう。
キャリアデザインのアップデートによって部署の異動を願い出たり、転職をしたという場合もあるでしょう。また、異動や転職等がなくても、キャリアデザインをアップデートしたことにより、今取り組んでいる業務への姿勢が変化していると思います。
このようにキャリアデザインのアップデートを行い、必要なアクションを取った後は、その時与えられた仕事に全力で取り組んでいくことが大切です。
キャリアドリフトを理解して変化に柔軟に対応しよう!
キャリアドリフトの概念や方法についてご紹介してきました。キャリアデザインをしてもその計画通りに進まないとお悩みの方や、ジョブローテーションが多い職場で勤務している方などには非常に有効な手段となりえます。
単に言われるがまま、職場の良いようにふるまうということではなく、節目でのキャリアデザインをしながら、ゆるやかに自分のキャリアを形成していく。
キャリアドリフトの考え方を取り入れながら、無理なく自分のキャリアを構築してはいかがでしょうか?
また、フリーランスの方がキャリアドリフトとキャリアデザインを繰り返すなかで、クライアントを変えたい・新しいスキルを得たい場合、個人ではそれが叶わずもどかしい思いをされる方もいらっしゃると思います。
そんな方には、業務委託案件を中心に扱う人材サービスへ登録することも検討してみましょう。フリーやパラレルキャリアで十分な報酬を得ているプロを多数見てきたキャリーミーでは、プロのアドバイザーが転職以外のキャリアの選択肢についてアドバイスさせていただきます。(登録無料)
この記事を書いた人
- 渡部 梓
大学卒業後アパレルメーカーで販売、ディストリビューター(在庫管理、換金計画策定等)、店舗支援を担当する。結婚退職後、転居し地方公務員へ。個人住民税課税業務に従事。第一子育休中に再転居により公務員を辞し、無職での保活と子連れの再就職活動を経験する。その後アパレルメーカーでのディストリビューター業務の傍らCARRY ME経由でライティング活動を開始。現在は某企業の社内広報業務を行いながらCARRY MEにてライティング関係の業務委託案件を請け負うパラレルキャリア実践者。プライベートでは二児の母。