働き方改革法案可決!具体的には今とどう変わる?
かねてから審議されていた「働き方改革法案」が6月28日、可決されました。では今後、具体的にはどう私たちの働き方に影響していくのでしょうか。
この「働き方改革法案」の成立に伴い、多数の法律改正(労働基準法・労働安全衛生法・労働契約法など)がおこなわれます。
今回はこの中から、重要な点を中心に解説いたします。
目次
①新設 特定高度専門業務・成果型労働制の成立【施行日:平成31年4月1日】
【概要】
いわゆる、「高度プロフェッショナル制度」(以下「高プロ」)といわれている制度です。
職務が書面等にて明確に定められている者で、この職務が高度に専門的であり、一定の年収(1,075万円)以上の労働者については、下記の要件を満たすことで労働時間(一日8時間・週40時間を原則とする労働時間の規定や時間外・休日労働に関する規定等)の規制を受けずに働かせることができ、また休憩に関する規定、時間外・休日・深夜の割増賃金に関する規定も適用除外となります。
つまり、管理職同様の労働時間規制の適用除外に加え、深夜勤務の割増賃金の支払いについても不要となります。
【要件】
手続き:労使委員会にて必要事項の決議を行い、労働者本人の同意を得ること
(上記の決議は行政官庁に届ける必要がある。)
休日確保:年間最低104日以上(かつ4週4日以上)の休日を確保すること
下記の健康確保の措置のうちいずれかを講ずること
- インターバル措置(終業時刻から、次の始業時間の間を一定時間以上あける措置)
- 在社時間等の上限措置
- 2週間連続の休日確保措置
- 臨時の健康診断実施措置
なお、「高プロ」適用対象となる業務に関しては、今後厚生労働省令にて定められるとのことですが、「業務に従事した時間と成果との関連性が強くない」業務とされており、次のような業務が想定されています。
金融商品の開発業務、金融商品のディーリング業務、アナリストの業務(企業・市場等の高度な分析業務)、コンサルタントの業務(事業・業務の企画 運営に関する高度な考案又は助言の業務)、研究開発業務 等
高度プロフェッショナル制度は上手に利用することで、時間ではなく成果で評価される働き方を希望する労働者に対しては労働生産性の向上や残業代の削減といったポジティブな効果があることが見込まれます。
一方、いくらでも労働させてよい」制度といった誤った理解を生じさせない様、労働者自身の自律的な働き方が可能となるよう留意して運用する必要があります。
さらに、今回可決された法案では、以前から審議されていた法案内容に加え「本人の同意撤回」が可能となりました。労働者本人からの事後的な「高プロ」適用拒否の意思表示も可能となりましたので、企業としては、より慎重な対応が求められます。
②変更 フレックスタイム制の見直し【施行日:平成31年4月1日】
フレックスタイム制とは、一清算期間内で総労働時間を設定し、その範囲内で始業及び終業の時刻を労働者の決定に委ねる制度です。
現在、このフレックスタイム制の「清算期間」は最長1か月とされていますが、この上限が「3か月」に延長されます。
※1か月を超える清算期間を定めるフレックスタイム制の労使協定は、行政官庁への届出が必要です。
つまり、例えば繁忙期1か月間は1日8時間以上勤務し、残りの期間は1日5時間といった短時間勤務として、3か月の中で総労働時間を調整するといった、労働者自身による柔軟でメリハリのついた働き方が可能となります。
原則、清算期間において定められた総労働時間を超過しなければ時間外労働の割増賃金は発生しませんので、1~3か月間の中で繁閑のある業務に従事する労働者が利用することで、ワークライフバランスの確保及び残業代の抑制につながるのではないでしょうか。
しかし、使用者が始業・終業時刻を画一的に決定するような運用はできませんので、ある程度自身の裁量で業務を行える労働者に限る必要はあります。
なお、フレックスタイム制を適用した場合でも、休日に関しては1週1日以上(もしくは4週4日以上)を取得させる必要がありますので留意してください。
以上の①~②に関しては、企業側にもメリットのある制度設立または見直しとなりますが、一方③以降に関しては、企業が行うべき義務となります。
③ 新設・義務 時間外労働の上限規制【施行日:平成31年4月1日(中小企業は平成32年4月1日)】
時間外労働の上限が、原則「月45時間・年360時間」とされ、通常予見することのできない業務量の大幅な増加等により臨時的に労働させる必要がある場合には、休日労働を含んで「月100時間未満(※1)・年720時間・2~6か月における期間の平均が月80時間以内(※2)」と定められました
法律的な拘束力のない「基準」という形で定められていた時間外労働の上限が法律に明記され(※1)及び(※2)の内容に違反した場合については罰則(6か月以下の懲役または30万円以下の罰金)も設けられました。
従来36協定の特別条項では、月100時間以上の時間を設定することも可能であり、いわば合法に月100時間超の時間外・休日労働を行わせることが出来ました。
しかし今後は、臨時的で特別な事情のある場合であっても月100時間未満で協定を締結し、これを遵守する必要があります。
(建設事業や医師等に関しては一定期間適用が猶予され、また新技術の研究開発業務に従事する者に関しては、当該規制が適用されません。)
≪要企業対応≫
・36協定の内容変更(必要に応じて)
④ 変更・義務 中小企業における月60時間超の時間外労働に対する割増賃金の見直し【施行日:平成35年4月1日】
平成22年の労働基準法改正により定められた、月60時間超の時間外労働に対する割増賃金を50%とする規定は、従来、中小企業は適用を猶予されていました。
この猶予が平成35年4月1日より撤廃されますので、未対応の企業は、忘れずに対応する必要があります。
≪要企業対応≫
・就業規則や賃金規程等の変更
・給与計算実務の対応
⑤ 新設・義務 年次有給休暇の確実な取得義務について【施行日:平成31年4月1日】
会社は、年次有給休暇を10日以上付与される労働者について、5日分を、付与日から1年以内に取得させることが義務となります。
当該5日間については、会社が、時季を指定して取得させる必要があります。
※労働者が自身で取得した年次有給休暇及び計画付与による年次有給休暇の取得日数については、この5日間から除くことができます。
本規定に違反した場合には罰則(30万円以下の罰金)もあるため、一年間の年次有給休暇取得日数が5日未満の労働者に関しては、管理し、休暇取得させていく必要があります。
一人ひとりの付与日数を管理するのが煩雑ということであれば、これを機に、年次有給休暇の計画付与による夏季休業やリフレッシュ休暇等を導入し、全社的に取得を推奨するのも一案です。
≪要企業対応≫
・就業規則の変更
・年次有給休暇計画付与の協定締結(必要に応じて)
⑥新設・努力義務 勤務間インターバル制度の普及促進について【施行日:平成31年4月1日】
勤務間インターバル制度とは、終業時間から、翌始業時間までの時間(つまりインターバル)を設定する制度です。
例えば、インターバル時間を11時間と定めると、23時に終業した場合、翌日10時までは勤務させることが出来ません。
当該制度に関しては、あくまで現状は努力義務にとどまり、法的拘束力はありません。しかし勤務間における一定時間の確保を図ることで、睡眠時間・生活時間の確保が可能となり、他の働き方見直しの取り組みとともに利用することで、よりワークライフバランスに資すると考えられています。
「高プロ」導入に際しては、勤務間インターバル制度が健康確保措置の選択肢のひとつとして設定されていますので、導入を検討するのも一案です。
以上、主な改正内容を記載いたしました。
おわりに
報道等では、注目度の高い「高プロ」ばかりが取り上げられがちですが、時間外労働の上限規制等企業が義務として取り組む必要がある内容も多数あります。こうした新たな義務は、長時間労働抑制を目的としたものとなっています。
日本における従来の「時間=賃金」といった働き方は、今後継続することが難しくなっていきますので、将来的に、企業として働き方をどう考えていくか、各労働者の評価をどう行っていくかを再考するタイミングではないでしょうか。
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