働き方・採用専門家

外部のプロフェッショナル人材を上手に活用するためのポイント 

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企業の人材不足には外部のプロ人材活用がカギ!

企業の人材不足・採用難が話題となっています。

有効求人倍率とは、厚生労働省が「職業安定業務統計(一般職業紹介状況)」において、毎月発表している数値なのですが、これは下記の式で算出されています。

有効求人倍率=月間有効求人数÷月間有効求職者数

かみ砕いて言えば、「ハローワークでの求職者1人あたりに何件の求人があるか」ということを示しています。この有効求人倍率は、リーマンショック後の2009年に年平均最低0.47倍を記録してからは増加傾向を続けており、2017年の年平均は、1.50倍となり、平成30年2月の数値をみると、1.58倍となっています。実は、バブル期最高の年平均1990年の1.43倍となっているので現在はバブル期を上回る「売り手市場」状態ということになります。

また、完全失業率も減少しており2017年平均で2.8%となっています。(2009年の年平均は5.1%)こちらも1990年の年平均は2.1%ですので、バブル期に近い完全失業率の低さを記録しています。このように、企業としては「採用が難しい、よい人材がとれない」というのを肌感覚で感じていることと思いますが、統計上からもくっきりと人材不足の状況が読み取れます。更に政府主導で議論がなされている働き方改革とあいまって、労働者の多様な働き方、柔軟な働き方へのニーズは高まっており、企業に勤めながら別の仕事も取り組む「副業」、複数の仕事を同時に請け負う「フリーランス」などを代表する外部人材への関心は高まっています。

外部人材の活用が社会にイノベーションを生む!

イノベーション
この「人材不足・採用難」と「多様な働き方への関心」に「ITの発展」が加わることにより新しい潮流が生まれようとしています。これまで固定的な雇用管理を行ってきた大企業でも社員に副業を認める企業が増えてきたことにより、これまで大企業に囲い込まれており外部市場に流出することの少なかった能力の高い優秀な社員を、人を集めることに苦労を強いられることの多いスタートアップ・ベンチャー企業や中小企業においても副業・複業採用の枠組みにより活用できることになったわけです。

通常、優秀な人材はその基礎的な能力や知識・大企業で培われたノウハウに加え、豊富な人脈ネットワークを持っていることも多く、スタートアップ・ベンチャー企業にとっては、非常に魅力的な人材となります。また、労働者側としても、これまで関わることのできなかったスタートアップ・ベンチャー企業での経験は自分の知見や人脈が広がりキャリア形成においてもプラスになります。そのため、モチベーション高く業務に積極的な姿勢で取り組むことができるわけです。

彼らに副業を認めた企業にとっても、自社の社員がさらに知見や人脈を広げ、その能力を自社の業務に生かしてくれることで、社内で新たなアイディアが生まれる等の効果を期待できます。受け入れ側の企業にとっても、彼らが持つ能力を自社で生かしてもらうことによって、社内体制の強化を期待する経営者の方も多いのではないでしょうか。

このように外部のプロフェッショナル人材が流動的にさまざまな企業に関わることで、企業相互にイノベーションが生まれ、社会全体に良い潮流が生まれることが期待できます。また、現在雇用難なこともあり、これまで副業やフリーランスなど、外部のプロ人材を活用してこなかった企業にとって「うちも副業・フリーランス人材を活用してみようか」というインセンティブも以前より働きやすくなっていますし、より使いやすいクラウド業務ソフト等が日々開発されており、働く場所などの制限を受けずに柔軟に働く環境も整っています。このように、今まさに企業にとっては、副業・フリーランス人材の活用を本格的に検討すべき条件が整っていると言えます。

外部人材の上手な活用のために

イノベーション
上記に述べたように、今まさに企業にとっては、外部のプロ人材の活用を本格的に検討するチャンスなのですが、企業は少し気を付けなければならないポイントがあります。

「偽装請負」という言葉を聞いたことがありますか?「偽装派遣」「偽装委託」など、発生している事実上の状態は同じであっても、言葉上では様々な名前が存在しているためややこしいのですが、ざっくり言えば、会社で労働者として雇用しているのと変わらない実態があるにもかかわらず、就労形態や契約名を偽装して、本来は労働者に対して果たさなければならない会社としての労働基準法上の責任等を回避しようとすることを言います。

つまり、フリーランスの話で言えば、業務委託されたフリーランスが実質的に自社の労働者と変わらない働き方をしている場合を「偽装請負」と呼んだりします。業務委託者は通常労働者ではないため、通常の社員のように社会保険・雇用保険の加入や労災加入等の必要はなく、さらに労働基準法や最低賃金法なども適用されません。

また、現在の日本の雇用環境では通常雇い入れた労働者については、労働契約を解消すること、とりわけ解雇などはその要件は厳しくなっている一方、業務委託者については労働者のような契約解消の厳しい規制などはありません。このようなメリットを享受するために、実態は労働者であるのに、業務委託者として取り扱うことが「偽装請負」が発生してしまう構造です。こうした「偽装請負」は違法となり、労働局の指導対象、罰則の対象となってしまうことがありますので、十分な注意が必要です。

具体的には、フリーランスが下記の基準に当てはまっている場合に問題となります。
(昭和60年 厚生労働省「労働基準法研究会報告 労働基準法の「労働者」の判断基準について」より)

  1. 指揮監督性についての判断基準
    ①仕事の依頼・業務従事の指示等に対する諾否の自由がない。
    ②業務遂行上の指揮監督がある。
    ③勤務時間・勤務場所等の拘束性がある。
    ④他人による労務提供の代替性がある。

  2. 賃金性(報酬の労務対価性)の判断基準
    ①報酬が労働時間の長さによって決まる。
    ②欠勤した場合には報酬から控除される。
    ③残業をした場合には割増手当が支給される。

  3. その他の労働者性を補強する要素
    ①機械・器具の負担がない。
    ②専属性が高い。
    ③社会保険料の控除や所得税の源泉徴収公租公課の負担がある。
    ④服務規律や福利厚生等の適用がある。

例えば、具体的に仕事の進め方を企業が決めたり、オフィスに必ず9時から17時まではいるように義務づけたり、報酬を時給で決めていたり等は偽装請負とみなされるリスクが高くなります。
また、良かれと思ってPCを貸与したり必要な器具を貸与したり、交通費を負担してあげたりしているというお話をよく聞きますがこれらも注意が必要です。
上記の基準は総合的に勘案され労働者性を判断するので、一つその基準に当てはまっているから直ちにだめということではないのですが、必要な器具を貸与する場合でもレンタル料金を徴収したり、交通費は自分で負担してもらった方がリスクは低減します。すでに業務委託契約を結んでいるという企業は、今一度この点を確認してみると良いかもしれません。

適正な外部人材の活用が大きなメリットを生む

外部人材の活用はメリットが多くこれからも進んでいくものと考えられます。人材不足・雇用難の今、自社に足りない専門的な知識や、ノウハウや人脈をもたらしてくれ、成果へコミットする意識の高い外部人材は、大変貴重です。適正な業務委託契約を結ぶことにより、企業内で活躍してもらうことができれば、企業にもたらすメリットは非常に大きく、心強い存在となるでしょう。

そのためにも上記で述べたような、業務委託者が労働者としてみなされることのないようにポイントを押さえることは、無用なトラブルを防止するために重要です。
企業はこうしたプロ人材を、単なる雇用の調整弁のように考えるのではなく、対等な経営のパートナーとして自社で迎え入れるという意識を持つことが、フリーランス人材の活用の成功のポイントとなり、偽装請負問題等のリスクの低減にもつながるものと考えられます。

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この記事を書いた人

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寺島 有紀

寺島戦略社会保険労務士事務所 所長 社会保険労務士。
一橋大学商学部 卒業。
新卒で楽天株式会社に入社後、社内規程策定、国内・海外子会社等へのローカライズ・適用などの内部統制業務や社内コンプライアンス教育等に従事。在職中に社会保険労務士国家試験に合格後、社会保険労務士事務所に勤務し、ベンチャー・中小企業から一部上場企業まで国内労働法改正対応や海外進出企業の労務アドバイザリー等に従事。
現在は、社会保険労務士としてベンチャー企業のIPO労務コンプライアンス対応から企業の海外進出労務体制構築等、国内・海外両面から幅広く人事労務コンサルティングを行っている。
2020年9月15日、「IPOをめざす起業のしかた・経営のポイント いちばん最初に読む本」(アニモ出版)が発売。 2020年7月3日に「Q&Aでわかる テレワークの労務・法務・情報セキュリティ」発売。第1章労務パートを執筆。 2019年4月に、「これだけは知っておきたい! スタートアップ・ベンチャー企業の労務管理――初めての従業員雇用からIPO準備期の労務コンプライアンスまで この一冊でやさしく理解できる!」を上梓。

寺島戦略社会保険労務士事務所HP: https://www.terashima-sr.com/