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会社員が副業をする際の注意点を社労士が解説!

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副業解禁が話題!会社員が副業を行うことが身近になると必要な労務上の注意点とは

副業が話題になっている昨今、大手企業でも副業を解禁することも増えています。
副業は以前よりも、より一般的、身近なものになってきています。

副業紹介サービス、副業マッチングサイトなどの副業をめぐる関連サービスも増えてきており、「副業をやってみたい」と興味を持っている方もかなり増えてきている印象を受けます。

今回は、「働く方目線で副業を行う際の労務上の注意点」を解説いたします。

会社員の副業:副業開始前に現在働いている企業のルール(就業規則)を確認

政府が副業を推進している中、企業も社員の副業を公式に認めるケースも増えてきていますが、副業を認めるか、認めないかというスタンスは会社によって異なります。

そのため、会社として「うちは副業は認めない」というスタンスを取っている企業もいまだに多く存在しています。

まずは自社が副業に対してどのようなスタンスなのかを確認することが第一ステップです。

◆会社が副業を認めているかどうかはどのように確認すればよい?

自分が働いている企業が副業を認めているかいないかについては「就業規則」を確認しましょう。

就業規則は10名以上労働者(正社員、契約社員、アルバイトなど)がいれば策定・労働基準監督署への届出が義務付けられており、社員が見られる場所に保管しておく義務があるものです。

多くの企業で就業規則内に「副業・兼業」「競業避止」といった項目があり、こちらに副業について記載がなされているケースが多くなっています。

もし就業規則が見当たらない、あっても副業について記載がないようであれば、直接人事部・管理部に確認しましょう。

会社の就業規則に副業はOKと記載があった場合(「特段申請不要で副業OK」「申請・許可があればOK」など)

会社として副業を禁止していないため、労務トラブルとなる危険性は低く、安心して副業を始めることができます。

なお、「申請・許可があればOK」といった立て付けで副業を認めている場合には必ず会社所定の方法で申請・許可を取得してから行いましょう。
特に誓約書の提出を求めているケースも多く、こうした書類を会社に提出することになります。

会社の就業規則に副業はNGと記載があった場合も副業の種類によっては交渉の余地あり?

残念ながら、会社としては副業を認めていないスタンスということになります。

副業に関しての情報が多く発信されるなか「会社が認めていなくても、憲法の職業選択の自由の保証があるため、副業は禁止できないはず」という認識は、働く方の間ですでに広まっています。

この点につき就業時間外の余暇時間をどう過ごすかまでは企業として制約できないというのは正しいのですが、一方で就業時間中には働く方には当然職務専念義務がありますので、制約できます。

また、副業が就業時間外であっても本業の職務に影響があるようであれば、これも制約できると考えられます。

さらに競業に該当するようなものは、企業利益を害することからこちらも当然制約できます。

どうしても副業がしたい場合で、本業に支障も来さず、競業にも該当しないということであれば、交渉してみる価値はあると思います。

副業を行う上で会社の業務に支障を来さないといったことや、機密を保持するといた内容の誓約書を提出することで、認められるケースも多くあります。
会社も公には副業NGにしていても、副業をする理由、副業内容などで個別に認めるというケースもありえます。

ただ、会社が副業を認めないので、すでに内緒でやってしまっている・・・という方も現に多く存在しているかもしれません。

会社に黙って行う副業=「伏業」をしたことのある方が26%いるといった民間調査結果も存在しています。
(株式会社フクスケ 副業実態調査)

内緒でやればいいというインターネット上の発信も多く見受けられますが、会社との信頼関係が崩れてしまうケースもあります。

できる限り許可をとってから(どうすれば許可が出るのかという議論を含め)行っていただくことを個人的にはお勧めします。

会社員の副業:副業開始後も日々チェックをして本業と副業を両立

無事副業を認めてもらったという場合でも、下記3点は必ず守るという意識を持ちセルフチェックを定期的に行う必要があります。

これが守られない場合、会社から副業の許可を撤回される可能性のほか、就業規則に基づき懲戒に該当する可能性もあります。

①副業が本業に支障を来していないか?

労働者には職務専念義務というものがあります。これは就業時間中は業務に専念しなければならないという義務のことで、例えば仮に副業をしていなかったとしても、会社にいる間ずっとネットサーフィンをしているといった場合、職務専念義務違反に問われ、最悪の場合普通解雇のケースもあります。

職務専念義務の観点上、本業の就業時間中に副業を行うことは避けなければなりません。また、本業の就業時間外であっても、副業でいつも夜中まで就労し疲れ果て、本業に身が入らず、パフォーマンスが下がるといった場合も職務専念義務に反していると考えられます。

副業が本業に支障を来すような過度とならぬよう、常に本業とのバランスをとるようにしましょう。

②副業の業務範囲が本業の競業となっていないか?

たとえば、会社に許可をとった副業の当初は本業とは全く関係なかった業務であっても、副業の範囲が広がった結果、本業に近しい業務になっているというケースも多くあります。もしくは、副業許可取得当時は本業先が行っていなかった業務であったのが、いつのまにか本業先が事業範囲を広げていたといったケースもあります。これは特に大企業が本業先の方は要注意です。
この場合、知らず知らず競業に該当しているケースもあります。

副業従事者の心構えとすると「常に本業先がどういった事業を展開しているのか」には注意を払っておきたいところです。

③副業が本業の機密保持に反していないか?

副業に慣れてくると副業での関係先企業などに本業で仕入れた情報を話してしまっていたりするケースがあります。機密保持は在職中はもちろん、退職後も課されているケースが多く、本業を退職した後もこの点留意しておきたいところです。

副業解禁企業は増加中!会社員の副業は、会社との信頼関係の構築で効果が高まる!

CARRY MEのプロ人材とは

筆者の顧問先でも多くの企業で副業を解禁しています。

そうした企業を見ていると、副業している方がそれぞれ本業とも良い関係を築いているケースが多く、またある研究によれば「社外活動を経験している人の方が、会社への評価が高い」というデータもあります。

筆者個人としては、社員が副業を行うことによって本業先も副業社員の人脈やノウハウなど、得られるメリットも多くあると感じているところです。また、それにすでに気づいている企業も多くなってきていると感じます。

副業を始めたい方にとってどうしても現在の本業先が認めてくれないということもあるかもしれません。

こうした場合、前述のとおり黙って行うという選択肢もあるかもしれませんが、副業の価値を理解している企業に転職してから副業を行ったほうが企業・個人双方にとって良い選択なのではないかと個人的には考えています。

労務トラブルという点からみても、こちらのほうがよっぽどリスクが低いように思います。

働き方が多様化している中で、個人も企業も過渡期にいます。
より良いキャリアの選択ができるよう、個人も企業も真剣に考えていく時代が来ています。

【寺島戦略社会保険労務士事務所 書籍紹介】

2019年4月12日に「これだけは知っておきたい! スタートアップ・ベンチャー企業の労務管理――初めての従業員雇用からIPO準備期の労務コンプライアンスまで この一冊でやさしく理解できる!」が発売されました。

これだけは知っておきたい!スタートアップ・ベンチャー企業の労務管理

これだけは知っておきたい!スタートアップ・ベンチャー企業の労務管理

著者名
寺島有紀
出版社
アニモ出版
出版日
2019年4月12日
定価
1,800円(税別)

【本書の構成】
PART1◎ベンチャー企業の労務管理の全体像
「ベンチャー企業にとって労務管理はなぜ重要なのか」
PART2◎ステージ別/ベンチャー企業の労務管理
「会社がやらなければいけないことを知っておこう」
PART3◎ベンチャー企業の労務管理ケーススタディ
「どんな点に注意したらいいの? 早わかりQ&A」
PART4◎ベンチャー企業の海外進出の必須知識
「海外赴任者の労務管理で留意しておくべきこと」

本の購入はこちら

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この記事を書いた人

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寺島 有紀

寺島戦略社会保険労務士事務所 所長 社会保険労務士。
一橋大学商学部 卒業。
新卒で楽天株式会社に入社後、社内規程策定、国内・海外子会社等へのローカライズ・適用などの内部統制業務や社内コンプライアンス教育等に従事。在職中に社会保険労務士国家試験に合格後、社会保険労務士事務所に勤務し、ベンチャー・中小企業から一部上場企業まで国内労働法改正対応や海外進出企業の労務アドバイザリー等に従事。
現在は、社会保険労務士としてベンチャー企業のIPO労務コンプライアンス対応から企業の海外進出労務体制構築等、国内・海外両面から幅広く人事労務コンサルティングを行っている。
2020年9月15日、「IPOをめざす起業のしかた・経営のポイント いちばん最初に読む本」(アニモ出版)が発売。 2020年7月3日に「Q&Aでわかる テレワークの労務・法務・情報セキュリティ」発売。第1章労務パートを執筆。 2019年4月に、「これだけは知っておきたい! スタートアップ・ベンチャー企業の労務管理――初めての従業員雇用からIPO準備期の労務コンプライアンスまで この一冊でやさしく理解できる!」を上梓。

寺島戦略社会保険労務士事務所HP: https://www.terashima-sr.com/