今さら聞けない「フレームワーク」基本の“き” 第2回 〜製品ライフサイクルとPPM〜
仕事をする上で、うまく使えればとても便利な「ビジネスフレームワーク(以下、フレームワーク)」。前回は「絶対的に正しいフレームワークはない」「ただし情報整理や思考の伝達・会議でうまく使えば便利」という前提を踏まえ、基礎的なフレームワーク3つ「3C」「4P」「STP」についてお話しました。
今回は、自社の商品・サービスを俯瞰的に把握する時に便利なツールとして、「製品ライフサイクル」と「プロダクト・ポートフォリオ・マネジメント(以下、PPM)」をご紹介します。
もう知っているよ!という方も、基礎の見直しとしてご活用ください。
時間軸で製品の動きを見る「製品ライフサイクル」
製品ライフサイクル(プロダクトライフサイクル)は、商品やサービスが市場で生まれてから成長し、最終的に衰退していくまでのプロセスを表したフレームワークです。
商品やサービスを生物のように例えているため「ライフサイクル」と名付けられています。
多くのフレームワークは、その時点を「スナップショット」で分析するのに対し、製品ライフサイクルは市場導入から衰退までを「時系列で動的に」とらえる点が特徴。この特徴があるからこそ、将来起きていく事柄を予測して、事前に手を打つ時に便利なツールです。
一般的な製品ライフサイクル理論では、製品の段階を「導入期」「成長期」「成熟期」「衰退期」の4段階で捉えます。また、縦軸に売上・利益を、横軸に時間軸を取って、売上曲線や利益曲線を示します。
ただ、この線を描いただけでは意味がありません。
重要なのは、4段階それぞれで取るべき戦略が変わるという点です。それぞれの段階が「どのような状況」で「どんな層が購買している」のか簡単に見ていきましょう。
「製品ライフサイクル」の4段階
1:導入期
導入期は、製品が市場に出てすぐの頃。市場での認知度が低く、多くの企業や担当者が名前すら知らない状態です。
この段階で製品・サービスを導入するのは「新しいものをトライするのが好き」な企業か、「どうしても、そのサービスが必要で必死に探している」企業です。このような人たちを下記のように呼びます。
<イノベーター>
新しい製品・サービスが好きで、社会であまり知られていないものを、まっ先に試してみる層。
<アーリーアダプター>
他社の導入事例・実績がなくても、必要な製品・サービスであれば積極的に導入する層。「みんなが使っているから…」という選び方はしない。
2:成長期
製品の認知度が上がり、普及していく段階です。このようなときに製品を導入するのはアーリーマジョリティと呼ばれる人たちです。
<アーリーマジョリティ>
実利主義者で、製品・サービスが実用的かどうかを「実績や事例」を踏まえて検討する層。この層にとって「導入期」では他社事例が少なすぎます。「成長期」になると情報が増えるので採用のハードルが低くなります。
3:成熟期
市場が成熟し、利用者が上限になりつつある中で、価格が下がるなどして売上が減り始めます。ここで導入をするのはレイトマジョリティと言われる、保守的な層です。
<レイトマジョリティ>
新しいものには懐疑的で、「他社も使っている」という理由で、物事を購入する層。他社追随型とも言える。
4:衰退期
成熟期で上限に達した利用者や売上は、代替サービスなどの登場により減っていきます。新規導入や検討を行う企業が少ない中、ここで購入する層をラガードと呼びます。
<ラガード>
新しいものには非常に懐疑的な保守主義者。
このように、製品のライフサイクル4段階は状況も、購入する層も異なるため、それに合わせて仕掛けるべき戦略を選ばなくてはなりません。
※4段階それぞれで登場した購買層については「イノベーター理論」という別のフレームワークがあるので、そのご紹介の時に更に詳しく触れたいと思います。
複数の事業を俯瞰的に把握するPPM
製品ライフサイクルのご紹介をしたところで、PPMというフレームワークもセットでご紹介します。製品ライフサイクルで自社の製品・サービスの段階を「時系列」で見ながら、PPMで「スナップショット」の現状把握をする。これをセットで活用すると、理解が深まります。
PPMは複数の事業を持つ企業が、自社の限りある資源をどのように配分すべきか考える時に使われるツールです。「市場の成長率」と「相対市場占有率」の2軸で分析するので、マッピングのような形で分かりやすく表現できます。
PPMはボストン・コンサルティング・グループが1970年代に提唱した経営管理手法です。コンサルティング会社の中で定番フレームワークとなったのは、表現の分かりやすさもあると思います。
説明文だけでは分かりにくいので、実際に見てみましょう。
上記の通り、PPMでは縦軸に「市場成長率」、横軸に「市場占有率」をとり、事業を4象限に分類します。象限を分けることで、自社が運営している事業がどのようなバランスになっているかが把握しやすくなります。また状況が把握できるため、資源の配分をどうするべきかアクションが決めやすくなります。
PPMの4象限
この4象限について、もう少し具体的に見てみましょう。
1:金のなる木
市場占有率の高さから安定的な売上・利益を確保することができます。ただし、市場拡大が見込めないため、資金の追加は生産的ではありません。「現在は儲かっていても、投資は控えたい」事業がここに入ります。
製品ライフサイクルにおける、成熟期から衰退期に当たります。
2:花形商品
成長率、占有率ともに高いため、売上・利益を多くもたらします。多くの場合、市場の魅力から競合が多く存在していて、占有率保持と拡大のためには投資を続ける必要があります。
占有率を維持できていれば「金のなる木」へ。維持できないと「負け犬」になるポジションです。
3:問題児
成長率は高いのですが、占有率が低い事業がここに当たります。市場が魅力的な中、競合よりもシェアを伸ばせば花形商品となる可能性があるため、投資が必要となります。
成長率が下がると、「負け犬」になってしまうため、中長期的な視点を含めて投資判断をしなくてはなりません。製品ライフサイクルの導入期〜成長期に登場します。
4:負け犬
成長も市場占有の拡大も難しい事業を「負け犬」と言います。どちらも難しいのであれば、撤退を検討する必要があります。製品ライフサイクルの成熟期〜衰退期にある状態です。
PPMを便利に使うために
PPMの図に各事業をプロットする時は、売上の大きさに合わせて円を描きます。そのため複数の事業を客観的に把握し、比較ができるのです。1つの図で「市場の成長率」「相対市場占有率」「(現在の)売上」3つを分かりやすく把握できるなんて、とても便利ですね。
製品ライフサイクルやPPMなどのツールを活用して情報を整理すれば、有限である経営資源の配分や、事業強化、撤退などが検討しやすくなります。次の一手を決めるために、現状把握は常に必要なもの。製品・サービスの今を俯瞰して理解しましょう。
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この記事を書いた人
- 丸山 夏名美
- PR、マーケティング業界でコミュニケーションの仕事をする中、「人を理解する」「人に伝える」ことの魅力を知る。 ライターとして日経BP社「IT pro」のスマートフォン特集、PR代理店メディアのトレンドビジネス特集、街の魅力を伝えるcowcamo magazine「街の先輩に聞く!」など社会トレンド、ビジネス、マーケティングをテーマに連載・執筆を行う。趣味の写真を楽しみながら、物撮りや取材写真の対応ができるように学習中。