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iDeCo(イデコ) とは?税制改正の内容や確定拠出年金のメリットを社労士が解説!

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iDeCoを活用した資産形成で、豊かな老後に備えよう!

新型コロナウイルス感染症の流行により、経済の落ち込みが深刻化しています。

それでなくても日本は、少子高齢化の影響による産業構造の変化、国際化や情報化による就業構造の変化など、さまざまな社会環境の変化の真っただ中にいます。

さて、金融庁が国民に対して呼びかけている「貯蓄から資産形成へ」というスローガンをご存じでしょうか。こうした厳しい環境の中では、年金等の将来に向けた社会保障制度が今までと同じように機能するとは限りません。

今後は、一人ひとりがしっかりとライフプランを立て、「自助努力」「自己責任」のもと、自分の将来へ備えていくことが必要です。

資産形成には様々な手法がありますが、中でも注目が集まっているのはiDeCo(イデコ:individual-type Defined Contribution pension plan/個人型確定拠出年金)です。2020年3月に財務省から発表された「令和2年度税制改正」では、長期化する高齢化や就労の拡大・多様化等を踏まえて、iDeCoを含む私的年金についても改正が行われました。

今回の記事ではiDeCoの概要、および「令和2年度税制改正」における企業年金・私的年金の改正について確認していきます!
中小企業の事業主にとってメリットの多い、「iDeCo+」(イデコプラス)という制度もご紹介します。

そもそもiDeCoとは?

iDeCoとは、公的年金(基礎年金(1階部分)、厚生年金保険(2階部分)など)にプラスして給付を受けられる私的年金(3階部分)の制度の1つです。私的年金のため、加入は任意です。

加入した場合は掛金の拠出から運用までを全てを自分で行い、掛金とその運用益との合計額をもとに給付を受け取ることができます。ただし掛金の積み立ては60歳まで、給付は60歳以降とされている点に注意が必要です。

受給額は運用成績によって変動しますが、iDeCoと公的年金を組み合わせることで、より豊かな老後を送ることができるといえます。

iDeCoのメリットは、大きな税制優遇です。iDeCoに加入した場合、加入者は拠出時、運用時、給付時のすべてのタイミングで税制優遇を受けることができます。詳細は以下の通りです。

①拠出時:
加入者が拠出した掛金額は、全額所得控除(小規模企業共済等掛金控除)、 「iDeCo+」を利用し事業主が拠出した掛金額は、全額損金算入として非課税となります。

②運用時:
金融商品の運用益は課税(源泉分離課税20.315%)対象となりますが、確定拠出年金内の運用商品の運用益については、特別法人税課税扱い(現在課税停止)として非課税となります。

③給付時:
受給年齢に到達して確定拠出年金を一時金で受給する場合は「退職所得控除」、年金で受給する場合は「公的年金等控除」の対象となります。どちらの受取り方法でも控除の対象です。

一方デメリットは、
・一度加入すると拠出する掛金の減額はできても停止はできない
・受け取りは60歳以降にしかできない
という点が挙げられます。

しかし60歳に達するまで強制的な資産形成を余儀なくされるという観点からすると、これらも一つのメリットと考えられるでしょう。

「令和2年度税制改正」におけるiDeCoの改正について


2020年3月に財務省から発表された「令和2年度税制改正」では、企業年金やiDeCoを含む私的年金制度に複数の改正が入りました。

いずれも「より企業年金や私的年金の加入者の間口を広げる」改正となり、こちらも「公的年金だけに頼らず、個人で資産形成を」との国民へのメッセージであると受け取れます。

iDeCoに関する改正点のうち、主なものを3つ見ていきましょう。

加入可能年齢の引上げおよび受給開始時期の選択肢拡大(2022年5月~)

前述のとおり、現行ではiDeCoの加入可能者は60歳未満の者までとなっていますが、こちらが65歳未満の者まで引上げます(いずれも国民年金の加入者であることが必要です)。
これに伴い私的年金を受け取る年齢についても改正が入ります。iDeCoを含む確定拠出年金は現状70歳までに受け取ることになっているものを、70歳を超えても受取可能とされます。

「中小事業主掛金納付制度(iDeCo+)」の対象範囲を拡大(2020年10 月~)

「中小事業主掛金納付制度(iDeCo+)」とは、企業年金の実施が困難な中小企業がiDeCoに加入する従業員の掛金に追加で事業主掛金を拠出できる制度です。
こちらについて、制度の対象範囲が現行の100人以下から300人以下に拡大されました。「iDeCo+」は、福利厚生の充実にまで手が回らない中小企業にもお勧めできる制度で、詳細については後述します。

企業型DC加入者のiDeCo加入(2022年10月~)

現在、企業型DC(企業型確定拠出年金、企業が掛金を従業員の年金口座に積み立て、従業員がそれを運用する制度)加入者でiDeCoに加入できるのは、現行労使合意に基づく規約の定めがある企業に限られています。
ほとんどの企業型DCの規約ではiDeCo加入について触れられておらず、加入は実質困難な状況にありました。これを改め従業員本人が希望すればiDeCoに加入できるようになります。

誰しもが豊かな老後生活を望みますが、少子高齢化が進む今、公的年金の支給水準は今後も下がる一方であると考えられます。そんな中、私的年金の一つであるiDeCoやiDeCo+の加入対象者が広がることは非常に良いニュースであるといえるでしょう。

中小事業主掛金納付制度(iDeCo+)とは?加入者だけでなく事業主にもメリットが!

iDeCo+は、従業員が個人で加入するiDeCo(個人型確定拠出年金)に、拠出限度額(23,000円)の範囲内で、加入者が拠出する掛金に上乗せして事業主が掛金を拠出できる制度です。

従業員の老後をより豊かにできることに加え、税制面では、事業主が拠出した掛金は全額が損金算入(非課税)とされる嬉しい制度でもあります。

中小企業にとって、独自で3階建ての企業年金を用意するのは厳しいといえますが、公的な枠組みの中でiDeCo加入者に掛金を上乗せ、という形であれば実施のハードルも下がるかと思います。

私的年金の重要性が高まっている今、自社が応援してくれるのであれば個人でもiDeCoに加入してみようという労働者は多いのではないでしょうか。福利厚生の充実は労働者のワークエンゲージメントにも大きく寄与します。

しかし、従業員300人以下の企業なら必ずしも実施できるというわけではありません。
導入企業は、次の①から⑤の要件を全て満たす必要があるため、注意が必要です。

①従業員300人以下であること。(同一の事業主が複数の事業所を経営している場合、全事業所の従業員の合計が300人以下であること)
②企業型確定拠出年金を実施していないこと。
③確定給付企業年金を実施していないこと。
④厚生年金基金を実施していないこと。
⑤従業員の過半数で組織する労働組合があるときはその労働組合、従業員の過半数で組織する労働組合がないときは従業員の過半数を代表する者に、iDeCo+を実施することや掛金額について同意を得る(労使合意をする)こと。

実施にあたっては、事業主は労使合意のもと、国民年金基金連合会に対して手続を行います。ほかにも、社内規程の見直しや事業主掛金の拠出額の取り決め、内容の従業員周知等、実施体制を整備しておくことが必要となります。

改正を機に iDeCoやiDeCo+の活用で従業員の資産形成を促そう!

いかがでしたでしょうか?
多くの人々にとって、退職後の総収入の大部分を「年金」が占めるようになるのは事実です。老後の生活を考えるうえで、公的年金および私的年金の知識は欠かせません。
事業主の皆様には従業員の方々の経済面での心配を個人任せにせず、iDeCoやiDeCo+等、メリットの多い制度でぜひ従業員の資産形成を応援していただきたいと思います。

【参考】
iDeCoの概要/厚生労働省
iDeCo公式サイト
「令和2年度税制改正」(令和2年3月発行)
yahooニュース
書籍:今日からはじめるライフプラン 令和元年度版

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この記事を書いた人

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寺島 有紀

寺島戦略社会保険労務士事務所 所長 社会保険労務士。
一橋大学商学部 卒業。
新卒で楽天株式会社に入社後、社内規程策定、国内・海外子会社等へのローカライズ・適用などの内部統制業務や社内コンプライアンス教育等に従事。在職中に社会保険労務士国家試験に合格後、社会保険労務士事務所に勤務し、ベンチャー・中小企業から一部上場企業まで国内労働法改正対応や海外進出企業の労務アドバイザリー等に従事。
現在は、社会保険労務士としてベンチャー企業のIPO労務コンプライアンス対応から企業の海外進出労務体制構築等、国内・海外両面から幅広く人事労務コンサルティングを行っている。
2020年9月15日、「IPOをめざす起業のしかた・経営のポイント いちばん最初に読む本」(アニモ出版)が発売。 2020年7月3日に「Q&Aでわかる テレワークの労務・法務・情報セキュリティ」発売。第1章労務パートを執筆。 2019年4月に、「これだけは知っておきたい! スタートアップ・ベンチャー企業の労務管理――初めての従業員雇用からIPO準備期の労務コンプライアンスまで この一冊でやさしく理解できる!」を上梓。

寺島戦略社会保険労務士事務所HP: https://www.terashima-sr.com/