フレックスタイム制って?働き方改革でどう変わるの?
働き方改革が叫ばれる中、企業でも柔軟な働き方を実現しようという取り組みが広まっているように感じます。
巷では「うちはフレックスだからいつ出社しても退社してもいいんだ!」「フレックスを導入しているところで働きたい!」というような声は耳にしますが、このフレックスタイム制、正しく理解していますか?
社会保険労務士として日々企業の人事担当者と接している中でも、フレックスタイム制度をなんとなくしか理解していないというケースは多いように感じています。
今回は、「なんとなくわかっているようで、実はよくわからない」人が多い、フレックスタイム制度を今一度おさらいということで解説していきたいと思います。
フレックスタイム制とは
フレックスタイム制とは、教科書的に言えば、「1日の労働時間の長さを固定的に定めず、1か月以内の一定の期間の総労働時間を定めておき、労働者がその総労働時間の範囲で各労働日の労働時間を自分で決めることができる労働時間制度」のことです。
これだとわかりにくいのでもっとわかりやすく言えば、例えば普通の労働時間制度の場合、1日の労働時間は8時間などと決められており、その日の業務が忙しくなかったとしても、8時間は会社にいなくてはならないですよね。
また、あらかじめ明日は忙しくなる、絶対に10時間は働くことになる・・・ということがわかっていても、所定の労働時間は8時間で、上回った2時間分については割増賃金が発生してしまいます。
これをフレックスタイム制度を使うと、労働者自みずからが、「今日は忙しくないから4時間で帰ろう」「明日は10時間働こう」というように、毎日の労働時間を柔軟に自分で運用でき、このように柔軟に日々労働時間を決定して働いた結果1か月の労働時間を集計して、予め定まっていた1か月での総労働時間(例えば、160時間)を上回っていればその分割増賃金が発生し、下回っていれば賃金がその分控除される・・・といったような運用になるのがフレックスタイム制度です。
フレックスタイム制度は会社にとっても、残業代の抑制につながることもあるのでメリットはありますが、なによりも従業員にとって非常にメリットがある制度です。
毎日の労働時間を業務の繁閑に合わせて決めることができれば、育児・介護との両立もしやすいですし、プライベートも充実させやすいことは間違いありません。
また、通勤時のラッシュを避けて出社するというようなことも可能になり、毎日の満員電車のストレスからも解放されます。
このように従業員に大きなメリットのあるフレックスタイム制度を導入することで、より自律的に働きたい優秀な人材が確保できるようになったりと、会社にもメリットをもたらします。
<フレックスタイム制度のよくある疑問>
Q: フレックスタイム制度だといつ出社してもいいし、いつ退社してもいいんですよね?
A: フレックスタイム制度でよくある誤解ですが、フレックスタイム制度を導入していても完全に出退社の時間が自由という会社はあまりありません。
こうした出退社の時間を完全に従業員の自由に決められるといういわゆる「スーパーフレックス制」を導入する会社も増えているようですが、通常多くの企業では、「コアタイム」「フレキシブルタイム」というのを設けています。
コアタイムとは、「必ず出勤していなければならない時間帯」を指し、フレキシブルタイムは「自由に働く時間を決められる時間帯」を指します。
コアタイムを設けることで、企業からすれば「従業員全員が揃う時間」を作ることができ、その時間帯を利用して必要なミーティングを行ったりするという運用にしているところが多くなっています。
もしフレックスタイム制度のある企業で働くという場合には、このコアタイム、フレキシブルタイムの時間を確認してそのルールの範囲内で働く必要がありますので「完全自由!」という訳ではありませんので注意が必要です。
また、企業側からすれば、フレックスタイム制は労働者が自由に始業・終業の時刻を決定できる制度ですので、「明日は9時には出社するように」「明日は絶対17時まではいてください」というような指示はできないことになります。
こちらも経営者様含め誤解している場合が多いので注意が必要です。
Q: フレックスタイム制だと残業代は払われないと聞きました・・・。
A:フレックスタイム制を導入すると残業代を払わなくてよいと誤解している方が多いのですが、フレックスタイム制でも残業代は発生します。
通常の労働時間制度であれば、1日8時間、週40時間の労働時間を超えた場合、通常の賃金よりも25%割増の残業代を企業は支払う必要があります。
一方フレックスタイム制では、「清算期間における総労働時間」を超える時間外労働があれば残業代が支払われるという仕組みになります。
つまり、1日8時間、週40時間の労働時間規制を超えていても、総労働時間内におさまっていれば残業代が発生しないというケースは確かにあります。
しかし上述のとおり「清算期間における総労働時間」を超える時間外労働があれば残業代の支給が必須です。
そもそも清算期間とは、フレックスタイム制において労働者が労働すべき時間を定める期間のことで、賃金の計算期間に合わせて1か月として運用していることが一般的です。
そして総労働時間とは、企業が独自に定めた所定労働時間のことで、清算期間における総労働時間というのは、たとえば1か月で160時間のように企業で決めるわけです。
ざっくり言えば、この160時間に対して1か月経過後、どの程度実際に労働者が働いたのかということで、これに満たない労働時間の場合には、賃金控除がなされたり、上回っている場合には割増賃金が発生するという仕組みになります。
つまり、通常の労働時間制度だと1日、1週間で割増賃金の発生を確認していたところを1か月で割増賃金が発生しているか否かを確認するというようなことになります。
また、フレックスタイム制度を導入していても深夜の割増賃金や休日割増賃金は必要となりますので、いずれにせよ「割増賃金が発生しない制度」というのは誤解です。
働き方改革でフレックスタイム制度が変わる?
ニュース等で話題の「働き方改革法案」が6月28日、可決されたことにより、実はこのフレックスタイム制度も来年の4月から変更があります。
前述したフレックスタイム制の「清算期間」はこれまで最長1か月とされてきていましたが、この清算期間の上限が「3か月」に延長することが可能になります。
つまり、3か月の中で総労働時間を調整するといったことが可能になり、これまでの1か月の清算期間のものより更に柔軟性が増す制度となるということになります。
とはいえ、残業代等の発生があるのは変更ありませんので、3か月の総労働時間を超えた場合には支給が必要ですので注意してください。
採用力を高める一手としても注目のフレックスタイム制
いかがでしたでしょうか。フレックスタイム制度を導入している企業は増えてきており「自社でも導入しようかな」と検討されている人事担当者の方も多いのではないでしょうか。
人手不足が叫ばれている中、採用力を高める一手としても有効なため、フレックスタイム制度を導入したいというご相談は増えてきています。
フレックスタイム制度の導入には、就業規則の変更や、労使協定の策定等、所定の手続きも必要です。導入の際には社会保険労務士などの専門家に相談しながら進めていくとスムーズかと思います。働き手にとってもメリットの多いフレックスタイム制度を是非導入してみてはいかがでしょうか。
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この記事を書いた人
- 寺島 有紀
寺島戦略社会保険労務士事務所 所長 社会保険労務士。
一橋大学商学部 卒業。
新卒で楽天株式会社に入社後、社内規程策定、国内・海外子会社等へのローカライズ・適用などの内部統制業務や社内コンプライアンス教育等に従事。在職中に社会保険労務士国家試験に合格後、社会保険労務士事務所に勤務し、ベンチャー・中小企業から一部上場企業まで国内労働法改正対応や海外進出企業の労務アドバイザリー等に従事。
現在は、社会保険労務士としてベンチャー企業のIPO労務コンプライアンス対応から企業の海外進出労務体制構築等、国内・海外両面から幅広く人事労務コンサルティングを行っている。
2020年9月15日、「IPOをめざす起業のしかた・経営のポイント いちばん最初に読む本」(アニモ出版)が発売。 2020年7月3日に「Q&Aでわかる テレワークの労務・法務・情報セキュリティ」発売。第1章労務パートを執筆。 2019年4月に、「これだけは知っておきたい! スタートアップ・ベンチャー企業の労務管理――初めての従業員雇用からIPO準備期の労務コンプライアンスまで この一冊でやさしく理解できる!」を上梓。
寺島戦略社会保険労務士事務所HP: https://www.terashima-sr.com/