働き方・採用専門家

働き方改革で話題 裁量労働制ってどのような制度?

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裁量労働制

働き方改革でも話題に!裁量労働制の適用拡大

現在、国会でも連日のように議論されている「働き方改革」。
少子高齢化が進む日本では労働力人口が減少しており、全ての人が活躍できる1億総活躍社会の実現のために、多様な働き方を可能とすることが重要だという政府方針のもと、企業のテレワークの導入や、副業解禁などがメディアでも話題となっています。

この、多様な働き方を可能とする方法の一つとして、政府は「裁量労働制の適用拡大」を進めようとしています。
裁量労働制については、現在開会中の国会において、厚生労働省が実施した裁量労働制の調査データに不備があったことで働き方改革法案の中から削除されることになり大きな話題となっていたことをニュースでご覧になった方もいるかもしれません。

今回はこの話題の、裁量労働制とは一体どのような制度なのか?導入すると企業にとってどのような影響があるのかという点を解説していきたいと思います。

裁量労働制とは?

裁量労働制とは、業務の性質上その遂行の方法を大幅に労働者の裁量に委ねる必要があるため、当該業務の遂行の手段及び時間配分の決定等に関し使用者が具体的に指示をすることが困難な業務に従事する者について、「実際に労働した時間に関わらず、一定の時間を労働したものとみなす」制度です。

ざっくり言えば10時間働いたとしても、事前に「8時間とみなす」としていれば8時間の労働時間とみなす制度です。また逆に3時間しか働かなかったとしても8時間働いたとみなします。

この裁量労働制には2種類あり、①専門業務型と②企画業務型があります。

①専門業務型裁量労働制

専門業務型裁量労働制は、法令で認められた19の対象業務にのみ認められるもので、代表的なもので言えば、デザイナーやコピーライター、システムエンジニア、新聞記者等が該当します。

②企画業務型裁量労働制

企画業務型裁量労働制は、「事業の運営に関する事項についての企画、立案、調査及び分析の業務」に認められるもので、わかりやすく言えば企業経営の中枢部門において、企画立案などの業務に携わっている者等が該当します。

①の専門業務型にしても②の企画業務型にしても、「裁量」と名の付く通り、業務を遂行するのに労働者の相応の裁量が必要な業務に対して認められるという共通点があります。

一般的な労働時間制度では、毎日の始業終業の時刻が決められており、労働者はその日の業務量がたとえ少なかったとしても3時間で帰るなどといったことは認められません。
しかし、裁量労働制では始業終業の時刻を労働者自身が決定することが可能です。

例えばデザイナーやコピーライター職の方などは毎日8時間きっちり労働時間管理されて仕事をするというよりも、その日のアイディアのひらめき具合等によって「今日ははかどるのでイメージを仕上げてしまおう」という日もあれば「今日はまるでひらめかない・・・」という日もあるでしょうし、日によってメリハリをつけて自身の裁量で業務を遂行するというほうが効率的であるというのはなんとなくイメージが湧きやすい例かと思います。

このように、業務の進め方に労働者自身の裁量が必要な業務について適用することができる制度が裁量労働制なのです。

裁量労働制の「よくある誤解」と導入する企業のメリットとは?

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裁量労働制を導入する企業側のメリットとしてはなにがあるのでしょうか。よく「裁量労働制は残業代を支払わなくてよい制度でしょう」「裁量労働制は労働者の時間管理をしなくてよいから楽な制度なのでしょう」と誤解されている経営者様もいらっしゃるのですが、これらは誤った認識です。

上記で、裁量労働制は「10時間働いたとしても、事前に『8時間とみなす』としていれば8時間の労働時間とみなす制度」と述べたとおり、通常の労働時間制度では2時間分の割増賃金が必要なところを、裁量労働制度のもとではこの2時間分の割増賃金が不要となることは間違いないのですが、裁量労働制のもとでも深夜労働と休日労働に関しては適用外となるため、企業としては夜22時から朝5時までに裁量労働制適用者が働いた場合には深夜割増賃金の支払いの義務は免れませんし、休日労働をした場合にはその時間については休日割増賃金の支払いが必要です。

社会保険労務士として様々な企業を見てきましたが、ある企業では裁量労働適用者が意図的に始業時刻を夜からにし、深夜労働ばかりをして割増賃金を稼ごうとしてきたという例もありました。

また、時間管理についても裁量労働制適用者については把握する必要がないというのも誤った認識です。

通常の労働時間管理を行っている労働者については、時間外手当の計算で必要なこともあり当然に労働時間については把握しているところを、裁量労働制適用者については特段時間管理をする必要がないと考えている経営者様も多いのですが、厚生労働省から出されている指針により、裁量労働制適用者についても「健康確保を図る必要から使用者が適正な労働時間管理を行う責務があること」は明示されています。

つまり、裁量労働制適用者についても全く時間管理をしないということはできません。
昨今過労死等に対して世間の目が非常に厳しく、企業にとって従業員の安全配慮義務についてはこれまで以上に徹底していくことが求められており、裁量労働制適用者についてもその月の労働時間はどの程度であったのかについて把握する必要はあります。

また、先ほど述べたとおり、結局深夜勤務手当の支給は別途必要となるため、従業員が深夜に労働していないかの把握が必要となり、結果として裁量労働制適用者について、時間管理を全くしないということは現実的ではありません。

現在国会で議論されている働き方改革関連法案が一部修正され、厚生労働省は、長時間働いた従業員が労働安全衛生法に基づく医師の面接指導を受けられるよう、労働時間の把握を企業に義務付けるという規定を法律に盛り込む方針を示しています。
これは現在でも指針で定められているものを法律に格上げするもので、その狙いは、まさに裁量労働制適用者や労働基準法で定める時間規制が適用されない管理職等の健康確保を目的としています。

このように、裁量労働制は導入する企業にとって、煩雑な時間管理が生じず、時間外手当も必要ないというような簡単なものではありませんし、導入する際には労使協定を労働基準監督署に提出しなければならない等、導入する手間もかかる制度です。

結論として、企業が裁量労働制を導入する大きなメリットとしては、残業代が削減できるとかそういうことよりも、正しく運用された場合に、働く従業員が労働時間を柔軟にコントロールすることができ、仕事を自分自身が効率的であると考えた手順で進められることなどにより、従業員が時間で働くというよりも、成果に向かって仕事に向き合うことが可能になること、それが企業全体にとって生産性があがるということなのではないかと私自身は考えています。

今後の裁量労働制の方向性

現在国会で議論されている働き方改革関連法案の中で、当初「企画業務型裁量労働制の適用業務拡大」が盛り込まれていましたが、冒頭で述べた、厚生労働省実施の裁量労働制の調査データの不備により今国会提出予定の改正案からは削除されました。
盛り込まれていた案は、企画業務型裁量労働制の対象業務に、1. 課題解決型提案営業 2. 裁量的にPDCAを回す業務の二つを加えるというものでした。

①課題解決型提案営業

課題解決型提案営業は顧客(法人顧客)の事業について企画・立案・調査・分析を行った上で、その結果を活用して営業(商品やサービスの販売のための営業)を行う業務とされ、

②裁量的にPDCAを回す業務

裁量的にPDCAを回す業務は、自社の事業について、繰り返し、企画・立案・調査・分析を行い、その結果を活用して事業の管理・実施状況の評価を行う業務とされています。

特に1については、どの企業においても欠かせない「営業」が対象業務であることから、多くの企業の関心事となっていますが、通常の商品の販売営業等は該当しないとされています。

また、働き方改革法案において裁量労働制は切り離されたものの、メディア等で「スーパー裁量労働制」と呼ばれている「高度プロフェッショナル制度」は、そのまま法案に盛り込まれています。

この「高度プロフェッショナル制度」はホワイトカラーエグゼンプションとも呼ばれていますが、年収1075万円以上の金融ディーラーなど高度の専門的知識を必要とする一定の対象業務を労働基準法による労働時間、休日、深夜の割増賃金等の規制の対象から外すもので、これにより残業代の支払いが不要にもなります。通常の裁量労働制では休日、深夜については割増賃金が必要となるものであったため、ここがスーパー裁量労働制とも称される由来でもあります。

高度プロフェッショナル制度は企業の経営者にとっては、残業代を支払わなくてよい夢のような制度に見えますが、そもそも年収が1075万円以上の労働者数はそう多くなく、特に中小企業等では該当者は限られてくるものと考えられます。

今国会の改正案からは削除されましたが、やはり企画業務型裁量労働制の適用拡大のほうが、多くの企業にとっての関心事となることが予想されます。

採用労働制の導入には適切な運用と理解を!

以上、裁量労働制とはというところを解説してきましたが、「裁量労働制って意外と導入や管理が大変!」というように思われた方もいるかもしれません。裁量労働制は企業にとって薔薇色の制度という訳では決してありません。

もちろん裁量労働制を正しく理解し、適切に運用することで企業全体の生産性の向上や従業員のワークライフバランスも実現するということが可能になると考えられますが、一方で誤った認識のまま裁量労働制を導入してしまうと思わぬ労使トラブルや残業代未払いに発展する可能性もあります。

裁量労働制を導入する際には専門家のアドバイスを受け、慎重にメリットとデメリットを検討し導入する必要があります。

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この記事を書いた人

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寺島 有紀

寺島戦略社会保険労務士事務所 所長 社会保険労務士。
一橋大学商学部 卒業。
新卒で楽天株式会社に入社後、社内規程策定、国内・海外子会社等へのローカライズ・適用などの内部統制業務や社内コンプライアンス教育等に従事。在職中に社会保険労務士国家試験に合格後、社会保険労務士事務所に勤務し、ベンチャー・中小企業から一部上場企業まで国内労働法改正対応や海外進出企業の労務アドバイザリー等に従事。
現在は、社会保険労務士としてベンチャー企業のIPO労務コンプライアンス対応から企業の海外進出労務体制構築等、国内・海外両面から幅広く人事労務コンサルティングを行っている。
2020年7月3日に「Q&Aでわかる テレワークの労務・法務・情報セキュリティ」が発売。第1章労務パートを執筆。 2019年4月に、「これだけは知っておきたい! スタートアップ・ベンチャー企業の労務管理――初めての従業員雇用からIPO準備期の労務コンプライアンスまで この一冊でやさしく理解できる!」を上梓。

寺島戦略社会保険労務士事務所HP: https://www.terashima-sr.com/