個人事業主の報酬の違いはスキルの「組み合わせ」と「集中」で10倍になる!
目次
スキル別の平均単価(日給)
前回、CARRY MEに登録している個人事業主の報酬単価(日給)を縦軸に、それぞれの職種へのニーズ(需要)を横軸にとり、どの職種だと需要が高く、報酬単価をあげやすいかをまとめた。
以下、前回の記事をご覧頂いていない方のために再掲載しておく。
上記の通り、「どの職種を選ぶか」はフリーランス・個人事業主になる方の報酬を決める重要な要因になり得る。
WebディレクターとWebマーケターの報酬が2倍違う理由
まず、「スキルの組み合わせ」から説明しよう。
以下、CARRY MEで登録している実際の個人事業主Aさん、Bさん、Cさんの保有スキルごとの報酬(日給)を示したグラフを見て頂きたい。
特にAさんとCさん(もしくはBさん)の違いを見て頂きたい。WebディレクターとWebマーケターでは大きく報酬額が異なる。日給ベースで2倍以上の差にもなっている。ご参考まで、Aさん、Bさん、Cさんの簡単なプロフィールを以下ご紹介。
Aさんは、Webマーケターではなく、Webライターからスキルを身につけた「Webディレクター」である。フリーランスとして、6〜7年ほどライティング、編集スキルを磨いてきた方である。
Bさんは、新卒でITとは無縁の企業に入社するも、その後リクルート社に転職しWebサイトディレクションを中心としたキャリアを構築。その後、起業や著名スタートアップでのオウンドメディア構築や運用を中心として活躍し、Webマーケターのプロとして活躍。スキルとしては、オウンドメディア構築・運用を中心に、SEO、Google Analytics、広告運用実績がある。
Cさんは、新卒でリクルート社に入社後、営業からキャリアをスタートさせ、その後リクルートが保有するWebメディアの運用を任されていた方である。Webマーケティングのスキルとしては、SEO、オウンドメディア構築、Google Analytics分析などを保有しているが、「営業」スキルもあることがポイントである。
報酬の差はどこから生まれるのか
なぜ、WebディレクターとWebマーケターの報酬でこれだけの差になるか、というと以下のマトリックスで説明できる。
前回の記事でも少し触れたとおり、得られる報酬額は、その保有スキルで顧客のどんな課題を解決したいのか、その「課題の大きさ(=重要度)」にリンクしている。顧客の大きい課題を解決できればそれだけ高い報酬額につながりやすい。
それぞれの解決すべき課題の大きさを見てみよう。
Webディレクションは「Webページを創りたい」もしくは「創り直したい(リニューアル等)」という課題を解決するものである。
Webマーケティングは、「商品やサービスを、Webを通じて認知度をあげたい、コンバージョンをあげて購入まで結び付かせたい」という課題を解決するものである。
後者は売上に直結するものであるのに対し、前者は直結せず、Webマーケティングの方が企業の課題としては大きくなり、結果、下記の公式が成り立つ。
Webマーケティングの報酬単価 > Webディレクションの報酬単価
(※ただし、マトリックスにあるとおり、「経営コンサルティング」のように顧客の課題は大きくても、解決方法が抽象的で、その顧客課題を解決できるイメージが湧きにくいと、仕事は確保しにくくなる。)
個人事業主・フリーランスを活用する「企業側からの視点」で見ると、時給や日給で判断するのではなく、「自社のどの課題を、どんなスキルで解決できますか」という視点で報酬を決めるように、徐々に日本企業も変わってきている。
未だに、うちの社員の給与水準は日給●●円だから、それにあわせて・・・などと話していては優秀なプロの個人事業主は採用できないだろう。
極端な話、週1回の稼働でも、既存の正社員がフルタイムで働いても解決できない課題を解決してくれるのであれば、フルタイムの正社員以上の報酬を支払うことも厭わない、という合理的な考え方が受け入れられつつある。
同じWebマーケティングのスキルでも「スキルの組み合わせ」によって報酬は2倍、3倍にもなる
では、複数の同様のWebマーケティングスキルを保有するBさんとCさんではなぜ報酬単価が異なるのか。
答えは、「スキルの組み合わせ」による差異である。
「スキルの組み合わせ」の意味は、異なるスキルを組み合わせて持っておくと、単一スキルだけではコモディティー化により報酬単価が下がっても、複数のスキルの組み合わせにより希少価値があがり、報酬単価が上がりやすい、ということにある。
BさんとCさんは、Webマーケティングという職種に紐づくスキルはSEOやオウンドメディア構築ノウハウなど両者とも豊富で、高いスキルを保有している。
※ちなみに、Webマーケティングのプロの個人はCARRY MEに400人程度登録があり、SEOのみ、広告運用のみ、など単体のスキルを持ち合わせている個人が多い中、こちらのBさんもCさんも、複数のWebマーケティングのスキルを組み合わせて活躍している。
いずれも1人で3社、4社を掛け持ち、パラレルで稼働できているレベルの高いプロである。
違いは、上記のグラフにもあるとおり、「営業スキル」を組み合わせているかどうか、の違いだ。
営業スキルがなぜWebマーケティングのプロの報酬単価に関連するのか、理由は2つある。
①Cさんはリクルート入社後数年は営業をしていたため、Cさんは企業との報酬単価の提示・交渉が上手だということ。
②Cさんが営業を経験したことにより、(一見関係なさそうな)「企業向けのオウンドメディアの構築」にもプラスになっている、もしくは顧客に対しての説得力が増すということがある。
企業向けのオウンドメディアは「営業目的(企業からの問い合わせ数等がKPI)」であることが多いこともあり、オウンドメディア構築に、営業の視点があると説得力が増す。
スキルの組み合わせを考える場合は、現状のスキルを中心に据えて、顧客の課題を自身のスキルで解決するには「他にどのようなスキルを獲得し」、そのスキルと組み合わせて「どのように解決できるか」を考えていくと良い。
たとえば、上記のようなSEOやWebマーケティングのスキルを保有するWebマーケターの役割の1つは、「企業のサービスや商品の認知度をあげる、広める」、ということである。
「認知度をあげる、広める」ことが目的であれば、Webマーケティングではなくとも、企業からすると「広報・PRで認知度を広める」という選択肢もあるはずである。
Webマーケティングと広報・PRのスキルは全く異なるもので、修得することは困難であるがゆえに、両方のスキルを高いレベルで保有している個人事業主は見たことがない。
需要と供給の観点からも、こうしたスキルの組み合わせによっては、報酬を10倍にも100倍にもできる。
スキルはどこかの業界や分野に「集中」することでも報酬を2倍、10倍と上げられる
もう1つ、組み合わせではなく、どこかの分野に「集中」することで報酬を高めているケースが多くある。
例えば、前回の記事での1本4万円のライターさんは、「IT専門」のライターである。クラウドソーシングが普及しライターによる記事制作の単価が下がる中、1本4万円は相当高い。
こちらの個人事業主の方は、ライティングスキルは大前提として、IT業界でのライターとして20年ものキャリアを積んでおり、この業界にはとにかく詳しく、様々なITの歴史から分析までが可能だ。こうした需要の高い業界に特化したプロのライターへの需要は強く、供給側は本当に少ない。だから高単価になる。
逆に、よくありがちな(稼ぎの少ない)個人事業主は、「分野問わずなんでもできます」という方。
何でもできる、という方は特徴がない、ということであり、どこかに特化しているプロには、比較されたときには必ず負けてしまう。
ライターに限らず、広報・PRの分野でも同様で、CARRY MEには
「IT業界に特化した広報・PRのプロ」や、「BtoB商品専用の広報・PRのプロ」
「インフルエンサーを巻き込んだ広報・PRのプロ」
など様々な特化型個人事業主が活躍している。
あるいは業界特化型でなくても、何かに特化ないし強みがあれば十分単価はあげられる。
広報・PRであれば、
・「とにかくメディアのコネクション、特に日経系などビジネスメディアならだれにも負けません」
・「社内にPRの企画やネタがなくても、メディアが欲しい企画をゼロから創り出すことが得意」
といった得意技で何かの領域に特化できているかどうか、が重要だ。
最も重要なことは、「環境変化にあわせて必要なスキルを習得していくこと」と、「どの時代にも必要な普遍的なスキルを合わせ持っておくこと」
今の20代の方はは信じられないだろうが、1996年、僕が最初に入社した総合商社では、とある先輩がパソコンが得意なことや、パワーポイントを使えることがその上の方から評価されていた。
また、別の先輩は、(今ではネットでググればすぐ出てくるような)一般的な「知識」、例えば国ごとのGDPや、関税など、が評価されていた。
また、5年から10年前には、「ロジカルシンキング」といったスキルがもてはやされて、こぞって企業で研修等で取り入れていたが、このロジカルシンキングというスキルに対しても最近は、需要は少なくなってきた。(ご存知のとおり、ロジカルシンキングがあるというだけで食べていけている人も殆どいないだろう)
「ロジカルシンキングはある程度のレベルがあるのは大前提」としてそれ以外の付加価値のあるスキルを求めるようになってきたことも一因だ。
何が言いたいかというと、スキルは時代により陳腐化する(コモディティー化する)ことが往々にしてある、だから、環境の変化に応じて新しいスキルを身につけたり組み合わせなど工夫していかないといけない、ということだ。
一方で、環境の変化があっても、どの時代にも必要なスキルがある。
「コミュニケーションスキル」などのソフトスキルや、「重要な課題、本質を見抜くスキル」などは、常に高めておく必要があるといえるだろう。
まとめ
・スキルに1万時間かけるのであれば、まずはじっくり自分の得意な領域や、今後代替されにくい領域も考えつつ、「どのスキルや職種を選ぶべきか」を真剣に考えるべき。
・スキルの単価をあげるには、何かに「特化する」か「他のスキルとの組み合わせ」が有効。
・最も重要なことは環境に合わせて必要なスキルを身につけていくと同時にどの時代にも必要な普遍的なコミュニケーションスキルなども高めて行くことである