【書評】自分の時間を取り戻そう ーゆとりも成功も手に入れられるたった1つの考え方ー
著書プロフィール
関西出身。バブル期に証券会社に就職し、その後、米国への大学院留学を経て、外資系企業にて勤務。2011年からは、文筆活動に専念するため退職。対談や旅行など”楽しいことだけして暮らす”を実践中。
要約
・物事を生産性という視点を通して判断しよう
現代社会では、猛スピードで高生産性シフトが進んでいます。「生産性」とは、時間やお金などの限りある貴重な資源と、手に入れたいもの(成果)の比率のことを表します。「生産性が上がる」とは、資源の活用度合いが高まること、あらゆる資源が、今までより有効に使われ始めることを意味するのです。これからの社会、生産性という観点を持っていないと、正しい判断ができなくなっていきます。仕事でも生活においても、常に生産性を高める方法を身につけていくことが必要です。
・自分の時間の安売りをやめよう
お金と時間は最も貴重な資源です。その大切な資源をできる限り大切にすべきです。自分の時間をたやすく人や仕事に渡さず、常に、すべきことに費やされる時間の価値やバランスについてコントロールしていきましょう。
・生産性を高めるために、まずは働く時間を減らそう
限られた時間で成果を上げるために、働く時間の有限さを理解し、時間を制限しよう。集中力は増え、その時間内にすべきことを終わらせるための工夫をすることができる。
・生産性を高めるために、全部やる必要はないと理解しよう
「すべてを自分でやろうとしないこと」も生産性の向上につながります。
必要のないこと、自分でなくとも他の人に頼めることを見極めて、しなくても平気なことを手放しましょう。
レビュー
私たちは、毎日「忙しい病」にかかっているも同然です。
日本の長時間労働問題は、政府が「働き方改革」を推進しても、なかなか定着せず、解決の糸口は見えてきません。それどころか、ブラック企業勤務によって自らを見失い、体や心を壊してしまう人が依然として存在しています。
日本語の「頑張る」の同義語は他言語に変換するのは難しいのをご存知でしょうか。スポーツのときにもし頑張れ!と言いたければ、英語であれば「Go for it」とか「Do your best」などとなります。意味は、いけ!とか、持っている力を出し切れ、などをさします。それに対して、日本語の「頑張れ」、「頑張る」といった言葉には、自分が持っている力以上の力をだそう、自分の力以上のことを成し遂げよう、という意図が含まれていないでしょうか。この「頑張る」という言葉を生み出したマインドを持っている私たち日本人は、常に仕事や生活で、自分の持っている力や能力以上のものを「頑張る」ことで出そうとしていないでしょうか。常に頑張ってしまっていたら、いつか疲弊するのは避けられません。自分自身が持っている自然な能力を発揮して、毎日のタスクを行えるようにし、自然な成長や発展をしながら成果を出し、自分自身の時間を取り戻すための考察がこの本には記されています。
最初の章に、「忙しすぎる」人たちの例が述べられています。
デキる男 正樹
正樹は、同期入社のなかでは出世頭。昇進したばかりで部下の仕事管理が加わったが、自分のこれまでの仕事に加え部下の管理も増え、仕事にいっぱいいっぱいになってしまった。それを長時間両道によって、問題を解決しようとしている
頑張る女 ケイコ
ケイコはワーキングマザー。仕事をしているのに二人の子育てや家事に夫に一定の協力しかしてもらっていない。時短勤務が終了すれば、家事に加えて子供のことや夫、夫の親のことなどで手いっぱい。自分の時間は全くない。すべてのことを自分が「やるべきこと」と考え、すべて完璧にこなそうとしている。
休めない女 陽子
就職氷河期に就職活動を行い、契約社員の職を得て働いてきた陽子。その後スキルをいかしてフリーランスとして働きだしたが、始めたばかりのときは売上があがらず苦労した。単価の低い仕事を多く受けるようにし、なんとか軌道にのってきたが、契約社員のときよりも仕事時間が増え、自分の時間がまったくなくなってしまった。
仕事や収入を失う不安感が強すぎて、仕事を断ることができないのだ。
焦る起業家 勇二
大学卒業と同時に起業した会社を順調に規模拡大させてきた勇二。社員が増えたとき気づいた、各社員の仕事の進行があまりにも遅いという事実が悩みの種。社員自体が、仕事についての生産性を考えずに「とにかく頑張る」という思考停止モードに入ってしまっているのだ。
彼や彼女たちに共通している問題は、「生産性が低い」また「生産性」という認識やフィルタを通して物事を判断できていないところにあります。生産性は、仕事だけではなく、勉強、家事や育児、生活全般のあらゆる場面において、時間が生み出す価値を大きくするための鍵となる考え方となります。
まとめ
本著にあった、生産性をあげるための方法として、特におすすめしたい内容は、「仕事や予定の時間を決めてから、すべきことをおこなうこと」です。著者は、本を出版すると決まったら、何月何日に出版すると決め、その後に休みをとると決めて、旅行の予約も行ったそうです。しっかりと、終了時間や時刻を決めないと、終わらない仕事というのは往々にして存在します。締め切りがあれば、必ず締め切りを守りたいのがビジネスパーソン。締め切りや終了時間がきまっていないタスクが、いつまでもなかなか終わらない経験がある人は多いでしょう。沢山の仕事を、期日を決めてすすめれば、集中力とタイムマネージメント、仕事を終わらせるための様々な個人的創意工夫能力を使い、さらに火事場の馬鹿力的な力も発揮できて、終わらせられるときがくるのです。その時に、あなたの、生産性があがった、能力があがったと実感できるでしょう。
この本の最後に、登場人物の4人が生産性があがったことで、毎日の生活にどのような変化が現れたのかが記されています。4人の中に少なからず投影できる部分がある方もいらっしゃることでしょう。生産性を意識した行動を重ねることで、日々満足のいく時間の使い方ができるようになるはずです。その積み重ねが充実した人生を約束してくれるはずです。
この記事を書いた人
- 中原 玲子
大学卒業後、ファッション系商社を経て、ヨーロッパ系専門商社にてセールス、ブランディングなど経験。 セールス業務では、日本でほぼ無名だった商品の販路拡大に尽力し、入社時から売上を5倍にするなど貢献。 退職後、2児の出産を経て自身のアクセサリーブランドを起業。有名セレクトショップに販路をもつ。そのほか、他企業のマーケティング業務などにも従事。パラレルキャリア形成に関心をもち、日々格闘中。