インタビュー

【いま、会いたい人 vol.2 ー 高梨大輔 】20億のバイアウトを経験。マーケティングをこよなく愛する伝説のCMO

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いま、会いたい人 vol.2 ー 高梨大輔

ベンチャーCMO会という会で、突如として現れた長髪の金髪男性。「な、何者!?」と思ったら、なんと株式会社リジョブ創業メンバーで取締役副社長として20億のバイアウトを経験を持つ高梨大輔さん。スゴイ人なのに、実際話してみると、穏やかで周りにとても気を使ってくださるとても優しい方だった。今回は「84年生まれ」「CMO」という共通点からマーケティングやキャリアについてお話を伺った。

いま、会いたい人 vol.2 ー 高梨大輔

高梨大輔:1984年生まれ。日本大学法学部卒業。大学在学中から株式会社リジョブ(東証マザーズ上場・株式会社じげんグループ)の前身のスタートアップに参画。約10年間にわたって、マーケティング・エンジニアリング・デザイン・広告などゼロから立ち上げ、取締役副社長/CMOとして経営、プロダクト/マーケティングを統括する。
その他、人事や営業、総務など、スタートアップならではの幅広い業務の経験が、マーケティングの”全体最適”のポリシーにも反映されている。2014年、リジョブが株式会社じげんに約20億円で売却された後、ロックアップ期間を経て退任。2015年12月、ビタミン株式会社を設立。ライフワークでマーケ相談を受けたり、マーケティングのアドバイザリー活動しながら、プロジェクトにも複数参画中。

毛利優子(聞き手):1984年生まれ。立教大学社会学部卒業。大学在学時に長男を出産し、新日本有限監査法人、ITのベンチャー企業を経て独立。「女性のキャリア」や「多様な働き方」をテーマとし、書籍やメディア(AERA,東洋経済オンライン、日経DUALなど)を通じて情報を発信。「日本における働き方の多様化」の必要性を感じ、CARRY MEにサービス立ち上げから参画。広告費ゼロで毎月150-200名の登録者を集客に成功し、現在3300名以上のプロ人材が登録。プライベートでは4児の母。

リュック一つで世界中を移動 「所有」という概念からの解放

毛利:高梨さんにお会いするのは、本日が2回目ですよね。ベンチャーCMO会という交流会で先月初めてお会いしたことがきっかけで、早速インタビューを引き受けてくださりありがとうございます!CMO会でもすごく目立ていらっしゃいました(笑)

高梨:この金髪はちゃんと理由があるんですよ!前職辞めた後に来るオファーが雇われ社長ばっかりだったんです。断ることが苦手で相談されると引き受けちゃうので、これは“面倒くさい感じ” にしないとといけないなって。それで金髪にしたら、見事に大手の新規事業担当者とかから声を掛けられなくなりました(笑)その代わり、スタートアップの面白い方たち、特に学生や20代の方からは「金髪の面白い人がいるらしい」ということで声をかけてもらえるようになって、最高です。

毛利:策略が見事はまったんですね(笑)最初お目にかかった時はかなりインパクトはありましたが、お話ししてすぐに優しい方だなとわかりました。

高梨:そう言ってもらえて良かったです。あと金髪にはもう一個メリットがあって、この感じで仕事できないとヤバイじゃないですか。それで勉強し続けようみたいな力学が働くっていう(笑)

毛利:確かに、単にヤバイ人みたいに思われちゃうかも(笑)でも逆に仕事ができると、そのギャップがかっこいいですもんね。

いま、会いたい人 vol.2 ー 高梨大輔

毛利:基本的な質問なのですが、高梨さんはいまどんな風に暮らしているのですか?海外にもたくさん行かれているようですが。

高梨:今年は5カ国くらいなので、少なかったなとやや反省してるところです。単純に旅にいきたい欲もあるのですが、仕事においても大切なことで、東京にずっといるとインプットや内省するまとまった時間がなかなか取りづらくて、旅にでてしまえば強制的に時間がでいきるので僕にとって大事な機会なんです。。ちなみに、普段は荷物これしかないんですよ。この荷物一つで暮らしていて。

毛利:えっ!?このリュックだけ?

高梨:そうです。基本このリュックに入るだけしか荷物を持たず、色々なところに移動しています。海外に行くときは着替えとか電動歯ブラシが追加されますが、基本的にこのリュック一つです。

毛利:そんなこと、可能なんだ…。

高梨:荷物をブラッシュアップし続けたらここまで行き着きました。例えば、これはAndroidの充電とか、Type-CもあるのでMacまで対応できて、これだけあれば他のケーブルはいらないんです。そういう謎のアイテムがいっぱいあります(笑)

いま、会いたい人 vol.2 ー 高梨大輔

さらに3年前には、定住所、いわゆる固定の家に住むことをやめました。賃貸もある意味、所有ではないかと思って住むことを辞めたんです。

毛利:身軽で羨ましいです。「住むこと」をやめるという発想は、初めて出会いましたが、ミニマリストの最終形態かもしれないですね。

20億の売却を経験後、『CMOのプロ』として常時10社以上のスタートアップを支援

現在はCMOのプロとして複数の企業でマーケティング のアドバイス・支援を行なっているとのことですが、売却後直ぐに今のような働き方にシフトされたんですか?

高梨:いえ、売却後はロックアップ期間の6ヶ月を経て、すっかり燃え尽きちゃって。その時になんとなく海外に出ていったんです。それと、プロのCMOといっていいのか、CMO不在のスタートアップに戦略面のサポートに入ったりってこととやっています。

毛利:売却後はそんな感覚だったんですね。海外に行くことで、新たに自分のやりたいことが見つかったんですか?

高梨:いや、結構フラフラしてて。わかりやすく、インド行ったり、キューバ行ったりしたんですけど、だんだんお金も尽きてくるじゃないですか。ちょうどそんな時、大統領選挙中のアメリカにいて、世界が変わっていくのを体感して。それで少しずつ、やる気が出てきた感じです。

毛利:それで、起業しようと?

高梨:いや、実はこの形態になったのも偶然なんです。ちょうど2年前の今頃帰ってきたのですが、忘年会・新年会シーズンで色々なスタートアップ友達に会って近況を聞いているときに、「僕だったらこういう風にするかな」みたいに話していたら、「じゃあ手伝ってよ!」ってなって、いまのスタイルになりました。

もう一度、資本主義ど真ん中で、プロダクトを持って、みたいなことをやりたいとも思ったんですけど、よく考えるとそれも「所有」かなと思って。そういう意味でいまの形が性に合っていたんだと思います。オフィスもないし、契約も1ヶ月更新なので、いつ切ってもらっても大丈夫です。

毛利:まさにCARRY MEで提供しているような働き方です。各分野のプロの方が業務委託という形で、スタートアップやベンチャー企業を中心に活躍しているので。

高梨:そうですね、まさに同じ感じです。

毛利:現在何社くらいの企業を見ていらっしゃるんですか?

高梨:常時10社に限定していて、10社の内訳は新陳代謝させてもらってます。少し補足すると、表現が難しいんですが、ちゃんとお金をもらっているのが10社くらいで、あとは無料でマーケ相談の相手をすることをライワークにしているので、学生とかTwitter経由で連絡が来た人と会ったりしています。

毛利:高梨さんに無料で相談できるなんて贅沢ですね。それに、常時10社というのも驚きです。CARRY MEに登録されている方でも、同時にそれだけの案件を抱えていらっしゃる方はほとんど見たことがありません。常時10社も回せるものですか?

高梨:可能です。理由は2つあって、マーケティングって一言で言ってもめちゃめちゃ広いですけど、「スタートアップ」とほぼ「to C」のサービスに絞っているので。そうなるとサービスはだいたい webかアプリになるので、施策が似てくるんですよね。当たるLPとかはある程度型がありますし、広告出稿の商材は違っても、戦略は似てくるので。あとは会社ごとに見せ方を考えていくという感じです。 

ヒト・モノ・カネ ないないづくしのスタートアップでもすぐできるマーケティング改善

いま、会いたい人 vol.2 ー 高梨大輔

毛利:業務のサイクルが基本的に同じというのは理解できるのですが、スタートアップ企業の場合、ヒト・モノ・カネなど、リソースがナイナイづくしなので、難しいことも多いかと思います。スタートアップを支援するときに大切にされていることはありますか?

高梨:まず、コスパの良い施策からやることでしょうか。基本的にグロースハックは「直す」か「省く」のどちらかだと思っていて。「直す」は、デザインをいじるとかなので、時間がかかるんですよね。一方、「省く」のはすぐできるんですよ。

単純な例でいうと、会員登録するとき、登録ボタンを押して、フォームに入力すると、確認画面が出てきますよね。その確認画面っていらないんじゃないかとか。普通1ページ遷移するごとに10数パーセント離脱するので、単純にそれだけでも登録率をかなり上げられます。

毛利:なるほど、すごくわかりやすい。

高梨:あと表示速度もすごく大事で、分析してみると使っていない広告タグが悪さをして重くなっていたりするのでちゃんと削除するとか、この画像の容量が重いから軽くしてアップし直そうとか、そういうことならすぐできるんですよね。それで表示速度が0.1秒上がったらめちゃめちゃ良いじゃないですか。こういったコスパの良い施策のパターンがいくつかあるので、まずそれらから着手します。

毛利:確かに、そのような施策だったらリソースがないスタートアップでもすぐできますね。

高梨:そうなんですよ、早ければ10分でできちゃいますからね。

毛利:ものすごく勉強になります。おすすめの分析ツールなどありますか?

高梨:GA(Google Analytics)は絶対ですね。あと、鉄則としてツールは分けない方が良いです。あれこれ手を出しても、結局使わなくなりますから。基本GA一つで大丈夫です。

毛利:高梨さんからGA一つで良いと言われると、とても心強いですね(笑)GA分析をする際に必ずチェックするポイントとかはありますか?

高梨:まずはメインのコンバージョン経路のトップ3くらいを調べて、ボリュームのある順番に、おしりから直していきます。トップページとかから直しがちなんですけどね。 

毛利:なるほど、先ほどお話しに出たような登録画面の確認ページのように、コンバージョンに近い方から着手するんですね。すごく面白い。

高梨:そうです。フォームの項目って一つ減らすだけで、1%くらい離脱が減るんですよ。氏名の「ふりがな」とかいるのって?あとは、CTAボタン、詳細ページ、一覧ページ、トップページという順ですね。

毛利:さすが、「CMOのプロ」ですね!この短時間で、具体的かつ実践的なアドバイスばかりで、私もすごく勉強になりました。

(撮影:藤原和彦)

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