フリーランス・個人事業主がまず考えるべき保険加入とは?
目次
個人事業主の加入保険、理解していますか?
個人事業主の皆さん、保険に入っていますか?
保険に加入していても個人事業主になるときに最低限の保険の変更手続きをして以来、見直していないという方もいるのではないでしょうか?
もしもの時の保障になる保険。
本業で忙しいとつい疎かになりがちです。
しかし、会社員とは異なり、個人事業主が加入する社会保障は保障内容が会社員より薄く、もしもの備えが不足しがちであると言われます。
また保険について考えることは自分が個人事業主として働く上でのリスクの棚卸しにも非常に有効な手段です。
この記事では、多くの個人事業主が加入している保険を紹介し、検討すべきリスクのポイント・保険の選び方をご紹介していきます。個人事業主のみなさんのリスクヘッジに是非お役立てください。
個人事業主の保険と保障内容
多くの個人事業主が加入するベーシックな「公的な社会保障」は次の2つと言えます。
- 国民健康保険
- 国民年金
日本では、「国民皆保険」と言われるように、何らかの保険に加入することが求められます。
どちらも、会社員が加入する社会保険や公務員が加入する「共済保険」などに加入条件が合わない場合に加入する非常にベーシックな保険と考えることができます。
では、国民健康保険で保障される内容はどんなものがあるのでしょうか?
国民健康保険で保障される内容
- 医療費の自己負担分以外の保障
- 高額医療費(1か月の治療費が一定額を超えると超過分を保障)
- 出産育児一時金(出産時に42万円を保障)
という点が主なものです。
一方、国民年金の保障内容は下記のとおりです。
国民年金で保障される内容
- 老齢基礎年金(60歳または65歳から支給される、いわゆる年金)
- 障害基礎年金(国民年金加入中に1・2級の障害になったとき支給)
- 遺族基礎年金(国民年金加入中に死亡した際に支給)
- 寡婦年金(夫死亡時に受け取る)
- 死亡一時金
が主なものと言えます。
会社員の方が保障は手厚い!
個人事業主になるときに、「社会保障は会社員の方が恵まれている」という点は何となく理解していたという人は多いと思います。
しかし、具体的にどういった点が「会社員の方が恵まれている」のか、ご存知ない方もいるかもしれません。
そもそも「会社員や公務員が加入している社会保険と、個人事業主が加入している国民健康保険では社会保険の仕組みが違う」ということをおさえておかなければなりません。
たとえば年金制度では、フリーランス・自営業の方は「国民年金」のみ(1階建て、と言われます。)の構造です。
一方会社員・公務員の方は、それに「厚生年金」がプラスされています(2階建て)。
また、会社員や公務員の方は、会社と保険料を折半しているので、同じような金額の保険料を払っている人が同じような保障を得る状況になったとしても、受け取れる年金・保障の額が大きく異なります。
受け取れる額が大きく異なるのは、年をとってから受け取る老齢年金だけではありません。万一本人が亡くなった場合に配偶者等に支給される遺族年金や、障害1級・2級などの認定を受けた場合に支給される障害年金も、すべて同様です。
また、個人事業主は雇用されているわけでもないので、雇用保険で対象になる保障も受けることができません。
例えば、育児休業中や病気やケガで休職している際の手当金の支給が会社員にはありますが、個人事業主にはありません。
このように、個人事業主が国民健康保険・国民年金加入で保障できている内容は、会社員や公務員より薄いと言わざるを得ません。
保険を検討することはリスクを考えること
会社員の方が保障が手厚い事はわかっても保険加入を考えると何から手をつけてよいかわからない。
そんな思考停止状態に陥りがちです。
ここでおすすめしたいのが、いきなり加入すべき保険について考えるのではなく、
今の自分の環境と、将来起こる可能性のあるリスクを先にリストアップすることです。
保険加入を考える上で一番大切なのが、リスクを検討することです。
ここを疎かにすると感覚で保険を選択することになり、結果的に的はずれなものになってしまいます。
自分の現在の環境とリスクがしっかり認識できていれば、加入する保険は自然と決まっていきます。
①自分の環境のリストアップ
- 家族構成
- その家族に扶養義務が現在発生しているか
- 自分が日常的に世話をしなくてはいけない家族がいるか(子育てや介護)
- 自分の仕事内容
などを詳しく検討しましょう。
例えば、金銭的にはパートナーの収入をメインに生計を立てているものの、自分が育児や介護をメインで担いながら仕事をしているという方がいるとします。
この方の場合は、自分が働けなくなる時に育児や介護の担い手がいなくなる問題をどのように解消するのかがポイントになります。
また、仕事によっては出勤出来ない時点で収入がストップする人と、リモートなどで収入が見込める場合があります。
どんな場合が自分にとって収入が断たれる状況になるのかが想像しやすいように、自分の仕事内容の棚卸しも必要です。
②自分の今の生活が維持できなくなるリスクをリストアップ
次に、保険でカバーするかしないかは一度脇に置いて、自分の今の生活が維持できなくなるリスクをリストアップしていきましょう。
また、「自分の今の生活」は仕事とプライベートの両方を指します。
自分が病気になると言った自分のリスクだけではなく、家族のリスクもあわせて想定しましょう。
また、最後に自分の感じている保険のイメージについてまとめておくといいでしょう。
例えば、掛け捨てはもったいなく感じるとか、今の保険料も高い気がするなど。
自分が今の保険に感じていることをまとめておくと、いざ保険を検討するときに役立つでしょう。
許容できるリスク
現在の自分の環境やリスクについて把握ができれば、あとはそのリスクに見合う保険を選択するだけです。
ここでポイントにしたいのが、許容できるリスクと保険でカバーすべきリスクは何なのか線引きをするということ。
まずは、「許容できるリスク」について考えていきます。
起こりうるリスクのなかで自己資金や公的保障等で乗り切れるリスクは、「許容できるリスク」でしょう。
こうした許容できるリスクには、必要以上に保険に加入することはありません。
これまでご説明してきた公的保障の内容を把握せずに公的保障と重複する保険をかけていたら過剰な保障となります。
保障されるときには手厚くて安心かもしれません。ですが、それが毎日の生活の逼迫に繋がってしまったら保険の意味がないのです。
保険でカバーすべきリスク
一方、保険加入すべきリスクとはどんなものがあるでしょうか?
- 自分が就業できなくなると収入面で生活が維持できなくなる場合
- 先ほどリスクのリストアップ時に挙げた例のように、収入面で問題はなくても、育児や介護で外注費が発生する可能性がある場合
- 医療費などが多くかかる場合
などが考えられます。
こうした場合を考慮し、公的保障で得られる金額を差し引いて必要な金額を算出。
最も当てはまる保険を選択することでリスクヘッジが可能です。
就業不能保険とは?
これまで公的な保障制度や個人事業主がこれからも働くうえでのリスク、保険の検討についてみてきました。
個人事業主が一番恐れるべきリスクは「働けなくなること」であると言えるでしょう。
会社員などであれば当面働けなくても金銭的に保障してくれる制度が社会保険上に組み込まれていますが個人事業主にはそれがありません。
個人事業主が「働けなくなる」事態は、現行の公的保障下では即収入減(またはゼロ)を意味します。
どのように保障を考えていくかはとても大切なポイントです。
ここでその「働けなくなる」という事態に備えられる保険として「就業不能保険」をご紹介します。
就業不能保険は、「被保険者が傷害または疾病により入院や自宅療養と言った、所定の就業不能状態になったときに一定額の給付金を支払う」というもの。
このような保険を出している保険会社も少なく、また、加入にあたっては収入の下限があることもあります。
自分がもし何かあったときにすぐ家族が困るという事態にならないように、こうした保険の加入も検討してみるといいでしょう。
個人事業主のリスクに見合う保険を
個人事業主の保険加入についてご紹介してきました。
個人事業主は自分が働けなくなる場合のリスクが会社員より高くなりがちです。
残された家族や働けなくなった自分がいざというときに困ることのないよう、リスクを棚卸しして適切な保険加入をしたいものです。
そのためには正しい公的保障の理解と、定期的な自分と家族の状況把握が不可欠です。
今回ご紹介した就業不能保険は、これまで個人事業主には公的な保険でほぼ保証されていない働けなくなったリスクに対して支給される保険です。合わせて検討してみてください。
この記事を書いた人
- 渡部 梓
大学卒業後アパレルメーカーで販売、ディストリビューター(在庫管理、換金計画策定等)、店舗支援を担当する。結婚退職後、転居し地方公務員へ。個人住民税課税業務に従事。第一子育休中に再転居により公務員を辞し、無職での保活と子連れの再就職活動を経験する。その後アパレルメーカーでのディストリビューター業務の傍らCARRY ME経由でライティング活動を開始。現在は某企業の社内広報業務を行いながらCARRY MEにてライティング関係の業務委託案件を請け負うパラレルキャリア実践者。プライベートでは二児の母。