実践版 成功するB向けオウンドメディアを作る!〜本連載の目的と伝えていきたいこと
その一環で今回から『実践版 成功するB向けオウンドメディアを作る!』と題して数回にわたって、コンテンツマーケティング手法について取り上げていきたいと思います。
そもそも、「コンテンツマーケティング」とはどういう取り組みを示す言葉でしょうか? その定義から進めていきましょう。
この「コンテンツマーケティング」が多くの企業で注目を集めたきっかけは、やはりPPC広告の単価が上がってきたため広告の費用対効果が合わなくなってきたという理由が大きかったように思います。もっと単純に、広告効果が落ちてきたためと言ってもいいかもしれません。
その前に「オウンドメディアってなんですか?」という問いかけもありそうです。詳しくは次回にしっかり定義づけから解説したいと思いますが、まずは、簡単に「企業や組織自らが発行する広報誌やパンフレット、Webサイトやブログなど、自らが所有し消費者に向けて発信する媒体のこと」というざっくり理解を前提としましょう。
第一回めの今回は、ちょっと変化球ですが、数年前に話題になったベストセラーを題材に、コンテンツマーケティングを振り返ってみます。ぼくが非常に音楽好き(主に、ハードロック)でもありますので、そんな話題からスタートさせてください。楽しく読み進められて、課題となっているものごとの理解が深まる、そんなコンテンツを目指します。
目次
ベストセラー『グレイトフル・デッドにマーケティングを学ぶ』からコンテンツのPRを学ぶ
2017年華々しく上場した「ほぼ日」。代表の糸井重里氏が積極的に関わったのが、『グレイトフル・デッドにマーケティングを学ぶ』という書籍です。日本では2011年に翻訳出版されました。
https://www.1101.com/unusual2/
「フリーミアムモデル」「ソーシャルメディア拡散」などの現代的なマーケティング手法を、40年も前からやっていたというのです。
まず、この書籍で紹介されているポイントを列挙しましょう。
コンテンツを無料で提供するということ
グレイトフル・デッドは、観客によるライブの録音を奨励していました。ライブを録音するファンは「テーパー」と呼ばれ、彼らがなるべく高い音質で録音できるよう専用の場所がミキシング・コンソールの後ろに設置されていたそうです。Napster(覚えている人はいますか?)もYoutubeもなかった時代のことですよ。
シェアを奨励するということ
念のために追加で説明をしますが、録音メディアはカセットテープです。デジタルデータではありませんので、要注意。コピーをするたびに音質は劣化してしまう時代のお話ということでもあります。このテープをコピーしたり共有したり編集して創作したりすることを、グレイトフル・デッドは許してくれました。録音を販売しない、が唯一の条件。
バンド側がそれを開放したことで、その音楽はファンによって広がりやすくなり、それがさらなるファンを生むという好循環ができたのです。
(念のために、20歳を越えた娘の周りにも確認したら、誰一人カセットテープを知りませんでした)
個性的であれ、ということ
グレイトフル・デッドは、自分たちが変わり者であるという自覚をしていましたし、そのようにアピールしました。コアなファンにも風変わりであることを奨励し、クリエイティブな表現を後押ししてくれました。言葉を少し変えると、「ユニーク」であれ、というメッセージにつながっています。そして、コアなファンとは「手紙」などのやりとりをしていたそうです。チケットの販売が決まれば、真っ先にファンに知らせる。ファンの忠誠心は強くならざるを得ません。結果的に、それは強固な仕組みとなりました。
トライ・アンド・エラーに躊躇しないということ
グレイトフル・デッドのライブは、すべて即興による演奏スタイルで講演内容はそれぞれまったく異なるものになりました。リーダーのジェリー・ガルシアによると、ライブの80%は即興で、ほかのバンドのように同じ曲を同じように演奏するスタイルに近いものは、20%とのこと。出来が良い日もあれば、悪い日もある。だからといって、自分たちのスタイルを変えることはしない。その頑なさが、また新しいファンを導きました。
行商人コミュニティともシェイクハンドするということ
あまたあるロックバンドは、オフィシャルグッズを確実に売るために、自分たちの管理外の業者は排除しています。我々が見知っている光景は、あくまでそのような管理下でのグッズ販売。しかし、グレイトフル・デッドのライブ会場内では、デッドが手を組んだ行商人コミュニティメンバーが独自に(言わば、勝手に)作るグッズを販売しました。デッドは、ブランド管理をゆるくしてファンを取り込んだかと思いきや、行商人コミュニティとも手を組み自分たちの応援団を組織したのです。
代表的なキャラクターグッズに、デッドベアーがあります。日本でもちょっとしたブームになったことがありますし、現在も熱心なファンがいるようです。
では、「コンテンツマーケティング」として、取り上げられる方法を列挙してみよう
駆け足で『グレイトフル・デッドにマーケティングを学ぶ』の紹介をしてきました。コンテンツにとって重要なのは、ファンが喜ぶものを無料で提供し、熱烈なファンを醸成し、彼らがさらにファンを拡大する行動をしてくれている、そのような仕組みができあがっていたということです。
では、ここで改めて「コンテンツマーケティング」で語られる方法や重要なポイントを列挙してみましょう。
ペルソナ設計をする=ターゲットを明確にすること
「ペルソナ」とは、マーケティング業界では「象徴的な利用者像」のこと。「ターゲットユーザーをより具体化した架空の人物」を作り上げることで、ターゲットの行動パターンやニーズをより明確にできます。一般的には、エクセル(スプレッドシート)やカード型ファイルで整理されることが多いようです。
この、ペルソナ設定によって、コンテンツマーケティングの方向性が決まります。
ペルソナを設計する際には、必ず実際のデータを利用することが重要です。例えば、実際のサービス・商品の販売状況から、現実の利用者・購入者の年齢層・性別が特定できるならば、それを活用するのが賢明。あるいは、アンケート等を行なってどのような属性の方々がユーザーとなっているのか、リサーチすることもよいでしょう。それに加えて市場調査データ等を加味しペルソナを設計していくという流れが基本になります。
ここで重要なのは、思い込みや推測のみで自社に都合の良い「ペルソナ」を作ってはいけないということです。
対策キーワードの選定あるいは、記事化するためのニーズを徹底リサーチすること
ターゲットが明確になったら、そのターゲットの抱えるニーズを徹底的にリサーチすることです。そこから記事にすべき要素が見つかります。
ターゲットユーザーがどのような人物なのかを把握できたならば、彼らがどのような問題を抱えていて、どのような情報を必要としているのか、ペルソナの行動パターンや趣味・嗜好から洗い出してみます。
さらに、そのニーズに沿ったキーワードを設定し、それに沿って作られたコンテンツであれば、結果的に検索ユーザーに見てもらえる確率が高くなり、それがまた Googleからの評価につながり検索結果に反映されていきます。
ターゲットニーズを探るための方法としては、
- ユーザーを集めた座談会を開く
- カスタマージャーニーマップを作成する
などさまざまな手法があります。これらについても、この連載で深掘りしていきましょう。
ユーザーの「なに」を解決できるか狙いを定めること
実際に記事を書き始めるのはここからです。
ここまでは、記事を書き始めるための準備作業でした。コンテンツマーケティングには、実際に記事を書く以前の「設計」が肝心です。
ぼくは、常に「お土産を渡せるコンテンツであるか」を何度も問いかけることだと説明しています。
記事を読んでもらったあとに、きちんと
「これは始めて知った、よかった〜」
「なるほど、いままで漠然としてたけどよく理解できた〜」
「これは、ユニークなことだ、面白い!」
などなど、読者自身がそれまでに体験し得なかった「お土産」を渡せるコンテンツであることが重要なのだと考えています。
そのことで、読者自身が課題解決を図ることができたり、何か次へのアクションの呼び水になったりすることができれば、その記事の価値が高いということが言えます。
そうした記事は、会社にとって大事な試算となります。
ソーシャルメディア上で拡散されやすいオリジナリティを
ソーシャルメディアは「コンテンツの拡散」を目的に活用します。グレイトフル・デッドにとっては、カセットテープがそのためのメディアでしたが、現代はソーシャル・ネットワークが複数あります。
コンテンツマーケティングにおける流入は、「検索エンジン」と「ソーシャルメディア」が主流です。ソーシャルメディアは、拡散されれば早い段階で新規ユーザーを獲得できる可能性がありますので、効果的に活用するための経験が必要です。いうまでもなく、拡散されるための記事はどういうものかという前提条件があります。
- 人に教えたくなるものである
- 役に立つ情報だから保存しておこうと思えるものである
アクセス解析=効果測定して、必要あれば記事を改修する
繰り返しますが、コンテンツマーケティングとは「ユーザー」=読者が起点となる施策なのですから、ユーザーの反応を無視したまま続けていては成功から遠のくばかりです。
具体的には、きちんとアナリティクスを進めて、記事の改修やメディアの見直しを繰り返していかなくてはなりません。
Googleアナリティクス、 Google Search Consoleなどの設定は、メディアの開始からすぐに済ませておくべきです。
一方、意外と注意の必要なのが「エゴサーチ」で、 Twitter上などで自社サービス名やホームページの URLなどを検索してみると、アンケートや座談会では得られないような率直な意見を確認できます。
この項目でもっとも重要なのは、コンテンツ(各記事)の評価です。
単純に PVが多いという単純な指標だけで判断をしていてはいけません。メディアがうまくいかないと悩まれる場合の原因の8割がこの評価が誤っているためによるものです。
この点についても、連載の中で充分に解説をしていきます。
これからのB向けコンテンツのあるべき姿を希求する試みを始めよう
コンテンツマーケティングを成功させるためには、 ペルソナを設計して ターゲットユーザーへの理解を深め、彼らがどのような情報を欲しているのかを洗い出し、そのニーズに沿ったキーワードの選定を行ない、「役に立つ」記事を作っていくことです。
さて、このたびはB向けメディアにとっての必要な方法は何か、と課題を少し絞っています。C向けとの違いはどこにあるのでしょう?
実は、本音採用もそうなのですが、ぼくが携わるメディアの多くは、デバイス別の比率が現在の一般的な数字とは大きく異なっています。80%がPCでの閲覧です。もちろん、レスポンシブ対応していたりスマホ用のサイト分岐をしていたり最適化もきちんとしていますが、ビジネス時間に会社であるいは会社のパソコンで閲覧するユーザーがほとんどになっています。
一番大きく異なるのは、この点ではないかと考えます。
キュレーション系のビジネスメディアも人気のようですが、それらはスマホアプリ化が進んでいます。スモールメディアでもスマホアプリを作る動きもありますが、悩みを抱えたビジネスマンがどこで見るか、どこで考えるか、そして次のアクションをどうするのかを考えたうえでのコンテンツ設計はとても重要だと考えるのです。
現在のあり方にしても、まだ完成されたものではありませんから、今後のあるべき姿を考えていく姿勢がまだまだ大切だと実感もしています。この連載を通して、その新たな道筋も明らかにできればと思います。そう考えると、今回取り上げたグレイトフル・デッドの40年も前からのチャレンジにもその大きなヒントが隠れているように感じられてなりません。
では、これからの連載にご期待ください。引き続きのご購読をよろしくお願いいたします。
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この記事を書いた人
- 野田 収一
1966年生まれ。
大学卒業後、書店店長を営みながらamazon.comの誕生を目の当たりにし衝撃を受けWebを仕事にしようと心に決める。 (株)リクルートのWeb制作に携わり、愛知県下の有名企業のWebサイト、採用サイトのプランニングから制作までをディレクター/プロデューサーとして一貫して担う。大手企業のインターネット初期のサイトに数多く携わっていました。
現在は、Webマーケティングをテーマにセミナー開催、執筆等を行なっています。また、「新しい働き方」推進のために複業を実践もしながら、個人の生産性向上アップのための講演なども準備中です。
大規模サイトから小規模サイトまで、臨機応変にサイトのシステムからマーケティングまで統括的な知識を持っていることは大きな強みでもあります。 近年のマーケティング分野での実績は、
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