年俸制とは?年棒制の仕組みをわかりやすく解説

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年俸制とは、賃金の全額又は相当部分を労働者の業績の目標の達成度を評価し年単位で設定するという制度です。日々社会保険労務士として企業の経営者や人事担当者の方とお話していると、特にベンチャー企業などは「年俸制ってどんな仕組みなの?」と興味をお持ちの方が多いように思います。 通常の給与制とは違う響きを持つ「年俸制」ですが、実はその仕組みを誤解している方も多くいらっしゃいます。 今回はこの年俸制をわかりやすく解説していきます。

年俸制とは?

年俸制というと、プロ野球選手のように年の成績によって年俸が大きく変わるというイメージを持つ方もいるのですが、日本で一般的に導入されている年俸制の実態はそのような成績に応じて毎年著しく劇的に変動するようなものではなく、毎年の目標を設定し年度末にその達成度を評価し、翌年の目標と年間の賃金を定めるという「①年単位の目標管理を ②賃金に反映させる」というプロセス自体に価値が置かれて導入されているように感じます。また、年俸制は1年間に支払われる給与が事前に確定しているという特徴もあります。

通常の月給制の場合、月々の給与とは別に業績に応じて賞与が別途支給されることが多く、また月々の給与自体も半期または四半期ごとの評価に応じて1年の間に変更されることもあります。年俸制の場合には、年間で支給額を決めますので通常年間の給与総額が確定しているといった特徴はありません。

年俸制を取り巻くよくある誤解 Q&A

年俸制の誤解

Q. 年俸制だと、毎月賃金を支払う必要はない?

A. 年俸制という名前から1年に1回全額が支給される制度と勘違いしている方もいますが、労働基準法上、賃金については「毎月払いの原則」というものがあります。そのため、例えば年俸額600万円と決まっていたとしても12分割して毎月50万円ずつ支払う必要があります。毎年のどこか一定のタイミングで全額又は2回に分けて・・・のような支給方法は認められていませんので注意が必要です。

Q. 年俸制だと割増賃金を支払う必要はない?

A.年俸制というと、「年額で支給する金額ががっちり決まっている」という印象を与えるためか、割増賃金は不要というふうに誤解している方が結構な数いらっしゃいます。しかし、年俸制を導入していても割増賃金は必要です。

詳しくみてみると、

①賞与内包型(賞与を合算した金額を基本年俸とし、これを16等分し毎月支払うほか、年2回賞与を支払う場合)
⇒年俸額を12分割したものを1か月の平均所定労働時間(賃金規程による)で除した金額に125%などの割増率を乗じ、1時間あたりの割増賃金単価を出し、時間外労働時間を乗じて算出された割増賃金額を支給する必要があります。

②賞与別途型(基本年俸は月例賃金を12倍したもののみとし、賞与は別に支給する場合)
⇒月例賃金を1か月の所定労働時間(賃金規程による)で除した金額に125%などの割増率を乗じ、1時間あたりの割増賃金単価を出し、時間外労働時間を乗じて算出された割増賃金額を支給する必要があります。

③ハイブリッド型(月例賃金を12倍したものに、基本賞与として100万円は必ず保障し、それとはべつに業績に応じた賞与を支給する場合)
⇒月例賃金×12に基本賞与額100万円を足したものを、12分割したものを1か月の平均所定労働時間(賃金規程による)で除した金額に125%などの割増率を乗じ、1時間あたりの割増賃金単価を出し、時間外労働時間を乗じて算出された割増賃金額を支給する必要があります。
なお、上記①~③の全ての場合において、もしあらかじめ月40時間分の割増賃金相当額を支給しておくという、いわゆる固定残業手当部分が含まれていることが明らかにされているのであれば、通常の賃金の場合と同様に、固定残業手当分を上回った分のみ割増賃金は支給することだけで問題ありません。

Q. 年俸制の場合、所定労働時間を早退・欠勤した場合でも賃金控除できないのでしょうか。

A.こちらも年俸制というと、「年額で支給する金額ががっちり決まっている」という印象のせいか、欠勤控除、遅刻・早退時の控除ができないと誤解されている方が多いです。しかし、こちらも年俸制を導入していたとしても、もちろん控除可能です。

賃金の大原則として「ノーワーク・ノーペイ」という原則があります。これは労務の提供が労働者自身の意思によってなされない場合、賃金も支払う必要がないという原則です。 そしてこの原則は年俸制の場合でも、「労務提供がなかったとしてもこの年俸額を絶対に支払う」ということを特別に約束していない限りは当然に控除が可能です。

では、具体的に欠勤を例にして、控除額はどのように計算するかという点を、先ほどの割増賃金時にみた類型ごとに説明していきます。

①賞与内包型(賞与を合算した金額を基本年俸とし、これを16等分し毎月支払うほか、年2回、2/16ずつ賞与を支払う場合)
⇒すでに、賞与部分も金額が確定しているため、賃金規程に定めがあれば全年俸額をベースに年間所定労働日数(賃金規程による)などで除した額を控除することが可能です。

②賞与別途型(基本年俸は月例賃金を12倍したもののみとし、賞与は別に業績に応じて支給する場合)
⇒賞与部分の金額が確定していないため、月例賃金部分のみをベースに月所定労働日数(賃金規程による)などで除した額を控除することになります。

③ハイブリッド型(月例賃金を12倍したものに、基本賞与として100万円は必ず保障し、それとはべつに業績に応じた賞与を支給する場合)
⇒賃金規程に定めがあれば月例賃金×12だけでなくすでに確定している基本賞与額100万円を足したものをベースに年間所定労働日数(賃金規程による)などで除した額を控除することが可能です。 これらは、遅刻・早退時など所定労働日の一部を欠務した場合にも同じように欠務時間相当分に関しては控除可能です。ただし、賃金規程を控除可能な規定にしておく必要がありますので年俸制の導入の場合には賃金規程の整備は慎重に行う必要があります。

年俸制で注意すべき点

年俸制の注意点

年俸制を導入した場合、増額する分には何もトラブルは起きませんが、従業員の業務成績が悪ければ翌年度は年俸額を減額させることになります。その場合に、プロ野球選手のように大幅減額をするということは基本的には難しくなっています。

誤解されている方が多いのですが、年俸制であっても、賃金決定は労働者との合意が原則であり、会社が一方的に決定するということはできません。とはいえ、合意に至らないケースの場合には、裁判例等で下記のような年俸制の運用の取り決めを詳細として定めてありその内容が公平・合理的であれば会社が一方的に年俸額を決定することも可能とされています。

1. 年俸額決定のための成果・業績評価基準
2. 年俸額決定手続
3. 減額の限界の有無
4. 不服申立手続

ベンチャー企業等では従業員の成果を賃金にダイレクトに反映させられるとして年俸制に魅力を感じるところが多くなっています。しかし、このように年俸制で従業員の成果が上がらない場合に減額を適切に行うためには、合理的な評価基準が設計され運用されている必要があります。また、一旦決定した年俸額については契約期間途中における減額は厳しく制限されています。合理的な理由が求められ一方的な減額は難しいものと考えられています。

年俸制を正しく理解しよう

年俸制について誤解していたという方も多いのではないでしょうか。自身が年俸制が適用されているという方については、自分の年俸制が適切に決定されているかを今一度確認してみてください。もしかすると割増賃金などが未払いになっているかもしれません。 一方、企業のご担当者の方は自社の年俸制が適切な設計になっているかこの機会に賃金規程を見返して確認してみましょう!

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この記事を書いた人

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寺島 有紀

寺島戦略社会保険労務士事務所 所長 社会保険労務士。
一橋大学商学部 卒業。
新卒で楽天株式会社に入社後、社内規程策定、国内・海外子会社等へのローカライズ・適用などの内部統制業務や社内コンプライアンス教育等に従事。在職中に社会保険労務士国家試験に合格後、社会保険労務士事務所に勤務し、ベンチャー・中小企業から一部上場企業まで国内労働法改正対応や海外進出企業の労務アドバイザリー等に従事。
現在は、社会保険労務士としてベンチャー企業のIPO労務コンプライアンス対応から企業の海外進出労務体制構築等、国内・海外両面から幅広く人事労務コンサルティングを行っている。
2019年4月に、「これだけは知っておきたい! スタートアップ・ベンチャー企業の労務管理――初めての従業員雇用からIPO準備期の労務コンプライアンスまで この一冊でやさしく理解できる!」を上梓。

寺島戦略社会保険労務士事務所HP: https://www.terashima-sr.com/
2020年9月15日、「IPOをめざす起業のしかた・経営のポイント いちばん最初に読む本」(アニモ出版)が発売されました。
その他: 2020年7月3日に「Q&Aでわかる テレワークの労務・法務・情報セキュリティ」が発売されました。代表寺島は第1章労務パートを執筆しています。

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