業務委託の保険証はどうなる?フリーランスが行うべき健康保険の切り替え方法を解説
2022/1/25
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業界や会社の在り方とともに、人々の働き方や志向も大きく変化しています。
正社員であっても転職して別の企業に勤める方もいますし、契約社員やアルバイト、フリーランスや業務委託など、様々な働き方を選択する方もいます。
自らの意思で雇用されない働き方を選ぶ方もいれば、または会社や仕事の都合によってやむなく正社員という立場を手放す方もいます。
両者に共通して気になる部分としては、
「退職後の健康保険の取り扱いは?」
「退職前の健康保険組合に一定期間入れるって聞いたけど本当?」
といった、健康保険に関する疑問が挙げられます。
今回は退職後、業務委託になった時の健康保険の取扱いについて解説していきます!
参考記事:企業が業務委託を活用するメリット・デメリットを会社経営者が解説
目次
業務委託の保険証・健康保険①再就職先の健康保険に加入する
まず1点目、業務委託ではなく別の事業所に転職するという方は、再就職先の健康保険で引き続き被保険者となるやり方があります。
適用事業所に使用されるものは、本人の意思にかかわらず、適用除外に該当する方を除いて被保険者となります。
ただし退職後すぐには再就職先が決まっていないという方や、退職後は労働者でなく個人事業主や業務委託契約をしてフリーランスになる方もいらっしゃると考えます。業務委託やフリーランスへ転身する方は次に説明する「任意継続被保険者」という制度を使うことも可能です。
業務委託の保険証・健康保険②任意継続被保険者制度を利用する
健康保険の適用事業所を退職した場合は、国民健康保険に加入するのが一般的です。
ただし、国民健康保険は社会保険と比べて保険料が高額になるケースが多いです(退職後の収入によりケースバイケースにはなります)。
このような場合に、被保険者の資格を喪失した後であっても、保険者の資格を喪失した後であってもなお健康保険の適用を受けることができるよう「任意継続被保険者」の制度が設けられています。
任意継続被保険者となるためには、次の資格要件をすべて満たさなければなりません。
①適用事業所に使用されなくなったため、または適用除外者に該当するに至ったため、被保険者(日雇特例被保険者を除く)の資格を喪失したこと。
②資格喪失の日の前日まで継続して2か月以上被保険者であったこと。
③資格喪失の日から20日以内に保険者に申し出ること。
④船員保険の被保険者または後期高齢者医療の被保険者でないこと。
上記の要件を満たした場合には、被保険者の資格を喪失した日に遡って、任意継続被保険者の資格を取得します。ただ上記③保険者への申し出をしたものが、初めて納付すべき保険料をその納付期日までに納付しなかった場合は、任意継続被保険者とならなかったものとみなされます。
また任意継続被保険者は、任意継続被保険者となった日から起算して二年を経過した日の翌日にその資格を喪失します。あくまでも一時的な措置であることに注意が必要です。
任意継続被保険者の場合は、保険料に対して会社負担分がないため、会社員であったときと比べて保険料は倍増してしまうことにはなります(なお協会けんぽの場合、保険料は退職時の標準報酬月額によって算出されます)。
ケースバイケースではありますが、それでも国民健康保険と比較して任意継続被保険者の方が保険料が安価で済む場合もあります。
任意継続被保険者制度を利用したいという方に対しては、要件を押さえたスムーズな手続きが必要です!
参考記事:【無料テンプレあり】業務委託個別契約書とは?基本契約書との違いや作成時の注意点を徹底解説
業務委託の保険証・健康保険③国民健康保険に加入する
退職後すぐは任意継続被保険者となることができますが、
・任意継続被保険者となって2年が過ぎてしまった
・扶養の範囲を外れてしまうほど収入があったが(扶養については後述)自らが社会保険の加入資格を満たさない
という場合などは、国民健康保険に加入することになります。
国民健康保険は、国民皆保険(強制加入)制度です。退職・離職した日から、14日以内に自治体の窓口にて届出をします。
退職証明書・離職票といった、退職日、もしくは社会保険資格喪失日がわかる書類が必要です。
自らが社会保険に加入している、社会保険の加入資格を満たす、といった場合は当然加入できません。短時間労働者に対する社会保険加入範囲は年々拡大されていますので注意が必要です。
フリーランスや業務委託契約での仕事を検討している従業員の方は、「会社を退職後フリーランスになる場合、失業保険は受給できる?雇用保険に入れるケースとは?」の記事もチェックしてみてください!
退職後の健康保険④家族の健康保険の被扶養者となる
自らは社会保険の加入資格を満たせなくても、被扶養者に該当すれば家族の健康保険の被扶養者となることが可能です。
被扶養者に該当する条件は、日本国内に住所を有しており、被保険者により主として生計を維持されていること、および次の(1)収入要件(2)同一世帯要件のいずれにも該当した場合です。
(1)収入要件
年間収入130万円未満(60歳以上または障害者の場合は、年間収入180万円未満)
かつ
同居の場合収入が扶養者(被保険者)の収入の半分未満(※4)
別居の場合収入が扶養者(被保険者)からの仕送り額未満
(給与所得等の収入がある場合、月額108,333円以下、雇用保険等の受給者の場合、日額3,611円以下であれば要件を満たします。)
参考記事:業務委託の費用相場は?コストを抑える方法や実際の依頼内容も紹介!
(2)同一世帯の条件
配偶者、子、孫および兄弟姉妹、父母、祖父母などの直系尊属は、被保険者と同居していなくても同一世帯とみなすことができますが、3親等内の親族(伯叔父母、甥姪とその配偶者など)など、上記の続柄以外の方は被保険者と同居していることが、同一世帯とみなされるにあたって必要です。
扶養の範囲内であればその方に関する健康保険料はかからないことになりますので、こちらも人気の制度です。
ただ、奥さんやお子さんがアルバイトで扶養の範囲を超えるほど稼いでしまったなど、被扶養者の状況は変わりやすいです。
また、被扶養者の収入には、雇用保険の失業等給付、公的年金、健康保険の傷病手当金や出産手当金も含まれる等注意点もございます。扶養に関しても会社と被保険者の間でしっかりとした情報連携が必要です。
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業務委託の保険証・健康保険|対象者の事情や希望に沿った適切な手続きを!
上記の健康保険の在り方は、個々人の働き方と密接な関係をもちます。
「短時間労働を希望するけど社会保険には加入したいので週30時間以上はシフトに入りたい」「配偶者の扶養の範囲内で働きたいので年収130万円未満としたい」といった声をよく耳にする人事担当者の方も多いのではないでしょうか。
一旦は任意継続被保険者となったとしても、任意継続被保険者となることができる期間は2年間であるため、2年後にはまた別の形で健康保険に加入しなければなりません。
退職後の健康保険について、適切な知識のもと、間違いなく加入手続きを進めていきましょう!
また、社員を業務委託契約に切り替える際の注意点についてまとめている記事もございますので、こちらもぜひご覧ください。
正社員から業務委託へ切り替えは可能?契約変更の注意点を社労士が解説
参考記事:業務委託の避けるべきトラブル事例5選!契約上の注意点を徹底解説
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この記事を書いた人
- 寺島 有紀
寺島戦略社会保険労務士事務所 所長 社会保険労務士。
一橋大学商学部 卒業。
新卒で楽天株式会社に入社後、社内規程策定、国内・海外子会社等へのローカライズ・適用などの内部統制業務や社内コンプライアンス教育等に従事。在職中に社会保険労務士国家試験に合格後、社会保険労務士事務所に勤務し、ベンチャー・中小企業から一部上場企業まで国内労働法改正対応や海外進出企業の労務アドバイザリー等に従事。
現在は、社会保険労務士としてベンチャー企業のIPO労務コンプライアンス対応から企業の海外進出労務体制構築等、国内・海外両面から幅広く人事労務コンサルティングを行っている。
2019年4月に、「これだけは知っておきたい! スタートアップ・ベンチャー企業の労務管理――初めての従業員雇用からIPO準備期の労務コンプライアンスまで この一冊でやさしく理解できる!」を上梓。
寺島戦略社会保険労務士事務所HP: https://www.terashima-sr.com/
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