IPOを目指す注目の社会課題解決型ベンチャーが考えるプロ人材の定義や採用・評価体系とは?
2018/10/30
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500社以上の採用の相談に応じているキャリーミー代表の大澤が、先鋭的な採用や人事制度に取り組んでいる企業の経営者に、採用の本音をインタビューする本企画。
第11回は、「環境や境遇に左右されず、誰もが自己実現のチャンスを持つことができる、元気で笑顔あふれる社会の実現」というミッションのもと、プロフェッショナルなスキルを通じて「待機児童」や「高齢化」など社会問題の解決をテーマとしている株式会社ウェルクスの代表取締役の三谷卓也さん。
IPOも目指す注目の成長企業が考えるプロ人材の定義や採用・評価体系などの本音を伺いました。
―まず初めに、ウェルクスの事業概要について教えてください。
会社としては社会問題の解決をテーマとしていて、事業として取り組んでいるのは「待機児童問題」、「高齢化問題」の解決に着手しています。実際には保育士や介護士、栄養士の人材紹介をメインに活動しています。
―どうしてこのような領域に目をつけられたのですか。
元々前職で人材紹介をやっていて、その知見があったので、「何か人材紹介でできるもの、職種はないかな」と考えていた時に、社会的にも待機児童問題の解決が急務ということから、まず初めに保育士の紹介から事業をスタートしました。
最初からそのような理念があったわけではなかったのですが、永続させるために必要な理念をあとから考えて、それに従って、他のサービスにも広がり、現在の形になっていきました。
―まずは、待機児童の問題があり、それを解決するための一案としてサービスを始めたんですね。
そうですね。待機児童の解決だと、保育園をどんどん作らないといけないのですが、「ヒト」が最大かつ唯一のボトルネックだと思ったので、人材紹介からスタートしました。
―保育・栄養士の人材紹介業界において、今トップクラスになられていますが、どうやって今の地位を確立されたのですか?
人材紹介でポイントとなるのは求職者の獲得です。
求職者の登録数がたくさんあるところにはたくさんの求人が集まってきて、求人がたくさんあるところにまたたくさんの登録者が集まってきます。これを「ネットワーク効果」というのですが、そこを上手く使っていました。参入した時に大きな競合がいなかったというのも大きかったと思います。
―登録者数をそれだけ伸ばすためにどういう施策をやられたのですか?
SEOも広告も両方やっていますが、これも前職の経験を生かして、とにかく様々な手を打っています。これが効いたというものが一つあるのではなく、様々な小さい一手の合計という感じです。
―御社がどのような未来を描いているか教えていただけますか。
待機児童問題の解決は、解決したい問題の一つでしかありません。他にも高齢化問題もそうですし、他にも国内だけでなく海外にも色々な課題があり、そちらも手を広げていきたいと思っています。
具体的には「人が困っている問題」です。グローバルにみるとめちゃくちゃあるんですよね。それをうちができるところから解決していきたい。うちのプレゼンスがあるところから着手していき、収益化を実現させて、また更に他の問題へと広げて解決していきたいですね。
―今後、事業を拡大する上で課題はありますか?
新規事業の創出は課題の一つですね。
今、保育業界では人材紹介、派遣、求人広告をやっていますが、保育園事業者や従事者、エンドユーザーが困っている課題に関して、もっと何らかの事業ができるのではないかと思ってます。介護はさらに課題が多いので、もっと何かできないか考えています。
―新規事業をつくるプロセスについてお伺いしたいのですが、三谷さんが思いついたことをトップダウンでやられているのか、もしくは下からアイディアを募集されているのか、どちらでしょうか?
今までは、私が考えて、シミュレーションして、いける!と思ったものを始めていました。現在は、今年の5月に新規事業部を作ったので、部長がロングリストといって、ジャストアイディアでリストを作成し、そこから絞り込みをしてもらって私が相談を受けます。
私からわかることは伝えますが、わからないことは調べてもらって、やりたいと思ったものを経営会議にかけるようにしています。現在2つ通っていて、年明け以降にリリース予定です。
―既存事業も十分に伸びていると思いますが、そこに集中しないで、あえてその周辺の領域で新規事業をやられる思いについて教えていただけますか。
介護の市場規模はある程度大きいですが、保育の市場はそんなに大きくありません。圧倒的シェアをとったとしても、30%程度がラインだと思うので、そうなると、売上の規模は数十億にしかならないと予想しており、もっと上を目指すためには他のところにタネを植えておく必要があると考えています。
あと保育業界の人材紹介については、今は待機児童問題で伸びていますが、少子化で将来的には市場が縮小していくと予想しています。10年後はだいぶ変わっていると思いますね。
―将来を見越しての動きなのですね。ヒトにおける課題はありますか。
マネジメント層の確保ですね。どこの会社も同じだと思いますが、マネジメント層がいて一人一人の社員が強くなっていけば、それはもう強い会社になると思います。
これまでは、現場から生え抜きの社員をマネジメント層へ昇進させることに固執してしまって、現場が疲弊してしまうことがありました。
―現場の人をマネジメント層にあげていた理由はどうしてですか?
前職の会社ではIPOした後に外からコンサルタント出身の人がどんどん入ってきて、昇進するのはコンサル出身の人ではないとダメという空気が流れていました。現場はどうせ無理だよねという雰囲気が流れてしまうので、そのような風にはしたくなかったという思いがあり、現場の人でも昇進できるという会社にしたかったんです。
でも実際には、マネジメント能力がまだ身についていない人材が昇進すると、現場から好かれるためのコミュニケーションをとってしまって、叱るべきときに叱れない等の課題が発生してしまったのです。
―そのような理由があって、外部からハイレイヤーの人材を入れたんですね。
そうですね。去年から今年にかけて一部の役職については外部採用で対処をとっていて、だいぶ会社として安定してきました。
―ちなみに、三谷社長が思うプロ人材とはどういう定義ですか?
・プロとしてのスキル(専門性)を有していること
・プロとしての意識(与えられた責任に対して自ら行動できる)がある
この2つを兼ね備えている人ですね。
―キャリーミーから広報のプロ人材を採用されていますが、なぜ外注ではなく、正社員ではなく、プロ人材だったのですか?
外注については検討もしましたが、御社にお願いしたのは、外注と比較した時に社員のスキルの育成につながると思ったからです。
あとはレバレッジが効く職種だからですね。広報やマーケティングもそうですが、工数に比例しなくて、1人の天才が少しやれば、それだけで多大な効果が出る分野だと思うのでそこがフィットしたと思います。
―まさに広報・PRは工数に比例しない職種ですよね。
あと外注は工数の担保はしてくれるケースは多いですが、そこまでスキルが高いわけではないという点がありますね。外注のプロは優秀なフロントではなく、その下の方がつくと思うので。プロ人材の活用であれば実際にフロントで活躍している人を組織に招き入れることができる点も魅力だと思います。
―プロ人材の活用はこれからも検討される予定はありますか。
専門性があって、責任感のある人がプロ人材だと思うので、組織力ではなく個人の力によって結果が出る、開発とかマーケの分野は相性が良いと思っています。
いま欲しい人材でいうと、マーケターですね。Webディレクターもそうですし、集客できる人が欲しいです。
具体的には広告運用のオペレーションではなく、戦略を考え施策レベルまで回せる人物が欲しいです。オペレーションは正社員の方に任せれば良いので。仮に広告宣伝費に1億円を使っていたとしたら、集客レベルはそのままで20%の広告費の削減ができたら、それだけで採用した価値があります。
―優秀なwebマーケターのプロがたくさん登録しているので、ぜひ紹介させていただきます(笑)次に御社の働き方についてもお伺いしたいのですが、現在、業務委託や時短の正社員や週4日の正社員など、フルタイム以外の働き方をされている方はいらっしゃいますか?
業務委託は数名、時短勤務は4-5人います。時短を認めないことで、辞められてしまうと会社にとっても困ります。
現在は産休でお休みしているのですが、セールスで活躍している時短勤務の女性がいました。人材紹介は夜の方が連絡がつきやすいので、最初は難しいかなと思いましがたが、全く問題なく成果を出し、リーダーとして部下の管理まで担当し活躍していました。
―それは素晴らしい事例ですね。弊社の事業も、時間ではなく、成果で評価するべきだという思いがあります。人材のマネジメントや評価制度についてはいかがですか?
今年に入って「識学」という考え方を導入したんです。それによって責任の振り分けを明確にしていきました。自分の成果が出ないことに対して言い訳をしていたものを認めないようにして、かつ結果を出せば評価されるという仕組みを取り入れました。
いい子だとか、気に入っているとかは関係なくて、ルールを守っている状態で結果を出している社員に対しては、間違いなく評価されるということを打ち出しています。
―なるほど。それは制度として取り入れられたのですか?
そうですね。組織の目標を分解して、個人の目標を漏れもかぶりもない状態まで細分化し、数値化していきました。これにより、誰々のせいでこれができなくなったという言い訳ができなくなりましたね。それによって意識の醸成はだいぶできてきたと思います。
―同じ経営者として素晴らしいなと思うのですが、その反面、社員の方から嫌がられることはないですか。
厳しい言い方になるかもしれませんが、社員で嫌がる人がいるとすれば、それは価値を提供できない人たちになりますね。
AさんとBさんが同じだけ努力をしている。Aさんは成果がすごく出ていて、Bさんはあまり出ていないというとき、Aさんを評価するのはもちろんですが、頑張りの量で評価するというのは市場からの評価を無視することなんですよね。
実態は、Bさんの不足分をめちゃめちゃ成果を出しているAさんが埋めている状態なので、それでは、Aさんが嫌になってしまいますよね。
かといって、Bさんの価値がないわけではなく、そうではなく努力の量を倍にすれば良い、走るのが遅いなら、たくさん練習をして同じスピードで走れるようにするということですね。
努力の量ではなく「結果」を評価します。
―会社と個人の成長速度に関してはどう考えていますか?
会社の規模が大きくなるにつれて、社員に求める成長速度も大きくなりました。去年と同じスキルや考え方では個人もその成長速度についていけなくなってしまうんですよね。
逆についていけている人は市場からも評価されているということになると思います。採用に関しても明確なルールに対応でき、会社規模も年々大きくなるので、自分に対する成長欲求が高い人を探していますね。
―会社として成長を手助けするような機会を提供していらっしゃいますか。
最低限の初期教育はしますが、積極的にはやっていないです。個人の成長を高めるためにはツールや勉強の場は提供しますが、評価されるかどうかはあくまでも自分次第なので、あまり手助けはしないようにしています。
評価されるように努力するも、しないもあなたに任せますというメッセージを打ち出しています。以前は「こういう勉強した方が良いよ」とか言っていましたが、もうやめました。ものすごく依存的になってしまうので。
―私は前々職がコンサルティング会社だったのですが、まさにコンサルティング会社みたいですね。一人一人が独立していて、自分で成長してくださいと。ある意味、一人のちゃんとした大人としてみているということですよね。
そうですね。これまでは「あなたが成果を出せなかったのは私のせいです」と上司が部下に謝ってしまうことがありましたが、そうじゃないでしょと。部下が成果を出さなかったから上司が評価されない。上司が部下に謝るのはおかしいと。
これまではどちらかというとわきあいあいとした雰囲気でしたが、それぞれの責任所在を明確にするためにも、現在は適度な距離感を敢えて作りにいっています。メンバーから社長に直接相談することは許されないですし、レイヤーはかなり意識しています。
―とても組織化された体制づくりをされていますね。逆にそういう変化により、辞めてしまった人もいましたか?
いましたね。しかし、やめて行く人たちはうちの会社と合っていなかっただけで、彼等としても自らにフィットした環境を見つけられたということではないかと考えています。
―自立した人が集まっている素晴らしい組織ですね。
そういう風にしたいと思います(笑)
―自立型で他責にしないというプロ人材を広めたいという思いで事業をしているので、私も大変勉強になることが多かったです。本日は貴重なお話をありがとうございました。
インタビューした人
- 大澤 亮
新卒で三菱商事(株)に入社後タンザニア駐在を経て退職し、慶應義塾大学経営管理研究科修士課程入学。
在学中に、日本初の証券会社比較サイトを創業し米国企業に売却、EC事業を設立し(株)サイバーエージェントに売却。卒業後は(株)ドリームインキュベータにて経営コンサルティングと投資業務を担当する。
その後、(株)土屋鞄製造所に移り取締役兼COOとして2年半で売上・利益を2倍とすることに貢献。同社退職後2009年に(株)Piece to Peaceを創業し、代表取締役に就任する。
2016年からマーケティング分野を中心としたビジネス界のプロ契約サービス「キャリーミー」を創業。2023年現在、パーソルホールディングス(株)・本田圭佑氏等から投資を受け、日本企業へのプロ契約の普及に努めている。
著書 「世界をよくする仕事で稼ぐ」 (プレジデント社より出版)新刊「プロに外注」
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