【2021年最新版】スタートアップ・中小企業におすすめの雇用に関する助成金を社労士が解説!
2021/5/17
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雇用に関する助成金を活用しよう!2021年版厚生労働省管轄の助成金を紹介
新型コロナウイルスにより経済不安が広がる中、企業にとって資金調達は、事業を継続するための喫緊の課題です。
資金調達には銀行等から融資を受ける方法もありますが、国や地方公共団体、民間団体が、創業期の企業をサポートする様々な補助金や助成金制度を用意しています。そのような助成金を利用するのも一つの方法です。特に貸付ではない、返済不要な助成金制度は企業にとって魅力的でしょう。
厚生労働省でも、国の政策や方針を推進するために、企業に対して、雇用に関する助成金制度を毎年数多く用意しています。この4月にも、2021年度の雇用に関する助成金制度の概要が発表されましたので、今回は厚生労働省管轄の雇用に関する助成金について解説していきたいと思います!
厚生労働省が管轄する2021年度の雇用関連の助成金はどのようなものがあるの?
厚生労働省が管轄する2021年度の雇用関連の助成金のうち、代表的なものを4つご紹介します。
雇用調整助成金
雇用調整助成金は、景気の変動、産業構造変化等に伴う経済上の理由で事業活動の縮小を余儀なくされた事業主が、一時的に休業や教育訓練、出向をおこなって労働者の雇用維持を図った場合に休業手当、賃金等の一部が助成されるものです。
教育訓練を実施した場合には、教育訓練費が加算されます。この雇用調整助成金については昨年から引き続き新型コロナウイルス特例は継続されていますが、2021年5月以降順次受給上限額等が縮小されていく見込みです。
現在新型コロナウイルス特例により、売上高または生産量などの事業活動を示す指標が前年・前年等比で1か月5%以上減少している事業主が、労使協定に基づき休業等を実施すると、休業を実施した場合の休業手当の賃金相当額に対する助成(率)として、中小企業4/5 大企業2/3(解雇等を行わない場合は10/10(中小)、3/4(大企業)※1人1日当たり15,000円が上限)がもらえます。
注意:現行の1人1日当たり15,000円の上限額、助成率10/10は、2021年5月~6月は上限13,500円、助成率最大90%となります。
①緊急事態宣言対象区域およびまん延防止等重点措置対象地域に指定され、営業時間の短縮などに協力する企業
②直近3か月の売上高など生産指標が前年同期などと比較し、30%以上減少している企業
は現行の措置を継続されます。また、7月以降はさらに上限額が縮小される見込みです。
キャリアアップ助成金 正社員化コース
こちらは助成金の中でも有名なものなので名前を知っている方も多いのではないでしょうか。
キャリアアップ助成金は、有期契約労働者や短時間労働者、派遣労働者などのいわゆる非正規雇用労働者の企業内での正社員化やキャリアアップ、処遇改善の取り組みを実施した事業主に支給される助成金です。
例えば、有期契約労働者等を正社員に転換し3%賃金を上昇させた場合、中小企業では1人あたり57万円が支給されます。
両立支援等助成金<子育てパパ支援助成金>
従業員の職業生活と家庭生活の両立支援や女性の活躍推進等に取り組む事業主に支給される助成金です。
例えば、男性労働者が育児休業を取得しやすい風土作りに取り組み、かつ男性労働者に子の出生後8週間以内に開始する育児休業を取得させた事業主には1人目の男性社員の場合で中小企業の場合には57万円が支給されます。
両立支援等助成金<不妊治療両立支援コース>
2021年度から新たに設けられた助成金です。
不妊治療のために利用可能な以下6つの休暇制度・両立支援制度
①不妊治療のための休暇制度(特定目的・多目的とも可)
②所定外労働制限制度
③時差出勤制度
④短時間勤務制度
⑤フレックスタイム制度
⑥テレワーク
の利用しやすい環境整備に取り組み、不妊治療を行う労働者の相談に対応し、休暇制度や①~⑥の両立支援制度を労働者に利用させた中小企業事業主に対して下記のとおり助成されます。
1:環境整備、休暇の取得等
1事業主当たり 28.5万円
※「不妊治療プラン」を策定し、不妊治療と仕事の両立のための社内のニーズの調査や、利用できる休暇制度等の周知を行い、当該プランに基づき、休暇制度・両立支援制度を合計5日(回)以上利用労働者に取得又は利用させた事業主
2:長期休暇の加算
1人当たり 28.5万円
※連続20日以上休暇を取得し、原職復帰後3か月以上継続勤務させた場合
1事業主当たり、1年度5人まで
雇用に関する助成金を受給できる要件とは?
厚生労働省関連の雇用関係助成金の受給には、それぞれの助成金ごとの要件のほか、共通して満たさなければならない要件があります。雇用関係助成金を受給する事業主は共通して次の1~3の要件のすべてを満たすことが必要です。特段難しい要件はありませんので問題ないかと思います。
雇用関係の助成金を受給できる事業主
以下に該当することが助成金を受給できる事業主です。必ず押さえておきましょう。
1. 雇用保険適用事業所の事業主であること
2. 支給のための審査に協力すること
(1)支給又は不支給の決定のための審査に必要な書類等を整備・保管していること
※都道府県労働局に提出した支給申請書、添付書類の写し等は支給決定されたときから5年間保存していなければなりません。
(2)支給又は不支給の決定のための審査に必要な書類等の提出を、管轄労働局等から求められた場合に応じること
(3)管轄労働局等の実地調査を受け入れること など
3. 申請期間内に申請を行うこと
雇用関係の助成金を受給できない事業主
また、以下に該当する事業主は助成金を受給することができません。これらも公正に事業を行ってきている企業であれば特段問題ないことがほとんどですが、助成金によっては条件9で記載のとおり事業主都合で解雇している場合には受給できないものがあります。
助成金の受給を考えている企業については、事業主都合の解雇はできる限り避けておく必要があります。
1. 不正受給をしてから3年以内に支給申請をした事業主または、支給申請日後、支給決定日までの間に不正受給をした事業主
2. 支給申請日の属する年度の前年度より前のいずれかの保険年度の労働保険料を納入していない事業主(支給申請日の翌日から起算して2か月以内に納付を行った事業主を除く)
3. 支給申請日の前日から起算して1年前の日から支給申請日の前日までの間に、労働関係法令の違反があった事業主
4. 性風俗関連営業、接待を伴う飲食等営業またはこれらの営業の一部を受託する営業を行う事業主
5. 暴力団関係事業主
6. 破壊活動防止法第4条に規定する暴力主義的破壊活動を行った又は行う恐れのある団体に属している場合
7. 支給申請日又は支給決定日の時点で倒産している事業主
8. 不正受給が発覚した際に都道府県労働局等が実施する事業主名等の公表について、あらかじめ同意していない事業主
9. <助成金ごとに異なる>従業員の雇い入れ等によって賃金の補助を受ける助成金で、対象労働者の雇い入れの前日から起算して6か月前の日から1年を経過する日(※助成金によって期間は異なる)までの間に、当該雇い入れに係る事業所にて雇用する雇用保険被保険者を事業主都合で解雇をしている
中小・スタートアップ企業へおすすめの雇用に関する助成金は?
ご紹介してきた助成金の中でも、「キャリアアップ助成金 正社員化コース」は、比較的受給要件が厳しくなく、受給額も大きいためオススメです。
また、特に創業間もない企業にとっても、創業時に契約社員等やアルバイトで採用した方を正社員に転換するというシチュエーションは少なくないため、中小・スタートアップ企業にも人気の高い助成金です。
また2021年度から、これまで正社員転換前の賃金(基本給等の固定的な賃金)と転換後の賃金(基本給等の固定的な賃金)で5%アップが必要であったところ、このパーセンテージが3%に変更されました。(代わりに、これまで転換後に賞与が支払われる場合一定のケースですと算入できたのですが、その取扱いは廃止されています。)
3%に賃金アップ要件が引き下げられたため、より中小・スタートアップ企業にとっては受給しやすくなったと考えられます。
助成金の申請にはプロの力を借りて、適正な申請を!
厚生労働省関連の助成金にはいろいろな種類があることがお分かりいただけたかと思います。
助成金については、積極的に情報を収集しなければ見逃してしまうようなものも多くあります。また、申請書類の準備や申請期限などが厳格に設定されており不備があると受給できなくなってしまうこともあります。
実際の申請には専門家の助けを借りながら申請することが近道であると考えます。
最後に、助成金の不正受給は厳しく処罰されます。不正受給が発覚した場合には受給額の返還に加え、事業主の名称、代表者氏名等が公表される場合がありますので、自社の受給要件に合う助成金を、正しい形で選択し、適正な申請を行いましょう。
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この記事を書いた人
- 寺島 有紀
寺島戦略社会保険労務士事務所 所長 社会保険労務士。
一橋大学商学部 卒業。
新卒で楽天株式会社に入社後、社内規程策定、国内・海外子会社等へのローカライズ・適用などの内部統制業務や社内コンプライアンス教育等に従事。在職中に社会保険労務士国家試験に合格後、社会保険労務士事務所に勤務し、ベンチャー・中小企業から一部上場企業まで国内労働法改正対応や海外進出企業の労務アドバイザリー等に従事。
現在は、社会保険労務士としてベンチャー企業のIPO労務コンプライアンス対応から企業の海外進出労務体制構築等、国内・海外両面から幅広く人事労務コンサルティングを行っている。
2019年4月に、「これだけは知っておきたい! スタートアップ・ベンチャー企業の労務管理――初めての従業員雇用からIPO準備期の労務コンプライアンスまで この一冊でやさしく理解できる!」を上梓。
寺島戦略社会保険労務士事務所HP: https://www.terashima-sr.com/
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