【2020年4月】同一労働同一賃金義務化とは?対策・制度を解説!
2019/9/27
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目次
2020年4月から同一労働同一賃金が義務化!制度についてご存知ですか?
2019年4月から働き方改革法案が施行され、有給の5日取得義務化や、時間外労働の規制など企業を取り巻く労働環境は大きく変化してきています。
法改正への対応に現在でも苦労しているという企業も多いのではないでしょうか。
さて、さらにこの働き方改革の施策の一つとして「同一労働同一賃金」というものがあることをご存じでしょうか。
2020年4月から、大企業ではこの「同一労働同一賃金」が義務になり、さらに中小企業においても2021年4月から義務化されます。
※なお、中小企業とは、資本金・出資総額3億円(小売・サービス業は5千万、卸売業は1億)以下の企業または従業員数300人(小売は50人、卸売・サービス業は100人)以下の企業のことを言います。
「名前だけは聞いたことがあるが、いまいちよくわからない・・・」といった方も多いかもしれません。
今回はこの「同一労働同一賃金」についてかみ砕いて解説していきます!
同一労働同一賃金とは?制度の背景を解説!
同一労働同一賃金とは、端的にいえば「同じような仕事をしているのであれば、雇用形態が正社員であろうと、契約社員であろうと、アルバイトであろうと、同一の賃金を支給する」という考え方です。
労働契約法、パートタイム労働法、労働者派遣法が今般改正され、「職務の内容や責任の程度、異動・転勤の有無・範囲などを踏まえ、賃金や手当内容だけではなく福利厚生、教育研修等を含めたすべての待遇を均等・均衡にしなければならない」という旨が規定されました。
しかし、これまで多くの日本企業において「契約社員には賞与は支給しない」「有期雇用者は福利厚生はなし」といった、無期雇用の正社員と有期雇用者の間で非合理的な差別が多く見られました。現在でもこのような取り扱いが継続している企業も多いのではないでしょうか。
また、現在日本において被雇用者に占める非正規の従業員の割合は40%程度とされ、非常に多くの方が非正規雇用の形態で就労している現実があります。
正社員と契約社員やパートタイマーといった非正規雇用者の間にある、非合理的な差別を解消することは、
①非正規雇用の方の待遇の改善につながること、
②さらに彼らのモチベーションを高め、ひいては企業の生産性の向上につながる
という狙いをもって、政府はこの同一労働同一賃金の施策に取り組んでいるのです。
対策事例:同一労働同一賃金で禁止される取り扱いとは?
では、実際に同一労働同一賃金の考え方に照らし合わせると、どのような取り扱いが禁止されるのでしょうか。具体的な事例を通してみていきましょう。
事例1: A社の正社員の山田さんと、契約社員の田中さんは、それぞれ上半期の営業成績が同じであった。
しかし、A社では、半期ごとの賞与は正社員のみ対象としており、山田さんには支給したが、田中さんには支給しなかった。
A社の賞与に関する規定には「会社の業績への従業員の貢献度合いで支給」と記載がある。
⇒賞与については会社の業績への従業員の貢献度に応じて支給するとする企業も多く、こうした事例は少なくないかと思います。
この事例1の場合、同じ業績であるにもかかわらず、雇用形態が正社員でないからという理由だけで支給しないとするのは、同一労働同一賃金の考え方に照らし合わせると、問題がある代表的な事例です。
この場合田中さんにも支給することが求められます。
事例2: B社では、社員の父母や祖父母が亡くなった時や、社員自身の結婚等のために利用できる慶弔休暇を制度として設けている。この慶弔休暇の対象は正社員のみとしており。契約社員やアルバイトなどは対象外としている。
⇒同一労働同一賃金ガイドラインにおいて、慶弔休暇についても、差別的な取り扱いは禁止されています。ただ、現在、契約社員に特別休暇は付与しないと就業規則上定めている企業も多いのではないでしょうか。
こうした特別休暇について、一律有期雇用者には認めないとすることは、同一労働同一賃金の考え方に照らし合わせると、こちらも問題がある代表的な事例です。
一方で、週2日シフトのアルバイトさんが慶弔休暇を取得したい場合、休日を振り替えるということが可能でしょう。
いわゆる正社員の場合週5日・フルタイム勤務という特性上、勤務日を振り返ることが難しいということでこのような特別休暇を付与していることと思います。
そのため、一律非正規雇用者には慶弔休暇を付与しないとすることは合理的ではありませんが、たとえば「週の労働日数が少なくシフト等で労働日が調整できる者については付与しない」とすることは合理的と判断できます。
このような取り扱いは許容されるということが政府の同一労働同一賃金ガイドラインにも記載がありますので、該当企業については慶弔休暇の対象を就業規則等において上記のよに変更すべきかと考えます。
同一労働同一賃金への対策:企業に新たに課される義務とは?
上述したように、無期雇用の正社員と非正規雇用者について合理的ではない差別的な取り扱いを行うことが禁止されることとなったわけですが、さらに企業には関連して下記のような義務が課されることになりました。
①雇入れ時に雇用管理上の措置(賃金、教育訓練、福利厚生施設の利用、正社員転換の措置等)に関する説明を義務付け
②説明の求めがあった際に正社員との間の待遇差の内容・理由等を説明する義務を新設
③説明を求めた労働者に対する不利益取扱い禁止
1:雇入れ時に雇用管理上の措置(賃金、教育訓練、福利厚生施設の利用、正社員転換の措置等)に関する説明を義務付け
こちらは、従来のパートタイム労働法に記載があり、パートタイム労働者(正社員よりも労働時間が短い者)についてはこのような雇用管理上の措置が義務付けられており、労働条件通知書の中にも明記しているという企業もあるのではないでしょうか。
これが、今般有期雇用者を含む非正規雇用者全体について、雇い入れ時の説明義務が課されることとなりました。対象が拡大したことを念頭に、労働条件通知書等を改定しましょう。
2:説明の求めがあった際に正社員との間の待遇差の内容・理由等を説明する義務を新設
こちらも、従来のパートタイム労働法に規定があり、パートタイム労働者については適用があったのですが、これが今般有期雇用者を含む非正規雇用者全体について適用が拡大されました。
待遇差については、きちんと合理的に説明できるようにしておく必要があります。
3:説明を求めた労働者に対する不利益取扱い禁止
説明を求めた労働者について、会社が降格したり減給したりといった不利な取り扱いをすることは禁止されることが新たに規定されました。
「あいつは面倒なやつだ」として労働条件を不利にすることはもちろん、嫌がらせ行為などもあってはなりませんので留意してください。
同一労働同一賃金義務化対策にあわせ労働条件・制度の見直しを!
いかがでしたでしょうか。同一労働同一賃金については、これまで日本企業においては慣行的に当たり前に行われていた取り扱いが多くなっておりドラスティックな変革が必要となる企業も多いものと考えます。
しかし、コンプライアンスの観点からもそうですが、人手不足時代において隙間時間等で働いていただけるパートタイマーや有期雇用者の方は、いまや企業の重要な戦力です。
合理的な制度設計は、働く従業員にとって納得性が増し、モチベーションも向上するものと考えます。これが、ひいては企業の採用力にも結び付き、競争力強化にも結び付くのではないでしょうか。
法改正への対応にとどまるというのではなく、今一度自社の各労働条件に不明瞭、不合理な点がないかを洗いだしたりと、自社の制度を見直すきっかけにしてはいかがでしょうか。
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この記事を書いた人
- 寺島 有紀
寺島戦略社会保険労務士事務所 所長 社会保険労務士。
一橋大学商学部 卒業。
新卒で楽天株式会社に入社後、社内規程策定、国内・海外子会社等へのローカライズ・適用などの内部統制業務や社内コンプライアンス教育等に従事。在職中に社会保険労務士国家試験に合格後、社会保険労務士事務所に勤務し、ベンチャー・中小企業から一部上場企業まで国内労働法改正対応や海外進出企業の労務アドバイザリー等に従事。
現在は、社会保険労務士としてベンチャー企業のIPO労務コンプライアンス対応から企業の海外進出労務体制構築等、国内・海外両面から幅広く人事労務コンサルティングを行っている。
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