顧問契約は「雇用」ではない?社会保険や税金の扱い、副業で受ける際の注意点を網羅

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「顧問契約」は雇用契約と何が違うのか。社会保険には加入できるのか。税金はどう処理されるのか。

顧問として働きたいプロ人材や、初めて顧問を受け入れる人事担当者にとって、これらの基本的な疑問は意外と整理されていないことが多いです。顧問契約は法的に雇用契約とは異なる位置づけであるため、社会保険や税金の扱いも大きく変わります。これを理解しないまま契約を進めると、想定外の税負担や保険関連のトラブルにつながる可能性があります。

この記事では、顧問契約と雇用契約の違いを軸に、社会保険・税金の扱い、副業で顧問を受ける際の注意点まで、両者が知っておくべきポイントを網羅的に解説します。

顧問契約と雇用契約は何が違う?7つの観点で整理する

顧問契約と雇用契約の違いを理解する第一歩は、法的な位置づけの違いを把握することです。両者は法律上、まったく別の契約として扱われます。代表的な7つの観点で違いを整理しましょう。

比較項目雇用契約顧問契約(業務委託)
法的性質労働契約(労働基準法が適用)委任・準委任契約(民法が適用)
指揮命令企業側が持つ原則なし(独立して業務遂行)
報酬の名目給与顧問料・報酬
所得区分給与所得事業所得または雑所得
労働時間管理企業側に義務あり義務なし(顧問の裁量)
有給休暇付与義務ありなし

雇用契約は労働基準法、顧問契約は民法が適用される

雇用契約は労働基準法・労働契約法が適用される契約で、企業側に労働時間管理・有給休暇付与・最低賃金保障などの義務が発生します。

一方、顧問契約は民法上の委任契約または準委任契約に該当し、労働基準法の適用を受けません。労働時間や働く場所は顧問自身の裁量で決められるのが特徴です。

指揮命令の有無が両者を分ける最大のポイント

雇用契約と顧問契約を分ける最大のポイントは、企業側が指揮命令権を持つかどうかです。雇用契約では企業が業務の進め方・時間・場所を指示できますが、顧問契約では原則として指示はできません。

「毎日決まった時間に出社させる」「業務の進め方を細かく指定する」といった関わり方が続くと、契約形式は顧問契約でも実態は雇用とみなされる可能性があります。

「契約書のタイトル」より「実態」が重視される

契約書のタイトルが「顧問契約書」となっていても、実態として指揮命令関係や継続的な労務提供がある場合、法律上は雇用契約と判断される可能性があります。これを偽装請負(または偽装委任)と呼びます。

トラブルを避けるためには、契約書の名称だけでなく、実際の働き方そのものを「業務委託らしい関わり方」に整える必要があります。

社会保険・労災・雇用保険の扱いはどう変わる?

雇用契約と顧問契約では、社会保険関連の扱いが大きく異なります。顧問として個人で契約する場合、雇用契約と同じ感覚で考えるとトラブルにつながるため、それぞれの取り扱いを正確に把握しておきましょう。

制度雇用契約の場合顧問契約(個人)の場合
健康保険・厚生年金企業が半額負担で加入国民健康保険・国民年金に個人加入
雇用保険原則加入加入不可
労災保険企業が全額負担で加入原則対象外(特別加入制度あり)
源泉徴収企業が毎月の給与から控除業務内容により必要な場合あり
年末調整企業が実施対象外(自分で確定申告)

健康保険・厚生年金は個人で国民健康保険・国民年金に加入する

雇用契約では健康保険と厚生年金に企業経由で加入し、保険料も労使折半となります。一方、個人で顧問契約を結ぶ場合は雇用関係がないため、健康保険・厚生年金の加入対象にはなりません。

本業を持たない独立した個人事業主であれば、自分で国民健康保険と国民年金に加入する必要があります。

雇用保険は原則として顧問契約では加入できない

雇用保険は雇用契約を前提とする制度のため、顧問契約(業務委託)で働く個人は原則として加入できません。これにより、契約終了時の失業給付や教育訓練給付などは受けられないことを理解しておく必要があります。

労災保険は2024年11月から「特別加入制度」でフリーランスも対象に

労災保険も原則として雇用関係を前提としますが、2024年11月1日から「特定フリーランス事業」として、業務委託で働くフリーランスも特別加入制度の対象に拡大されました。

任意加入のため自身で手続きが必要ですが、業務中のケガや病気に備えて加入を検討する価値はあります。詳細は厚生労働省のウェブサイトや特別加入団体に確認しましょう。

税金の扱いはこう変わる|給与所得と事業所得・雑所得

顧問契約と雇用契約では、報酬の所得区分が異なるため、税金の計算方法も変わります。プロ人材として副業で顧問を受ける場合、所得区分の判断を誤ると確定申告でトラブルになりかねません。

雇用契約の報酬は「給与所得」になる

雇用契約に基づく報酬は給与所得に分類されます。企業が毎月の給与から所得税を源泉徴収し、年末調整も企業側で実施するため、本人が確定申告を行う必要は原則ありません(年収2,000万円超や副業所得20万円超などの場合を除く)。

顧問契約の報酬は「事業所得」または「雑所得」になる

顧問契約による報酬は、原則として事業所得または雑所得として扱われます。継続的・反復的に営まれ、独立性・営利性があり、社会的地位が客観的に認められる業務であれば事業所得に該当し、それ以外の副業的な活動は雑所得に分類されることが多いです。所得区分の判断は副業の規模や継続性に依存します。

事業所得と雑所得は税務上の取り扱いに大きな差がある

事業所得と雑所得は、税務上の扱いに大きな違いがあります。事業所得は青色申告ができ、最大65万円の青色申告特別控除や、給与所得など他の所得との損益通算が認められます。一方、雑所得は青色申告ができず、損益通算の対象にもなりません。

副業の規模が大きく継続性がある場合は、事業所得として申告できるよう、帳簿の保存などの要件を整えておくことが税負担の軽減につながります。

副業で顧問契約を受ける際の5つの注意点

本業がある状態で副業として顧問契約を受ける場合、税金や本業の勤務先との関係でいくつか注意すべきポイントがあります。事前に押さえておかないと、トラブルや想定外の負担を生むことになります。

副業所得が20万円超なら確定申告が必要

給与所得者が副業で顧問報酬を得ている場合、副業の所得(収入から経費を引いた金額)が年間20万円を超えると確定申告が必要です。確定申告を行わないと、無申告加算税や延滞税が発生するリスクがあります。

なお、20万円以下であっても住民税の申告は別途必要となるケースがあるため、お住まいの市区町村に確認しましょう。

本業の勤務先の副業規定を必ず確認する

副業を始める前に、本業の勤務先の就業規則や副業規定を必ず確認しましょう。副業が原則禁止されている、許可制になっている、競業避止規定があるなど、勤務先によってルールが異なります。

違反すると本業の懲戒対象になる可能性もあるため、副業契約を結ぶ前に勤務先に届け出や承認を得ることが大切です。

本業との利益相反・競業避止に注意する

本業の勤務先と競合関係にある企業の顧問を受けると、競業避止義務に抵触する可能性があります。また、本業で得た情報を副業先に持ち込むことも情報漏洩のリスクがあるため、業界が近い場合は特に注意が必要です。

契約前に「本業の業務範囲と副業の依頼内容に競合関係がないか」を双方で確認しましょう。

報酬の所得区分を事前に整理する

副業の規模が小さい段階では雑所得として申告するのが一般的ですが、継続性・規模が増したら事業所得として申告することも視野に入れましょう。

事業所得として認められるには、帳簿の作成・保存などの要件があります。判断に迷う場合は税理士や税務署に事前確認することをおすすめします。

住民税の納付方法で副業が本業に知られる可能性がある

副業の住民税納付方法を「特別徴収(給与から天引き)」にすると、本業の勤務先の経理担当者に副業収入があることが伝わる可能性があります。

副業を勤務先に知られたくない場合は、確定申告時に住民税の納付方法を「普通徴収(自分で納付)」に選択できるか確認しましょう。ただし、自治体や状況によっては希望が通らないこともあります。

受け入れ側の人事担当者が押さえるべき4つのチェックポイント

プロ人材を顧問として受け入れる企業の人事担当者は、雇用契約と顧問契約の違いを理解した上で、適切な契約手続きと運用を整える必要があります。実務上の主要なチェックポイントを押さえておきましょう。

契約書を「業務委託契約書」または「顧問契約書」として作成する

雇用契約と混同されないよう、契約書は「業務委託契約書」または「顧問契約書」として明確に作成します。業務範囲・報酬・契約期間・秘密保持などの項目を盛り込み、雇用契約の特徴(労働時間管理、有給休暇など)を匂わせる文言は避けましょう。

源泉徴収の要否を業務内容で判断する

顧問契約の報酬であっても、業務内容によっては源泉徴収が必要です。

弁護士・税理士・社会保険労務士などの士業への顧問料や、原稿料・講演料・デザイン料などは源泉徴収の対象となります。一方、経営コンサルタントやITエンジニアへの一般的な顧問料は原則対象外です。判断に迷う場合は税理士や税務署への確認を推奨します。

実態として雇用関係に近づかないよう運用を整える

契約は顧問契約でも、実態として「毎日出社させる」「業務時間を細かく管理する」「専属契約で他社の仕事を禁止する」といった関わり方をすると、労働基準法上の労働者と判断される可能性があります。

顧問の業務遂行には一定の裁量を持たせ、報告・連絡のルールも双方の合意に基づいて設計することが重要です。

個人情報保護と秘密保持の取り扱いを明確にする

顧問は社内の機密情報にアクセスする機会があるため、契約時に秘密保持契約を必ず締結します。本業との競合や利益相反のリスクがある場合は、競業避止条項を加えることも検討しましょう。

ただし、過度に広い競業避止は個人事業主側に受け入れられにくいため、合理的な範囲に設定することが現実的です。

まとめ:顧問契約と雇用契約の違いを理解することがトラブル防止の第一歩

顧問契約は雇用契約とはまったく異なる法的位置づけにあり、社会保険・税金・労務管理のすべての面で異なる取り扱いになります。プロ人材として顧問を受ける側も、受け入れる側の人事担当者も、この違いを正確に理解することがトラブル防止の第一歩です。

とくに副業で顧問を受ける場合は、所得区分の判断や本業との利益相反、確定申告など、雇用契約とは異なる注意点が多くあります。基本を押さえた上で適切に契約を進めれば、顧問契約はプロ人材にとっても企業にとっても柔軟で価値のある選択肢になります。

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