
個人事業主と顧問契約を結ぶ際の注意点とは?契約書の書き方から報酬設定、源泉徴収まで

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「社内にない専門知識を持つ人材にアドバイスをもらいたいが、正社員採用は難しい。」そう感じている企業担当者のなかで、個人事業主(フリーランス)との顧問契約を検討するケースが増えています。コストを抑えながら専門知識を継続的に活用できるのが顧問契約の魅力ですが、契約書の書き方や報酬の決め方、税務処理の方法がわからず、踏み出せないまま時間が過ぎてしまうことも少なくありません。
この記事では、個人事業主との顧問契約を初めて検討する企業担当者に向けて、基本のしくみから契約書の書き方、報酬の相場と源泉徴収の実務、よくある注意点まで順を追って解説します。
目次
そもそも顧問契約とは?雇用・派遣・スポット依頼との違い

顧問契約とは、特定の専門知識を持つ人材に月額報酬などを支払い、継続的に相談やアドバイスを受けられる関係を構築する契約です。法的には「業務委託契約」の一種であり、継続的に相談できる体制をつくるという点が最大の特徴です。混同しやすい雇用・派遣・スポット依頼との違いを整理しておきましょう。
| 契約の種類 | 継続性 | 指揮命令 | コスト感 | 主な用途 |
| 雇用契約(正社員) | あり | 企業側が持つ | 高い | 日常業務全般 |
| 派遣契約 | あり(期間限定) | 派遣先が持つ | 中程度 | 一定期間の業務補完 |
| スポット依頼(単発) | なし | 原則なし | 低い | 成果物の単発依頼 |
| 顧問契約 | あり | 原則なし | 中程度(月額固定) | 継続的な専門知見の活用 |
個人事業主・フリーランスと法人、どちらに依頼できる?
顧問契約の相手は、弁護士・税理士などの士業に限りません。マーケター、ITエンジニア、採用・人事の専門家、営業戦略の経験者など、さまざまな職種のプロ人材が対象です。
個人事業主と直接契約する場合は仲介手数料がかからずコストを抑えやすい反面、源泉徴収などの税務手続きを自社で対応する必要があります。コンサルティング法人を通じた契約は手続きがシンプルになりますが、中間マージンが上乗せされることが一般的です。
顧問契約と業務委託契約の関係を整理する
「顧問契約」と「業務委託契約」は混用されることが多い言葉です。業務委託契約は「請負契約」と「委任・準委任契約」を総称する広い概念であり、顧問契約はそのうちの委任・準委任契約の一形態です。具体的な成果物の納品よりも、継続的なアドバイスや知見の提供を目的とするケースに適しています。
個人事業主と顧問契約を結ぶ5つのメリット
個人事業主と直接顧問契約を結ぶことには、法人経由の活用とは異なる独自のメリットがあります。コスト面だけでなく、スピードや関係性の深さにおいても優位性が生まれやすいです。自社の課題感と照らし合わせながら確認してみてください。
採用コストを抑えながら即戦力を確保できる
正社員採用では求人媒体費や入社後の研修コストがかさみます。個人事業主と直接契約することで、仲介手数料が発生せず、初期費用を抑えながら専門人材を確保できます。急いで特定の知識が必要なときにも動きやすいのが特徴です。
業務のスタートが早い
採用から入社まで数カ月かかる正社員採用とは異なり、顧問契約は面談・条件合意・契約書締結のステップを経るだけで、早ければ数週間以内に業務を開始できます。プロジェクトの立ち上げや繁忙期のサポートにも対応しやすいです。
社内にない専門知識をピンポイントで活用できる
SEO・広告運用・新規事業立ち上げ・CRM設計など、社内だけでは補いにくい専門性を、正社員を採用せずに活用できます。「全体的なマーケティングの方向性だけ見てほしい」というような、ピンポイントの活用が可能です。
稼働量を自社のペースに合わせられる
週1回のミーティング参加のみ、月10時間以内のアドバイスのみ、といった形で稼働量を細かく設計できます。プロジェクトの進捗に合わせて稼働時間を増減することも、双方の合意があれば柔軟に対応できます。
長期的な関係が社内の知識蓄積につながる
顧問として継続的に関わることで、その人材は自社の状況・課題・文化を深く把握していきます。経緯を共有しながら課題を解決していける関係性が生まれるため、提案の精度が上がりやすくなります。顧問から得た知識が社内に蓄積されていくという効果も期待できます。
顧問契約書に書いておくべき6つの項目
口頭での合意だけで業務を進めると、認識のズレや請求トラブルが生じやすくなります。以下の6項目を必ず契約書に明記することで、双方が安心して業務を進められる関係を構築できます。
業務の範囲と成果物
「マーケティング全般のアドバイス」といった曖昧な表現は避け、「月2回の戦略ミーティングへの参加」「広告運用の月次レポートレビュー」のように、具体的な業務内容を箇条書きで記載しましょう。範囲外の業務が発生した場合の対応方法(追加費用が必要かどうか)も合わせて書いておくと、後のトラブルを防げます。
報酬の金額と支払い条件
報酬の金額・支払いサイト(例:翌月末払い)・振込先・振込手数料の負担者など、お金に関する条件はすべて明文化します。月額固定型・成果報酬型・時間単価型のどれを採用するかも明記が必要です。源泉徴収が必要な業務の場合は、報酬額が源泉控除前と控除後のどちらかを明確にしておくと、双方の認識を揃えやすくなります。
契約期間と更新・解除のルール
顧問契約の期間は3カ月・6カ月・1年などの単位で設定されるのが一般的です。自動更新条項を設ける場合は、更新の通知期限(例:契約満了の1カ月前までに申し出がない場合は自動更新)を明記します。まずは3〜6カ月を目安に設定し、更新時に見直す方法が取り組みやすいです。
情報の取り扱いと競業の制限
顧問は自社の経営情報や顧客情報にアクセスする機会があるため、秘密保持の条項は必須です。「業務上知り得た情報を第三者に開示しない」「契約終了後も一定期間は守秘義務を負う」といった内容を具体的に記載します。同業他社への同時顧問を制限したい場合は、その旨も明記しておきましょう。
成果物の権利の帰属
顧問が業務中に作成した資料・レポート・コードなどの著作権がどちらに帰属するかを明記しておきましょう。明示がない場合、著作権は原則として制作者(顧問側)に帰属します。「業務上作成した成果物の著作権はすべて委託者に帰属する」と記載しておくのが一般的です。
中途解除の条件と手続き
契約途中で関係を終了する必要が生じた場合のルールも事前に決めておきます。「少なくとも1カ月前に書面で通知する」といった通知期間と手続きを明記しましょう。重大な守秘義務違反などの場合に即時解除できる条項を設けておくと、万が一の際にも対応しやすくなります。
個人への顧問報酬の相場と源泉徴収の実務

報酬の金額感を把握せずに交渉すると折り合いがつかないこともあります。また、源泉徴収の扱いを誤ると税務上のリスクにつながります。報酬相場と税務の基本を正しく理解しておきましょう。
分野別・顧問報酬の月額相場
報酬の水準は、顧問の専門領域・実績・稼働時間によって大きく異なります。以下は目安としての参考値です。
| 専門領域 | 月額報酬の目安 | 主な稼働内容 |
| 経営コンサルタント(個人) | 20〜50万円程度 | 経営戦略立案、役員会議参加 |
| マーケター(デジタル) | 5〜20万円程度 | SNS・広告・SEO戦略のアドバイス |
| ITエンジニア・DX推進 | 10〜40万円程度 | システム設計支援、技術選定 |
| 人事・採用コンサルタント | 5〜15万円程度 | 採用設計、面接同席、組織開発 |
| 税理士(顧問) | 3〜5万円程度 | 月次記帳確認、税務相談 |
| 社会保険労務士(顧問) | 2〜5万円程度 | 労務手続き、就業規則の整備 |
源泉徴収が必要なケースとそうでないケース
個人事業主に報酬を支払う際、すべての業務が源泉徴収の対象になるわけではありません。国税庁の規定によると、源泉徴収が必要な主な業務は以下のとおりです。
源泉徴収が必要な主な業務(支払先が個人の場合)
・弁護士・公認会計士・税理士・司法書士・社会保険労務士などへの報酬・顧問料
・原稿料・講演料・デザイン料などのクリエイティブ業務に関する報酬
・プロスポーツ選手・モデル・外交員などへの報酬
一方、特定の国家資格を持たない経営コンサルタントやITエンジニアへのコンサルティング報酬は、原則として源泉徴収の対象外です。業務の実態によって判断が変わる場合もあるため、不明な点は税理士や税務署に確認することをおすすめします。
源泉徴収が必要な場合の税率は、報酬額が100万円以下の部分が10.21%、100万円を超える部分は20.42%です(所得税および復興特別所得税の合計)。
参考:国税庁「No.2792源泉徴収が必要な報酬・料金等とは」
請求書で確認しておくべきポイント
2023年10月に始まったインボイス制度により、仕入税額控除を受けるには適格請求書発行事業者(インボイス登録事業者)からの請求書が必要です。契約前に相手方がインボイス登録をしているかどうかを確認しておきましょう。また、請求書上で報酬額と消費税額が明確に区分されている場合は税抜金額を基準に源泉徴収額を計算できます。区分されていない場合は税込金額が計算の基準となるため、請求書の記載形式を事前に打ち合わせておくことが重要です。
個人と顧問契約を結ぶ際の3つの注意点
メリットが多い個人との顧問契約ですが、知っておかないと後からトラブルになりやすいリスクも存在します。事前に理解しておくことで、双方にとって良い関係が続けられます。
指示を出しすぎると「雇用」とみなされる場合がある
顧問契約は業務委託契約であり、顧問は企業の指揮命令を受けない立場です。「毎日決まった時間に出社させる」「業務の進め方を細かく指定する」「他の仕事を禁止する」といった関係性が実態として生まれると、法律上の「労働者」と判断される可能性があります。業務の進め方や時間管理に一定の裁量を持たせることが大切です。
業務範囲が広がりすぎないよう最初に線引きをする
顧問との関係が良好になると「ついでにこれもお願いできますか?」と依頼が少しずつ増えていくことがあります。報酬の根拠が曖昧になったり、顧問側の負担が増えすぎて関係が悪化したりする原因になるため、注意が必要です。「業務範囲外の依頼が生じた場合は別途協議の上で対応する」と契約書に明記し、追加依頼が発生した際には必ず合意を取るプロセスを習慣化しましょう。
特定の個人に依存しすぎない体制をつくる
個人事業主との契約では、体調不良・廃業・方向性の変化などにより、突然関係が終了するリスクがあります。顧問から得た知識を社内に蓄積する仕組みをつくることや、バックアップとなる人材候補を早めに把握しておくことが重要です。
まとめ:正しい準備が、個人事業主との顧問契約を成功に導く
個人事業主との顧問契約は、採用コストを抑えながら専門知識を継続的に活用できる有効な手段です。ただし、契約書の内容が曖昧だったり、報酬の税務処理を誤ったりすると後からトラブルになるリスクがあります。業務範囲・報酬・秘密保持・源泉徴収の扱いを事前に整理し、契約書にしっかり明記することが成功のカギです。
また、顧問との良好な関係を長く続けるためには、指示の出し方や業務範囲の管理にも気を配ることが大切です。キャリーミーでは、実務経験豊富なプロ人材との顧問契約をサポートしています。まずはお気軽にご相談ください。
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