【2022年度】人材開発支援助成金「人への投資促進コース」とは?対象・申請方法を解説!
2022/7/7
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目次
人材開発支援助成金は社会人の「リカレント教育」を支援
学校教育からいったん離れた社会人であっても、それぞれのタイミングで学び直し、自己実現につなげたり、仕事で役立つプラスアルファの能力を培うことがますます重要になっています。
このような社会人の学びは「リカレント教育」と呼ばれ、注目を集めています。厚生労働省・経済産業省・文部科学省等の各省は連携して、キャリア相談や費用助成といったリカレント教育支援に取り組み始めました。
事業主向けには「人材開発支援助成金」という助成金が用意されていることをご存じですか?
人材開発支援助成金とは、労働者の職業能力開発を効果的に促進することを目的とする助成金です。雇用する労働者に対して、職務に関連した専門知識や技能を習得させる職業訓練などを計画に沿って実施した場合、または人材育成制度を導入した場合に、訓練経費や訓練期間中の賃金の一部等が助成されます。
2022年度は、新たな支援枠「人への投資促進コース」が設けられ、支援内容がさらに充実しています。そこで今回は、新設の「人材開発支援助成金(人への投資促進コース)」について解説します!
「人材開発支援助成金(人への投資促進コース)」の概要
従来、人材開発支援助成金は以下の4コースにて展開されていました。
①特定訓練コース
正規雇用労働者を対象とした生産性向上に資する訓練などへの経費助成等
②一般訓練コース
正規雇用労働者を対象とした訓練に対する経費助成等
③特別育成訓練コース
非正規雇用労働者を対象とした訓練に対する経費助成等
④教育訓練休暇等付与コース
教育訓練休暇制度などを導入した事業主への制度導入助成等
上記に加え、2022年4月から追加されたのが、「人への投資促進コース」です。「人への投資促進コース」は、「デジタル人材・高度人材の育成」「労働者の自発的な能力開発の促進」「柔軟な訓練形態の助成対象化」を施策の3本柱として、次の5つの訓練を支援対象としています。支援内容は、公募で集まった国民のアイデアが反映されました。
1. デジタル/成長分野(高度デジタル人材訓練/成長分野等人材訓練)
高度デジタル人材の育成のための訓練や大学院での訓練を行う事業主に対する高率助成を新設
2. IT分野未経験(情報技術分野認定実習併用職業訓練)
IT分野未経験者の即戦力化のための訓練(OFFJTとOJTを組み合わせた訓練)を実施する事業主に対する高率助成の新設
3. サブスクリプション(定額制訓練)
サブスクリプション型の研修サービスによる訓練への助成の新設
4. 自発的能力開発(自発的職業能力開発訓練)
労働者が自発的に受講した訓練費用を負担する事業主への助成の新設
5. 教育訓練休暇(長期教育訓練休暇等制度)
働きながら訓練を受講するための休暇制度や短時間勤務等制度を導入する事業主への助成
の拡充
「人材開発支援助成金(人への投資促進コース)」の助成率・助成額
助成率・助成額は、各コースごとに「賃金助成額」「経費助成額」「OJT実施助成額(情報技術分野認定実習、併用職業訓練のみ)」の区分けによって定められています。経費の助成率・助成額は、以下の通りです。
高度デジタル人材訓練/成長分野等人材訓練:中小企業75%/大企業60%
情報技術分野認定実習併用職業訓練:中小企業60%/大企業45%
定額制訓練:中小企業45%/大企業30%
自発的職業能力開発訓練:30%
長期教育訓練休暇等制度:20万円
デジタル関連の訓練に対する経費助成率は、他コースに比べ高く設定されています。情報分野は国が特に力を入れていることがうかがえますね。
1事業所が1年度に受給できる助成金の限度額は1,500万円です(成長分野等人材訓練は最大1,000万円、自発的職業能力開発訓練は最大200万円)。助成金額が大きいことから、以下のような規定もあります。
・経費助成:受講者1人当たりの助成金の限度額
・賃金助成:受講者1人当たりの限度日数/時間
・受講者1人当たりの支給回数の制限
要件は各コース異なるため、申請を検討する際は規定を入念に確認しましょう。
「人材開発支援助成金(人への投資促進コース)」の申請手続きの流れ
Step1 事業内計画の作成等
「事業内職業能力開発計画」を作成し、労働者に段階的・体系的な訓練を実施することが必要です。また、社内で職業能力開発の取組みを推進するキーパーソンである「職業能力開発推進者」を選ぶことが必要です。
Step2 計画届の申請
「訓練実施計画届(様式第1号) 」と「年間職業能力開発計画(様式第3-1号) 」を作成し、訓練開始日から起算して1か月前まで(厳守)に必要書類を都道府県労働局に提出することが必要です。
※通信制により実施される訓練の場合は、「通信制訓練実施計画書(様式第3-2号)」の提出も必要です。
※このほかに、各訓練メニューごとに必要な書類があります。詳細は厚生労働省のHPをご確認ください。
Step3 制度導入
「自発的職業能力開発訓練」と「長期教育訓練休暇等制度」の助成の場合は、就業規則等に制度を定めることが必要となります。
※【自発的職業能力開発訓練】計画提出「前」に制度を導入していることが必要です。
※【長期教育訓練休暇等制度】原則、計画提出「後」に制度を導入することが必要です。
Step4 訓練実施(制度の適用)
「年間職業能力開発計画(様式第3-1号)」に基づき、訓練を実施します。
なお、計画を変更して訓練を実施する場合は、あらかじめ「訓練実施計画変更届(様式第2号)」を提出することが必要です。
Step5 支給申請
訓練計画に記載される訓練終了日の翌日から起算して2か月以内に「支給申請書(様式第5号)」と、必要な書類を労働局に提出することになります。
「人材開発支援助成金(人への投資促進コース)」の申請対象となる事業主、労働者の要件
事業主、労働者については、以下のような要件が訓練メニュー共通の要件とされています。この他、訓練メニューごとに個別の要件が課されるため注意が必要です。
<事業主の要件>
①雇用保険適用事業所の事業主であること
②労働組合等の意見を聴いて事業内職業能力開発計画およびこれに基づく年間職業能力開発計画を作成し、その計画の内容を労働者に周知していること
③職業能力開発推進者を選任していること
④年間職業能力開発計画(様式第3-1号)の提出日の前日から起算して6か月前の日から支給申請書の提出日までの間に、当該計画を実施した事業所において、雇用する被保険者を解雇等事業主都合により離職させていないこと
⑤年間職業能力開発計画を提出した日の前日から起算して6か月前の日から支給申請書の提出日までの間に、特定受給資格離職者(「特定受給資格者」となる離職理由のうち離職区分1Aまたは3Aに区分される離職理由により離職した者)の数を、支給申請書提出日における当該事業所の被保険者数で除した割合が6%を超えている事業主以外の事業主であること。(特定受給資格者として受給資格の決定が行われたものの数が3人以下である場合は除外)
⑥従業員に職業訓練を受けさせる期間中も、賃金を適正に支払っている事業主であること
※eラーニングによる訓練および通信制による訓練を実施する場合であっても、支給対象訓練は業務上義務付けられ、労働時間に該当するものとなるため、原則として当該訓練中に賃金を支払うことが必要となります⑦助成金の支給または不支給の決定に係る審査に必要な書類等を整備、5年間保存している事業主であること
⑧助成金の支給または不支給の決定に係る審査に必要であると管轄労働局長が認める書類等を管轄労働局長の求めに応じ提出または提示する、管轄労働局長の実地調査に協力する等、審査に協力する事業主であること
②については厚生労働省から計画例も公開されているので、今後申請を検討したい企業様は参考にしてみましょう。
<対象労働者の要件>
次のすべての要件を満たす必要があります。事業主同様、この他にも訓練メニューごとに要件がありますので、詳細の確認が必要です。
①助成金を受けようとする事業所において、被保険者であること
②訓練実施期間中において、被保険者であること
③訓練実施計画届時に提出した「訓練別の対象者一覧」に記載のある被保険者であること
④訓練を受講した時間数が、実訓練時間数の8割以上であること
「高度デジタル人材訓練」と「成長分野等人材訓練」においては「育児休業中の者が自発的に受講を希望した場合」も助成対象となります。ただし、訓練中の賃金が発生しないため経費助成のみとなります。その場合、育児休業中の者等には別途要件がありますので、詳細は厚生労働省のHPを確認してください。
人材開発支援助成金で労働者の人生をより豊かに
「人材開発支援助成金(人への投資促進コース)」はまだ始まったばかりの新しい助成金ですが、国民の声を反映した助成金として、非常に高い期待が寄せられています。
特に、業務の一環として教育研修や訓練を行い、企業内での人材育成に取り組む事業主の方や、社内の教育研修・訓練に対して、興味・関心を持つ労働者が多い企業の方、また育児休業中でも自発的な学びを応援したい、という人事担当者の皆様にはぜひ注目いただきたい助成金となります。
学び直しという新たな経験によって、労働者の人生が豊かになることはもちろん喜ばしいですし、経済の先行きへの不安が高まる昨今、知見のある労働者が企業の業績を支え、経済を力強く支えていくことにつながれば、企業や国にとっても非常に有益なことであると考えます!
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この記事を書いた人
- 寺島 有紀
寺島戦略社会保険労務士事務所 所長 社会保険労務士。
一橋大学商学部 卒業。
新卒で楽天株式会社に入社後、社内規程策定、国内・海外子会社等へのローカライズ・適用などの内部統制業務や社内コンプライアンス教育等に従事。在職中に社会保険労務士国家試験に合格後、社会保険労務士事務所に勤務し、ベンチャー・中小企業から一部上場企業まで国内労働法改正対応や海外進出企業の労務アドバイザリー等に従事。
現在は、社会保険労務士としてベンチャー企業のIPO労務コンプライアンス対応から企業の海外進出労務体制構築等、国内・海外両面から幅広く人事労務コンサルティングを行っている。
2019年4月に、「これだけは知っておきたい! スタートアップ・ベンチャー企業の労務管理――初めての従業員雇用からIPO準備期の労務コンプライアンスまで この一冊でやさしく理解できる!」を上梓。
寺島戦略社会保険労務士事務所HP: https://www.terashima-sr.com/
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