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【海外の働き方改革】労働生産性上位国に学ぶ海外の働き方事例

働き方改革は海外でも?

現在、日本政府が取り組む「働き方改革」。CARRY MEでも「働き方改革」の多くの制度を解説してきました。

日本の「働き方改革」は少しずつ浸透し成果を上げてきているものの、まだまだ発展途上です。では、日本より労働生産性が高いと言われている海外の国々では、どのような「働き方改革」がなされているのでしょうか?

本記事では労働生産性が高いとされている国を中心にその「働き方改革」の取り組みをご紹介します。あなたの組織でも導入できるもの、参考になるものがあるかもしれません。

労働生産性の高い国とその事情

2018年版 労働生産性の国際比較から見る日本の状況

公益財団法人 日本生産性本部が2018年12月に公表した「労働生産性の国際比較 2018」によると、OECD データに基づく日本の時間当たり労働生産性は 47.5 ドル(4,733 円)で、OECD 加盟36カ国中20 位。

名目ベースでみると、前年から 1.4%上昇したものの、順位は変わっておらず、就業者 1人当たりでみた労働生産性は 84,027 ドル(837 万円)、OECD 加盟 36 カ国中 21 位となっています。決して高いとは言えません。

そればかりかG7では統計を開始した1970年からずっと最下位となっています。

◎時間当たり労働生産性の上位10か国の変遷◎

順位2000年2010年2017年
1ルクセンブルクルクセンブルクアイルランド
2ノルウェーノルウェールクセンブルク
3ベルギーベルギーノルウェー
4オランダアイルランドベルギー
5米国米国デンマーク
6フランスデンマーク米国ド
7ドイツオランダドイツ
8スイススイスオランダ
9デンマークフランススイス
10スウェーデンドイツフランス
日本20位20位20位

日本の労働生産性は、米国(72.0ドル/7,169円)の3分の2程度で、カナダ
(53.7ドル/5,348円)や英国(53.5ドル/5,328円)をやや下回るくらいの水準。
OECD加盟諸国では、アイルランド(97.5ドル/9,710円)とルクセンブルク(94.7ドル/9,430円)の労働生産性が、産業構造や税制などの影響などから突出して高くなっている。
「労働生産性の国際比較 2018」プレスリリース

労働生産性とは?

そもそも、「労働生産性」とはどのように計算されるものなのでしょうか?
「労働生産性の国際比較 2018」プレスリリースによると、

労働生産性とは →労働者1人当たりで生み出す成果、あるいは労働者が1時間で生み出す成果を指標化したもの として表されます。 ※労働者がどれだけ効率的に成果を生み出したかを定量的に数値化したものであり、労働者の 能力向上や効率改善に向けた努力、経営効率の改善などによって向上します。労働生産性の向上は、経済成長や経済的な豊かさをもたらす要因とみなされています。

とされています。労働生産性は、その国の働き方だけではなく基幹産業や政府戦略などとも密接に関わっています。

例えば時間当たりの労働生産性1位のアイルランドは、1990年代後半から法人税率を主要国の中でも極めて低い水準に抑えました。

また、英語が第二公用語であり、日常的に使われているという利点を活かし外国企業を誘致。当時行われたEUの統合とアメリカを中心とした外資からの投資を追い風にして1995年から2000年の経済成長率は10%前後と急成長を遂げたのです。

米国企業を中心にヨーロッパ本部や本社機能がアイルランドに移転し、多くのグローバル企業が欧州連合域内で展開した事業に関わる計上がアイルランドでなされたことで、経済成長と労働生産性の急上昇を実現しています。

2位のルクセンブルクも法人税率などを低く抑え、グローバル企業を迎え入れることに成功していることで、労働生産性が向上。

また、生産性が高くなりやすい金融業、不動産業、鉄鋼業がGDPの大半を占め、特に力を入れている金融業では税制緩和も行って外資誘致に成功しているのもその一因と言われています。

日本はなぜ労働生産性が低いのか?

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一方、日本の労働生産性の低さは日常の様々なところで感じることが出来ます。代表的、かつ身近な例をいくつかご紹介しましょう。

①過剰に丁寧なサービス
日本の「おもてなし」がクローズアップされるなど、日本の丁寧なサービスは世界的にも知られるところです。
しかしこの「過剰に丁寧なサービス」は労働生産性を低くする要因の一つと言っていいでしょう。

例えば再配達のサービス。海外でこのようなサービスはあまりなく、家の前にぽんと荷物が置かれるだけだったり、再配達を依頼すると有料になってしまうのだそうです。

日本では当たり前の、営業時間が長いお店が多い、定休日が少ないといった「お店の利便性の高さ」も裏を返せば生産性の低下につながります。

②質のいい商品、すぐに値下げになる商業環境
日本の商品は総じて安くて質がいいと言われますよね。これも生産性の低下につながっています。
ただでさえ安いものなのに、すぐに値下げになるという商業環境も生産性の低下の一因となっています。

もちろん、これまでも言われているような「労働環境の整備」が必要なことは言うまでもありませんが、こうした身近な例も日本の労働生産性を低くしていると言えるのです。

労働生産性上位国に学ぶ見る日本の生産性向上・働き方改革のヒント

上位2か国は法整備等で産業構造自体を変化させ、労働生産性を向上させたことが大きな要因として挙げられます。もちろんそうした取り組みも必要ですが、一方で「働き方」を変化させ、労働環境を改善することとの両軸で考えていかないと労働生産性は上がっていきません。

労働生産性上位国が導入している「働き方」の制度について見ていきましょう。

【海外の働き方改革】ノルウェーは少ない人口でいかに柔軟に働くかを考え制度設計

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ノルウェーは日本と同じ位の国土面積を持つ一方で、人口は500万人と圧倒的に少ない国です。しかし労働生産性上位国の常連に位置しているのには、フレキシブルな労働環境が一因と言われています。今後人口減少が避けられない日本にとって参考になるケースでしょう。

ノルウェーは物価が高いことでも有名ですが、人口が少ないのでサービス産業に人員を割けないためと言われています。
そこで、ノルウェーでは働き方にも工夫があります。まず、主流となっているのが日本でも知名度が高くなっている「フレックス制」。出勤・退勤時間を自由に決められることで、労働環境の自由度が高く生活の質が保たれていると言われています。また、コアタイムもない「フルフレックス制」を導入している企業も多くあるようで、より労働者の意志で労働時間が変更できる制度作りが進んでいます

ワークスアプリケーションズの調査によると、フレックスまたはフルフレックスを導入しているノルウェー企業は82.5%と、日本の34.5%を大きく突き放す結果になっています。また、リモートワークについても日本では20.9%しか認められていない一方でノルウェーでは77.5%が認められています。仕事に対する自己裁量権やICTへの導入もノルウェーの方が進んでいます。

その上、人口が少ないということもあって女性が活躍する社会形成が進められています。女性議員の割合を決めるクオータ制の発祥はノルウェーの首都オスロなのだそうです。

一方、産業構造という面では、ノルウェー自体が産油国で国の資源が潤沢です。インフラの整備や各施設の建設など物価は高いですが、同時に労働環境を含めた生活の質も高いため、労働生産性が上昇しているのです。

【海外の働き方改革】米国は企業ごと・州ごとの取り組みが盛ん

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アメリカも労働生産性の上位常連国です。アメリカではIT関連への積極的な投資が大きい要因の一つとして考えられています。もともと規制の少ない市場を形成していたアメリカなので、IT投資は生産性の飛躍的な向上に効果を出したと言っていいでしょう。

また、アメリカへ行かれたことのある方は日本に比べてサービス業全体のサービスに対する対価が高いと感じたかもしれません。このように、サービス業でも労働生産性を下げないという点も労働生産性を高く維持するコツとも言えます。

一方「働き方」の観点から見ていくと、「フレキシブルワーク」と呼ばれる働き方の制度を企業ごと・州ごとに取り組んでいるという点がアメリカらしい特徴の一つです。

この働き方の制度は企業ごとに労働者との契約のなかで交わされることが一般的です。特にIT系のスタートアップ企業を中心に完全成果主義の「スーパーフリー」と呼ばれる制度が導入されています。これは、働く場所や、労働時間も自由という働き方で、プロジェクトなどで多忙な時期には集中して働き、閑散期等に長期休暇を取得するといったことが可能になります。

また、大統領経済諮問委員会の報告(Work-Life Balance and the Economics of Workplace Flexibility Report 2014)によると、フルタイム労働者の66%が、何らかの形でフレキシブル・ワークを認められています。(リクルートワークス研究所レポートより)

オバマ政権下では、介護をしている人を支援し、質の高い保育サービスを受けられるための大統領予算を導入。2010年には在宅勤務推進法案を可決して、在宅勤務を連邦政府から推進しています。バーモント州やカリフォルニア州など、州単位でも家族の事情などで柔軟な働き方が必要な人への支援策が講じられているんだそうです。

【海外の働き方改革】ベルギーは労働の男女格差や長時間通勤対策に取り組む

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リクルートワークス研究所レポートの2016年のデータによると、ベルギーでは労働者のうち長時間労働をしているのはわずか5%。OECDの平均13%を大幅に下回っています。

また、ベルギーはEU加盟国で唯一、週間労働時間の上限を38時間に定めています。これは一般的な労働時間週40時間よりやや少ないんだとか。そのため、ベルギーのフルタイム労働者のプライベートの時間もOECDの平均よりやや上回っているといわれています。

このように日本より明らかにワークライフバランスが取れているように見えるベルギーで現在力を入れて取組んでいるのがテレワークと労働機会の男女差の改善だそうです。

ベルギーで社会問題として捉えられているのが、交通渋滞による長時間通勤です。労働者の通勤時間は平均53.2分。2015年にNHKが行った「国民生活時間調査」によると日本の平均は1時間19分、東京圏に限ると1時間45分となっています。
これに比べると短いと思われますが、ベルギーではこうした長時間通勤は労働者のストレスを高めて、プライベートにも影響を及ぼすと懸念されています。

そこで2005年には法整備をしてテレワークを推進。ちなみに、テレワークの具体的な内容は労働契約に組み込まれるべきとされ、給与・成果・労働環境等に関してはオフィスで働く場合と同じ条件の規則が適用されます。

労働機会の男女差の改善への取り組みとしてベルギーが行っているのが、女性の労働参加率を高めることだそうです。具体的には家庭のニーズに合わせて「労働時間の柔軟性」を高めることと、女性と男性の産休および育児休暇を中心に「有給休暇制度を強化」することの2点を挙げています。
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1点目の「労働時間の柔軟性の向上」は、パートタイム契約の増加によりある程度は達成されています。しかしフレキシブルな労働時間を認める法的根拠の整備が遅れているという課題があり、整備を急いでいるのだとか。2013年のベルギーのパートタイム労働者比率は女性(42.5%)の方が男性(8.7%)よりも格段に高く、労働時間の柔軟性というよりも、仕事と家庭を両立するためにパートタイム労働を選んでいるのが実態のようです。この点は日本にも重なります。

2点目の子供を持つ労働者が利用可能な有給休暇制度は、母親休暇、父親休暇以外にも、タイムクレジット・育児休暇があるという点は日本に比べ選択肢に幅があると感じる人が多いのではないでしょうか。

タイムクレジットとは、「勤続2年以上の労働者が取得理由を問われず労働時間を短縮することができる」制度。期間は1年から最長5年と選択が可能で、これまでの雇用契約を保持したまま取得できる点が最大の特徴です。つまり、理由を問われることなく、仕事を失わずに仕事を長期間休むことができるのです。

さらにベルギーでは、一般休暇以外に育児休暇があります。日本でも育児休暇を設定している企業も増えてきましたが、ベルギーで採用されている内容は「子供が12歳になるまで取得でき、手当付き」という手厚いもの。育児休暇を使っても有給休暇にならないことで収入が減るという親の負担を軽減できます。また、養父母や授乳期の母親を対象とした特定の支給もあるそうです。

更に進んで、ベルギーの公共機関の一部で「週4日勤務」を実験的に導入したり、ベルギーのブリュッセルに本部がある欧州委員会でも、一部の職種を除きテレワークやフレックスタイムといったフレキシブルな働き方を導入しています。

また、ベルギーのある企業では、主に働く母親を対象に5つの支援制度を提供し、社会的な評価も高まっています。その5つの支援制度とは下記の通りです。

①自宅に近いワークスペースの提供
②家事サポートスタッフの派遣
③月2回の半休取得
④9月1日(学校の新学期開始日)のフレキシブル・アワー
⑤ライフスタイルのコーチング

これを見ると、新学期は帰宅時間が早まる、新しい生活で子供が不安定になりがちといった家庭の状況をとらえたフレキシブル・アワーなど、子育て世代の実情に寄り添った制度となっています。

【海外の働き方改革】ドイツ人の合理的な仕事への考え方、「職業選択」の教育と労働制度設計とは?

ドイツ金融街
最後にご紹介するのはドイツ。ドイツは労働環境についての法整備がしっかり整っており、効率的な働き方で労働生産性の上位常連となっています。また、ドイツ人の労働や仕事に対しての考え方が日本のそれとは大きく異なることも注目です。

まず 制度についてですが、ドイツの労働に関する制度で特徴的なのが「労働時間貯蓄制度」という法律。これは、残業時間を貯蓄し、「残業代」として金銭で受け取るのではなく有給休暇として取得できるという制度です。この制度は、労働者も金銭的な理由で無用な残業をするということがなくなりますし、企業側でも残業代を支払わずに済むという双方のメリットがあります。

労働時間についての取り決めとしては、労働時間終了後に連続して休息時間を11時間以上取らないといけないという決まりがあります。

休暇制度についても日本と大きく異なります。ドイツの有給休暇は1年に24日付与と法律で決められていますが、30日付与する企業も多いとのこと。基本的に有給休暇はほぼすべて取得するのが当たり前とされ、一度に3週間程度のバケーションを取る人が多いのです。また日本では一般的に考えにくいですが経営者や医師と言ったエクゼクティブ・専門職であっても3週間の休暇を取得しますし、「休暇をしっかりと取得すること」を仕事において大切にしているドイツではそこで仕事が滞ってもよしとしている部分があるようです。

また、ドイツでは有給休暇とは別に病気休暇が存在することが特徴。そのためドイツでは病気で有給が減らないので、安心して療養でき仕事先のメンバーに風邪をうつして迷惑をかけることもありません。

その他、6カ月以上在職している従業員に与えられる労働時間を短縮できる権利を始め、拘束時間・就業期間や就業場所など様々な労働の選択肢を与えられるよう企業毎に用意しています。
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就職前の制度として注目したいのがドイツの「職業教育」です。ドイツでは小学校が4年制。10歳で小学校を卒業するまでに自分で下記3つの進路から自分の道を決める必要があります。そのため、子供のころから自分の将来の職業像を考えながら進路を考えることになります。

①基幹学校(5年または6年制)から職業訓練コースに進む
②実科学校(6年制)から職業専門学校または上級専門学校に進む
③9年制の中高一貫校で大学入学資格取得後、大学に進学

社会に出た後も、必要なスキルは職業訓練などで学んだり、転職をしながら主体的にキャリアを築くという意識がドイツ人の中に根づいています。就職活動に対峙して初めて将来の仕事を真剣に考える人も多い日本とは大きな差があります。

次にドイツ人の仕事に対する考え方について見ていきます。ドイツ人の職場は非常にフラット。

今述べたように、子供のころから制度として自分の将来の仕事を考え、自分のキャリアを主体的に築いているので「仕事はプロとして自分の役割を果たすこと」という考えの人が多いのです。そこで、上司から指示された通りに仕事を行う、確認や承認を上司に求めるということがほぼありません。

また、ドイツでは職務内容についても細かく、明確に定義されています。そこで自分の担当以外の仕事について問われ、「私の仕事ではありません」と拒否することも多いと言います。自己裁量も日本より非常に高く、権限移譲が進んでいます。上司と社員の間でも意見交換は積極的に交わされ、より合理的に仕事ができる方法を常に探っています。

日本では重要とされている「報告・連絡・相談」も、合理的に仕事をしていくのには生産性を下げる要因にもなります。ドイツほどの徹底はすぐに出来なくても、必要な合理化と権限委譲は日本でも行われると生産性が向上するかもしれません。

労働生産性の高い4か国の例を取り上げ、労働生産性向上のヒントを探ってきました。4か国に共通していたのが、「働く時間・期間・場所を自由にしていく」という点。日本の「働き方改革」は、意識も制度もまだ道半ばです。海外ではこのような制度・意識をもって実際に成果をあげています。サービスの良さと言った、日本の良さは生かしつつ、これらの例を参考に企業側からどんどん合理的な働き方ができる制度設計を行う。それがこれからの労働人口減少への対策にもなるのではないでしょうか。

[writer-watanabe]

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