CARRY MEとはCARRY ME代表 大澤亮 特集

正社員ゼロで黒字化を実現できた理由

大澤亮

正社員の人数がゼロのワケ

僕が経営する株式会社Piece to PeaceはCARRY MEなど複数の事業を運営しているが、正社員の人数はゼロである。
2013年から2015年にかけて正社員を複数採用したこともあったが、今はゼロである。
代わりに、「業務委託契約」という形でプロの個人に、部分部分、業務を委託して、事業を運営している。
そのプロを弊社では「助っ人プロ」と呼んでいるが、弊社で採用している助っ人プロの人数は10人を超えている。

運営している事業は、主に以下の3つである。

  • 仕事が舞い込むプロになる CARRY ME (キャリー ミー)
    週1~4回で働きたい個人事業主(何かのスペシャリスト)の成長企業への紹介事業 (毎月100人登録者は増え1000人に。登録企業数も200社以上に。)

  • スキルをつなぐ、キャリアをつくる shAIR (シェア)
    何かを教える個人と学ぶ個人のマッチング事業(会員数は7000人以上に)
    ※こちらは今後、「仕事もスキルもW獲得できるプロ養成講座」としてリニューアル予定。

  • エシカルファッションの海外ブランドの総代理店
    殆どのデパートと取引があり、これまでの出店回数は累計200回を超える。

特に最初のCARRY MEにおいては、事業が最も成長していることもあり、最も手間がかかる。
毎月増える登録者(個人事業主や週3,4回で仕事がしたい主婦層等)との個人面談(カウンセリング)の実施、企業開拓、求人票取得、企業と個人の地道な紹介・・・等、人手のかかることが多く、通常はとても1人では回せない。

だから、「正社員数は?」と聞かれて「ゼロです」と言うと、よく驚かれる。

なぜ、正社員でなければいけないのか?

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理由をお話する前に、皆さま、雇用する側も、正社員として働いている方(雇用される側)も、「なぜ、正社員でなければいけないのか」考えて頂きたい。

日本では社会から、親から、学校から「安定はいいこと。そのために、良い大学に入り大手企業に正社員として入社することが幸せ」と、刷り込まれてきた。ある意味、洗脳だったのではないかと思っている。

※かくいう私も、1991年に早稲田大学に入学し1996年に他の学生同様、大手企業を目指し、大手商社(三菱商事)に入社した。
しかし「正社員で働くことが安定につながり、それが幸せ」という価値観には違和感を感じ、3年で退職、その後は起業して売却したり、コンサルティング会社に転職してみたり、中堅企業の役員をやらせて頂いたり、とキャリアは迷走した。詳しくは大澤のプロフィールを見て頂きたい。

話が逸れたが、企業からすると「正社員を採用すること」は目的ではなく、手段だと思っている。
何の手段かというと、何かの業務を達成する、という目的を達成するための1つの手段が正社員の雇用だと思う。
つまり、目的の達成のためには、弊社のように業務委託で働くプロの個人の方が良い場合もある、というより、むしろスタートアップや相当規模に成長するまではこうした「助っ人プロ」中心の方が運営しやすいのではないか、とすら思っている。

正社員を採用しない3つの理由 

①正社員の採用は目的ではなく、「目的達成のための手段」短期中期では採用すべきは「人」ではなく「スキル」

殆どの人事の方や、多くの経営者すら採用することが目的化しているように思える。
しかし、当たり前のことながら、正社員を採用するだけでは、雇用を生み出すという価値以外は社会に対し何も価値を生み出していない。

正社員を採用後、うまく活用して、付加価値をつけてそれぞれの成果を達成し、社会に何等かの価値を提供し、その見返りとして収益を得て、はじめて会社は成立する。

では、その成果を達成するのに、弊社のような中小企業、スタートアップが真っ先に採用すべきは正社員なのだろうか?
少なくとも、3ヶ月、あるいは1年といった短期・中期的には、人を採用する、というよりスキルを採用する、という観点で、それぞれの専門のプロを業務委託契約という形で採用した方が、達成確度は高い。

なぜかというと、

  • 個人事業主は「雇用」で守られていないため必死で期間内に成果を出そうとする
    (一方、正社員は雇用で守られているため、一般的には短期ではなく中長期で成果を出そうとする。一部の正社員には甘えもある。)

  • そもそものスキルレベルが、個人事業主の方が圧倒的に高いケースが多い
    (そもそもスキルに自信があるから独立するのが個人事業主なので、当たり前といえば当たり前である。)

ただし、個人事業主にも、2パターンあって後者は危険である。

A. 「正社員として働いていたが、スキルがずば抜けて高く、個人でやった方が効率が良い、ないし高収入にできる」という理由で個人事業主になった人と、
B. 「正社員として雇ってもらえず転職もできないから仕方なく」もしくは「スキルはないが働き方を自由にしたいから」という理由で個人事業主になった人

当然、前者を選べば、一般的な正社員よりはレベルは高いはずである。

「社員を採用する」のではなく、「個人に属しているスキルを採用する」という感覚が、今は正しい(合理的)だと考えている。

当然、職種、職務にもよるが、特に、広報・PR、Webマーケティング(SEO対策、ディレクション、メディア運営、広告運用等)、システムエンジニアなど高度のスキルを要求される実務は、プロに任せた方が成果は出やすい。
かつ、成果がでなければ、契約終了として他のプロに任せればよいだけであって、正規雇用のように融通が利かない、というわけでもない。

②中途正社員の採用コストが高すぎる!

完全な売り手市場となり、正社員、特に経験者の採用コストは考えられないほど高騰し、かつ辞めるタイミングもコントロールできないということが2つ目の理由である。

弊社は人材紹介業の免許を取得して以来、正社員の紹介業も実施しており、成果報酬として企業側から個人の年収の30%をいただいている。驚くことに30%でも十分高い報酬だと考えているが、業界の一般的な数値では最近は35%になっているとも聞く。 

年収500万円の個人を採用するのであれば、150万円から200万円の採用コストがかかるというわけだ。
その個人は、すぐに成果を出してくれるのか、ずっと社員でいてくれるのか、ずっと成果を出し続けてくれるのか、こうしたことを考えると200万円近い採用コスト(人件費等含めればさらに2倍3倍のコスト)は高いと思わざるを得ない。

最近は、60万円、100万円の採用媒体に広告を出しても効果がなくなってきていると聞く。
ましてや、「人材の争奪戦」となっている今の時代、いつ辞められて他社に転職していくか読めない時代であり、2、3年後に転職されることも普通にあるだろう。

③正社員採用は雇用リスクがある

弊社のように、新規事業を複数抱え、まだまだ
「どの事業がうまくいくかテストを繰り返している段階」もしくは
「事業の成功は確信しているが、成功のための方程式は模索中の段階」

で、正社員を採用することはある意味、無責任であると思う。
(なので、かつて正社員を採用したことは無責任であったと反省している)

というのは、皆さん、ご存知のとおり、日本の法律では、1度雇用すると原則としては「解雇できない」。

つまり、一生、その人の雇用の面倒を見なければいけない。
年収500万円の人を20年間採用し続けると、それだけで1億円。もろもろの税金等含めると1.5億円はくだらない。
「1人採用につき、1.5億円を支払う覚悟があるか?」
と問われてYesと即答できないこともあり、なかなか正社員の採用には踏み切れない。

最後に、付け加えるとすれば、弊社特有の理由なので一般化はできないが、弊社には「とても正社員では雇えないくらいの優秀な人材」が、どんどん集まる仕組みとなっているから、個人事業主を採用しやすい環境にある、ということも理由としてある。

弊社は「仕事が舞い込むプロになる 〜週1回のプロジェクトから転職まで〜」というコピーでCARRY MEを運営しているため、登録者の1,000人の殆どが個人事業主である。
なんと、全く広告も出してないのに登録者は月100人のペースで増えているが、これも「SEOのプロ」という助っ人プロ採用の結果である。

弊社では、企業に紹介する前に必ず、弊社のキャリアアドバイザーがその個人の職務経歴書を見ながら面談させて頂き、優秀かつ信頼できる個人のみを企業に紹介させて頂いている。
※そのキャリアアドバイザーも業務委託でお願いしている個人である。その中で、関係者全員が驚いていることはその優秀さである。

働き方を少し柔軟にするだけで、これだけ優秀な方が、これだけ加速度的に人数が集まるのである。
こうした運と縁にも恵まれて、優秀な個人事業主の採用コストは殆どかからず採用できている、という利点もあり、そうした業務委託契約で働く個人の活用方法もノウハウとして蓄積できていることから、ますます正社員の雇用は遠のいてしまっている、という実態がある。

(※ なお、今回の記事が「正社員を絶対に採用すべきではない」「正社員として雇用されるべきではない」という趣旨ではないことはご理解いただきたい。)

この記事を書いた人

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大澤 亮

5度の事業立ち上げを経験し、過去に2度事業売却したシリアルアントレプレナー。
1996年に新卒で三菱商事株式会社に入社、タンザニア駐在経験(ODA担当)を経て、帰国。同社退職後、1999年に慶應義塾大学大学院(経営管理研究科修士課程)に入学と同時に起業、2度売却。(日本初の比較サイトを創業し米国企業に売却、EC事業を設立しサイバーエージェント社に売却)

その後、株式会社ドリームインキュベータに入社し、大手企業とベンチャー企業両方の経営コンサルティング、ベンチャー企業投資も担当。同社退職後、土屋鞄製造所に取締役兼C.O.O.として入社し、2年で売上20億円から45億円、経常利益も2倍以上にして退職。その間、人事担当役員として数百人を面接。

2009年 株式会社Piece to Peaceを創業、2013年にスキルのマッチングプラットフォームshAIR(シェア)を創業し、会員1万人に。2015年には、週2、3回で業務委託契約で働くプロ人材(助っ人プロ)と、人手不足の企業の仲介サービス「CARRY ME」のコンセプトを立ち上げ、1年で黒字化達成。300人以上の経営者や人事担当者から採用の相談にも応じている。
著書 「世界をよくする仕事で稼ぐ」 (プレジデント社より出版)

アカデミーヒルズ(六本木)等での講演多数。

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