働き方改革

2018年経産省中小企業白書にみる、中小企業の生産性向上を実現した事例5選

2018年版中小企業白書・小規模企業白書が2018年4月に発表されました。 日本の企業の99.7%は中小企業と言われており、中小企業の景況や生産性向上が日本の国力に影響を及ぼすと言っても過言でありません。
しかし一方で、中小企業こそ生産性の向上にはまだ道半ばとも言われており、今後少子高齢化と労働人口の減少が更に進む日本においてこの問題の解決は急務です。 そこで本記事では中小企業白書の事例から、中小企業で生産性向上を実現したケースを取り上げます。生産性が上がらず苦慮されている中小企業経営者の方や起業間もない方などへ、運用のヒントになるのではないかと思います。

中小企業の景況

まず、中小企業を取り巻く現状の把握をすべく、景況についてみていきましょう。
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(2018年版中小企業白書・小規模企業白書概要より)
こちらの表は大企業と中小企業の経常利益を1980年から年度ごとにグラフ化したものです。中小企業の経常利益はご覧の通り過去最高水準となっており、景況感も改善傾向にあることが伺えます。また、同白書によると、都市と地方間のばらつきも縮小傾向にあるとのことです。
一方で、依然として大企業との生産性格差は拡大しているともいわれています。
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(2018年版中小企業白書・小規模企業白書概要より)
こちらの表では、大企業製造業/大企業非製造業/中小企業製造業/中小企業非製造業 の4つの業種に分け、労働生産性の推移を表したものです。すべての業種で労働生産性は向上しているものの、中小企業のそれは大企業より伸び幅が少ないことが伺えます。この点からも中小企業の生産性向上が急務であるということが良く分かります。

中小企業の生産性を向上させる6つのポイント

では、どのようにすれば中小企業の生産性は向上していくのでしょうか? 本記事では6つのポイントに絞ってご紹介していきたいと思います。

中小企業の生産性を向上させるポイント

① 業務プロセスの見直し
まずはこれまで行っている業務プロセスが現状の最善解なのか確認しましょう。
業務見直しというと基本中の基本のように感じられる方もいるとは思いますが、実際に業務に追われて見直し作業が形骸化している場合もあります。実際、下記の表のように業務の見直し有無で生産性向上に開きが出ています。
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(2018年版中小企業白書・小規模企業白書概要より)
また、PDCAを回して定期的に業務プロセスを現状に即した、より良いものへ見直していく必要があります。

中小企業の生産性を向上させるポイント② 多能工化、兼任化

業務プロセスの見直しができたら、その業務が本当に専任者が必要なのか、兼任化させて人員効率を上げることはできないか検討することも良いでしょう。
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(2018年版中小企業白書・小規模企業白書概要より)
こちらの表は、多能工化・兼任化に取り組んだ企業が3年前と比べて労働生産性が向上しているか調査した結果を示したものです。積極的に多能工化・兼任化を進めている企業の方が、より労働生産性が向上していることが分かります。

中小企業の生産性を向上させるポイント③ IT導入と相談相手の存在

生産性の向上にITをはじめ機械の力を借りることは現代では必須と言えるでしょう。しかし下記の表を見ると、中小企業のIT導入には相談できる相手が地元(=経営者の周囲)にいない場合、相談できず導入に踏み切れないという事実も見えてきます。
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(2018年版中小企業白書・小規模企業白書概要より)

中小企業の生産性を向上させるポイント④ 業務領域や一企業の枠を超えた連携

特にITの分野では、複数分野で取り組むことでITでの生産性向上の効果が相乗的に高まると言われています。下記の表をご覧ください。
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(2018年版中小企業白書・小規模企業白書概要より)
図1のように連携領域が増えることで労働生産性が上がることがわかっています。また、図2のように、企業間でのデータ連携で一層の生産性向上が図れることがデータでも示されています。業務領域や企業間の枠を超えて連携することでITの効果が飛躍的に高まっていくことがわかっています。

中小企業の生産性を向上させるポイント⑤ 設備投資

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(2018年版中小企業白書・小規模企業白書概要より)
図1は中小企業の設備投資額の推移です。緩やかな増加傾向にあることが分かりますが、一方で図2の中小企業の設備投資目的を見ると設備老朽化等を背景とした維持・更新投資が増加していることが分かります。
しかし維持・更新投資だけではなく、生産性向上につながる前向きな投資をより一層進めていくことで更なる生産性の向上を図ることができるでしょう。
### 中小企業の生産性を向上させるポイント⑥ M&A 中小企業においては事業承継等を背景にM&Aが増加しています。買い手側の企業にとっても、シナジーを発揮し生産性を高める契機となりうると言います。
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(2018年版中小企業白書・小規模企業白書概要より)
図1はM&A実施企業の推移です。緩やかに増加していることが見て取れます。一方図2がM&Aの相手先を見つけたきっかけです。「第三者からの紹介」が全体の4割となっています。この第三者の紹介やマッチングのセンスが悪ければM&Aは生産性向上につながりません。逆にマッチング強化がなされれば更に生産性の向上を図ることができるでしょう。

中小企業の生産性向上事例1 業務の見える化

実際に中小企業の生産性が向上した事例を紹介していきます。
まずは業務の見える化によって生産性の向上に成功した有限会社朋友の事例を紹介します。有限会社朋友は千葉県流山市でプラスチック製品を製造する中小企業で、従業員数は17名、資本金は300万円です。
社長が主導で中小企業診断士と二人三脚で業務の棚卸を徹底した結果、金型の交換作業等がボトルネックとなり稼働率および収益力を低下させていることが判明。そこで設備にセンサーを設置し、クラウドを通じて設備の 稼働状況を収集・分析するITシステムを構築したそうです。IT導入に対するコストは約110万円かかったものの、ものづくり補助金により79万円の補助があったので、実質の負担は約30万円とのこと。システム開発期間約1.5か月を要したそうです。
こうしてローンチしたシステムを活用すべく、社長自らがリーダーシップを取ってPDCAを回し稼働率向上を図ったところ、稼働率は約20%向上・利益率も3.9倍にと、大幅に生産性が向上しました。 この例のように単にITを導入するとしても、業務プロセスの見直しを合わせて行わないと効果が最大化されなくなってしまいます。業務プロセスの見直しは生産性向上の大前提であると言えるでしょう。

中小企業の生産性向上事例2 多能工化・兼任化

次にご紹介するのは多能工化・兼任化で生産性の向上に成功した群馬県高崎市の株式会社環境技研の事例です。
株式会社環境技研は、従業員82名・資本金5,000万円の環境アセスメント調査等を行う会社です。この企業では受注案件に偏りが生じると特定の調査・検査を行う担当に業務が集中し、結果特定の社員に残業が偏るという事態になっていました。 そこで、従業員のスキルを一覧化できるマップを作成。このマップ作成を契機に多能工化を行い、受注案件に偏りが出てもスキルに応じ柔軟に他部門に振り分けを行うことが可能になりました。
取り組みが始まってから慣れるまでの4か月間ほどは残業が増加したものの、年間の1人あたりの残業時間を100時間削減することに成功したそうです。 労働人口減少に伴う人手不足は全業種で起こっている問題なので、多能工化・兼任化の進む製造業以外の業種においても積極的な多能工化・兼任化が肝要です。

中小企業の生産性向上事例3 IT導入とベンダ相談

ITを導入して生産性を向上した例として、東京都八王子市のパン小売製造事業者・有限会社アイグランをご紹介します。
こちらの企業は従業員70名・資本金300万円の会社ですが、勤怠・給与管理においてはこれまでアナログで処理をしており、ITに精通した社員もいないこともあってIT未導入の状態でした。 そこで長いつきあいのある地元のIT販売会社からIT補助金活用の提案を受け、補助金を活用して約180万円のクラウド給与・就業管理を導入。各店舗毎に紙で管理していた出勤データをクラウド上管理に変更しました。
結果、給与計算の自動化によって毎月の関係事務を半減以下(7人日→3人日)にでき、勤怠関係業務の生産性が向上したそうです。 このように、中小企業のIT導入は一緒に継続的な取り組みがしやすい地元のIT企業との密な連携がきっかけになることが多く、地元IT企業の働きかけが大きな役割を果たすことが期待されます。

中小企業の生産性向上事例4 設備投資

「前向きな設備投資」で生産性を向上させた企業として、神奈川県の非鉄金属業、株式会社コイワイの宮城工場をご紹介します。(従業員140人・資本金2,000万円)
この企業では、金属鋳造は危険な重労働のため、東日本大震災の影響もあって求人難に陥りました。そこで、特に危険な大型部品の鋳造工程にロボットと、女性が使いやすい電動式ハンドリフトを導入。(ロボット投資額は約5,000万円。そのうち、ものづくり補助金による補助額は3,000万円。 電動式のハンドリフトの購入費用は82万円。)
この2点の機器の導入による効果はロボット導入で生産性は2.3倍に向上し、不良率は10%低減と生産性向上に大きく寄与しました。またパートと派遣スタッフは女性が過半数を占めるまで増加し、労働者確保という課題についてもクリアすることができています。

中小企業の生産性向上事例5 M&A

最後にM&Aによって生産性が向上した事例として、三重県桑名市の株式会社HMEをご紹介します。
この企業は計測機器等の開発設計・製造を行う企業で、従業員100名、資本金1,000万円となっています。こちらでは、大企業で継続できなくなった事業や倒産した企業の事業、後継者難の企業の事業のうち、自社の事業と親和性の高い事業等を3社から取得しました。 取得した技術と自社技術とを組み合わせてシナジーを発揮し、新たな計測機器・分析機器等を開発。グループ全体の売上・収益向上につながっているそうです。このM&Aをきっかけにして企業の付加価値も向上したといえる事例です。

中小企業経営者の課題 結びに中小企業の経営者が抱える課題についてご紹介していきます。

中小企業・小規模事業者では、人手不足から経営者に業務が集中しがちです。下記の表をご覧ください。
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(2018年版中小企業白書・小規模企業白書概要より)
図1のように、人手不足を経営者自身の業務時間の増加で賄っている現状が見て取れます。また、削減したい業務時間の内容として、財務・給与・在庫の管理といった間接部門の内容を挙げている経営者が多くいることがわかります。
こうした間接部門の管理についてはITの得意分野でもあるのでIT導入等による経営者の業務効率化・生産性向上が急務であると言えます。そうした業務にかける時間を経営者自身が削減することにより、より「本業」の業務に当たる時間が増え、更に生産性が上がることが期待されます。

おわりに

2018年中小企業白書から、中小企業の生産性の向上に繋がる事例をご紹介してきました。 業務の棚卸しとITの導入や兼任化など、専任担当以外にタスク処理をできる手を増やすことで生産性が向上していくことが分かります。 まずはどんなことから着手すべきかお悩みの経営者の皆さんには、外部のプロ人材に第三者的な目線から業務の棚卸しをしてもらうことをおすすめします。 実際にCARRY MEも外部のプロ人材を上手く活用することで、創業2年で黒字化し、粗利益10倍にすることができました。ぜひ、中小企業の経営者の方は参考にしてみてください。
▼参考記事: 赤字・借金状態から1.5年で脱却!CARRY MEが創業2年で黒字化し、粗利益10倍にできた理由

この記事を書いた人

azusa watanabe
渡部 梓

大学卒業後アパレルメーカーで販売、ディストリビューター(在庫管理、換金計画策定等)、店舗支援を担当する。結婚退職後、転居し地方公務員へ。個人住民税課税業務に従事。第一子育休中に再転居により公務員を辞し、無職での保活と子連れの再就職活動を経験する。その後アパレルメーカーでのディストリビューター業務の傍らCARRY ME経由でライティング活動を開始。現在は派遣社員として某企業の社内広報業務を行いながらCARRY MEにてライティング関係の業務委託案件を請け負うパラレルキャリア実践者。サイト「イエトシゴト。」を運営。プライベートでは二児の母。

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