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100年続けたい仕事の見つけ方 / Vol.3 新しいモノと古いモノ、職人はどちらを選ぶか?

Carpenter Craftmanship Carpentry Handicraft Wooden Workshop Concept

会社に入れば仕事があり、お金がもらえる時代は終わりました。あらゆるものがより激しく変化するこれからの時代に、どう自分らしく生きていくか?
連載3回目となる今回は、職人が仕事をするときに、新しいモノをどのような視点で考えているのか? を聞いてみたお話です。

職人とのコミュニケーション

皆さんこんにちは。
情報親方こと、東野誠と申します。製品やサービスの取扱説明書(トリセツ)を作る仕事を20年近く続けていて、ジャンルを問わず、トリセツを作る仕事を請け負っています。

そして、トリセツを制作する仕事の傍ら、職人の魅力を次世代の若者に伝えるニコ生番組『ハロー職1』という番組作りにも関わっています。番組はすでに1年ほど続けていますが、伝統工芸を主とした職人さんにお話を深掘りして聞くチャンスが最近増えてきました。

伝統工芸を取り扱う職人というと「頑固」で「寡黙」で、なかなか話しかけにくいイメージがあるのですが、実際にお伺いして話を聞いてみると、気さくで親近感がわき、なおかつ「この人はすごい!」と思わせる方が多くいらっしゃいます。

職人の仕事とは?

伝統工芸品は、ものすごく昔から同じ手法で同じ材料で同じ製品を作り続ける、というイメージが私にはありました、番組を始める前までは。

もちろんそのような製品もあります。
しかし、いくら伝統工芸品とはいえ、原材料や道具が入手できなくなったり、政治や流行の影響があったり、職人さんが何かの都合で離職したり弟子を取ったりと、まったく同じ状況でものづくりができるとは限りません。

「鯨のヒゲ」がない!

automobile di latta a molla - uno

たとえば「鯨のヒゲ」は、時代の流れで原材料が確保できなくなった象徴的なものだといえます。ぜんまいばね、バイオリンの弓(手があたる部分)、傘、扇子、釣り竿の先端部分などに使われています。

鯨のヒゲで製品を作っている職人は、原材料が不足するとどうしているのでしょうか?

職人が持つ在庫をほそぼそと使う。

在庫が減少する情報を入手したら、手に入るときにできるだけ多くの原材料を確保しておきたいところです。職人ももちろん在庫を積極的に確保します。
大量生産を行なわない限りは、手持ちの原材料が一気になくなるわけでもありません。
職人が作業できる範囲内で、手持ちの在庫をほそぼそと使っていく方も多くおられます。

職人が持つ独自のルートから手に入れる。

いい仕事を長年続けていれば、原材料を扱う問屋とも信頼ができ、問屋も「この職人さんに使ってほしい」という気持ちになってきます。
信頼関係を築けるのは、職人の仕事が認められているからでもあります。世の中的には「鯨のヒゲは少ない」と言われていても、信頼関係のある中で入手できるところにはあるのです。

原材料を使う部分を減らす、なくす、別の材料に変える。

昔と原材料や製法が違っていても影響の少ない部分、たとえば製品の内部でプラスチックに置き換えられても機能的に問題がない部分であれば、新しい製品としてアレンジされることになります。
または、旧来の作り方で作るモノと、アレンジした作り方で新しい付加価値を見いだした製品があれば、選べる自由度が増えてきます。
旧来の作り方で作っていれば修理となった場合も手間がかかるので、買う側としても負担は少なくなるかもしれません。

新しいモノを受け入れる、とは職人にとってどういう意味か?

職人はものづくりにかけては、自分独自の道を開拓し、製品の完成度を極めた人です。
昔から同じように作ってきた製品の中には、仕様を変えずに作りたいモノもあるでしょう。
現実的には、変化に対応して新しく生まれてくるモノもあります。

仕様を変えて新しいモノになることについて抵抗があるかどうか、何人かの職人に聞いてみたところ、変わることに特に抵抗はない、という回答が返ってきたこともあります。

ニコ生番組の取材を通してずっと感じていることは、「職人が経験してきた生き様が製品作りに高いレベルで反映される」ことです。
職人という魅力あるフィルターを通して、新たな付加価値が込められた製品が生まれてくることで、職人の「この人はすごい!」が「この製品はすごい!」に引き継がれるのです。

職人が生み出す「新しさ」

製品を生み出すのは職人ですが、生み出した製品のうち、変わらずに続いているモノ、変わっても続いているモノ、どちらも職人の技や伝統、魂が込められています。
そして、製品の価値は職人の生き様が反映されます。

これから職人になりたいと思う人には、「生き様」がキーワードになるのかもしれません。

この記事を書いた人

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東野 誠(情報親方)

「トリセツで、人の心をつなぎます」
Polaris Infotech 株式会社 代表取締役
1998年 大阪府立大学工学部機能物質化学科卒業。複写機メーカーに入社、トリセツ(取扱説明書)制作部門に配属されたが会社が1年半で倒産。取材に来たテレビ局に「あなたの会社はつぶれましたけど、どうですか?」と謎のインタビューを受けたことをきっかけに、トリセツ制作の業界に進むことを決意。
1998年から、様々な業界の製品やサービスのトリセツ(取扱説明書)の制作に従事し、200冊以上のトリセツを制作。 就業しながら武蔵野美術大学でDesignを学び、2002年 日本マニュアルコンテストにて、部門優良賞(家庭製品第2部門)受賞他。
最近では、ハードウェア、ソフトウェア、IoT等のトリセツをつくりながら、トリセツ制作ができるひとづくり、トリセツを必要としないしくみづくりにも注力。
「幸せを生む」トリセツの作り方支援サービス「トリセツのトリセツ」、職人と若者をつなげるニコ生番組「ハロー職1」も運営しながら、墨田区の商工業アドバイザーにもなっている。 【URL】
Polaris Infotech株式会社  https://www.polarit.co/
トリセツのトリセツ https://happytorise2.com/
ハロー職1 http://hellosyoku1.jp/
【Facebook】
https://www.facebook.com/hmakkoh
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