経営者の採用に対する本音をインタビュー

週1正社員もあり得る!? 農産業にITで革新を起こす企業に求められる人材ー経営者が語る熱い本音

経営者から事業や採用についてのホンネを直接インタビューするこの企画。第4回は農業ベンチャー企業で初の東証マザーズ上場を果たした株式会社農業総合研究所の代表取締役社長を務める及川智正さん。情熱と最新の技術を持って、農産業の課題解決に取り組む企業が描く農業の未来や、イノベーションを起こし続ける企業に求められる人材について、その本音を聞き出しました。

ITを駆使して古くから続く産業を支える!農業総合研究所の参入で農業は何が変わった?

起業のきっかけは農業への熱と自らの実体験から

弊社では「持続可能な農産業を実現し、生活者を豊かにする」をビジョンに掲げ、農業の流通をコーディネートしております。これまでに、農業の生産と販売の仕事はしてきたのですが、農業の現状を変えるには生産でもなく販売でもなくその両者が交わる場所、つまり流通の現場を変えなければいけないことに気づいたんですね。
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大学生の頃から農業に強く関心があり、卒論で農業の未来について調べていました。その頃に上がっていた問題、例えば農業をやられる方が高齢化して後継ぎがいなくなったり、職業自給率の低下など、これらの問題は今も変わらず起きています。この問題が解決されず、農業がこのままなくなってしまうのは非常によくないことです。農業は世界の人々の胃袋と心を満たす産業ですから、それを衰退させないためのしくみを作ろうとこの農業総合研究所を立ち上げました。

農産業を「ビジネスとして魅力のある産業」へ。その仕組みづくりとは

私の持論として、資本主義で儲からない産業は「人からありがとうを言われていない産業」だと思っています。だから、農業も生産者が末端のお客様から「ありがとう」を言われる、その二者が繋がれる仕組みが必要なんです。今の仕組みでは、お客様が生産者に対して、「美味しかったよ、ありがとう」と言える仕組みはないに等しいですよね。このキャッチボールができることで、生産者にとってもモチベーションの構造につながります。
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それに加えて、生産者の方達のレベルアップもなければ、農業は良くならないと考えています。そのきっかけとなるのが、先ほどお話した流通です。僕らが考えているのは、生産者の方がメーカーポジションで販売のできるプラットフォームです。つまり末端売価を生産者自身で決定したり、販売できるお店を自分で決めたりできる環境を作るんです。そうすると、頑張る人はどんどん成長して伸びていき、頑張らない人は農業を辞めざるをえない。この仕組み作りが大切なんだと思います。

最初に話したビジョンも、達成するには「ビジネスとして魅力のある農産業」を確立する必要があるんですね。弊社はビジネスという点に特化して、農業を頑張れば弁護士よりも稼ぐことができますよ、農業を通してかっこいい大人になれますよ、といったように、「お金と人間の成長」を体感できる産業にしていこうと考えています。

プラットフォームを作り、農業を魅力ある産業へ。農業総合研究所が見据える未来とは?

ビッグデータを活用し、生産者が販売先を選べるプラットフォームつくり

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生産者がメーカーポジションで流通に携わることができるプラットフォームを、弊社では農家の直売所事業と呼んでおり、現在これがメイン事業です。今までの流通では、事前に販売するにあたり規格が決まっていて、規格から外れたB級品といったものは流通の現場で引き取ってもらえず産地で捨てていたんです。しかし、弊社のプラットフォームではB級品でも美味しいものであれば捨てずにお金にできる、という点が異なる点です。

このプラットフォーム作りに弊社ではITを活用しています。この点が、農業×ITということで注目されている要因でしょうか。我々のITプラットフォームを使っていただいたら、生産者の方は全国各地のスーパーに行かずとも、そのスーパーの売り上げや売れ筋、他の生産者の販売価格などをダイレクトに知ることができます。ビックデータの活用ですね。また、登録をしている約7000人の生産者たちの売り上げ順位も分かるようになっています。

これはまだ完成系ではありません。農業で「お金と人間の成長」を感じてもらう、農業を魅力ある産業にするには、直売所の事業以外にも収益がもっと入る仕組みや、色々な人とコミュニケーションがとれるツールをITで作っていきたいですね。今でも我々のプラットフォームに登録している生産者の方に1000万円越えプレーヤーはたくさんいらっしゃるので、ちゃんとやれば農業はもうかる仕事だと思っていますよ。

産業を変える物流プラットフォーム。その展開先は?

農業の流通について、一番難しいのは物流だと思っています。野菜や果物は、老若男女が毎日口にするものなので、できるかぎりやすく提供したいんですよね。もちろん生産者には高い収益を実現したいと考えています。一見矛盾しているように見えるこの考えを実現するには、物流プラットフォームの整備が必須なんです。

物流プラットフォームについては、今改良中ですが、完成すれば、肉やお菓子など他の食品はもちろん、雑貨など技術を持った小さいメーカーや職人さんがたくさんいるフィールドでは同じように活用できると思っています。一見、そういった領域は某フリマアプリ会社さんをはじめ、CtoCのサービスとぶつかるように見えるかもしれません。ですが、BtoBのフィールドで行う我々は4トン車や10トン車を動かせるので、物流コストを抑えることができます。CtoCでは宅配便などが主な手段になるかと思いますので、こういった点で差別化はできると考えています。

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違うフィールドという意味では、土地も展開を広めたいですね。今、販売先として国内1000店舗のスーパーと契約していますが、我々としては「まだ1000店舗の中でしか選べない」という認識です。いずれは、日本で農業をやられている方が海外でも簡単に販売ができるようにしたいと思っています。そのために、展開できる他の国や物流の手段などを広げられるように動いている最中です。

海外では、日本の農産物が1個数千円という値段で売られることもあります。価値がついて高値で売れることは素晴らしいと思いますが、海外に展開するにあたっても我々の考えは変わりません。毎日食べるものは安く手に入れて欲しい、生産者には高い収益が渡るようにしたい。そういう仕組み作りは海外展開でも同様に行うつもりです。

農業に最新技術で革新を起こすベンチャー企業が求めるのは熱い仲間。その本音にせまる

スキルよりも人間力。農業を変える企業にとってのプロ人材とは?

プロ人材、という言葉に対してスキルや考え方など様々な指標があると思いますが、私としては「基本的なことがしっかりできる人」だと思っています。小学校の道徳で学ぶような当たり前のことが、大人になるにつれできなくなる人って結構いると思うんですよね。あとは自分で自分をモチベートできる人。目標に対して妥協せずに成果を出せたり、仕事を自ら楽しめたりすることは大切です。

実際に仕事って、1人ではなく色々な人とチームを組んで行いますよね。そうした時に他の人への影響力ってかなり重要になってきます。例えば、私が10日間寝ずに240時間働いたとしても、限界はあるし農業が変わることってないと思うんですよ。でも、それを色々な人に1時間助けてもらう。これが1000人になれば1000時間の働きがうまれます。これは大きな違いですよね。
世の中を変えるには1人で戦い続けるのではなく、周りの人を巻き込んで一緒に働く必要があるんですよね。そうした時に必要なのは飛び抜けたスキルよりも、先に話した人間力ではないでしょうか。それを備えた人が結果として大きな成果を出していくと思いますね。

社員が団結して働く中で、会社が作るべき環境とは?

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働き方が多様化していく中で、正社員とか契約社員とか、そういった従来の区切りはなくしてもいいと思っています。だから、週1で勤務する正社員がいてもいいと思いますし、反対に週5で働くパート・アルバイトがいてもいいと思っています。
私としては、今後正社員をもっと増やしていきたいですね。これは農業を変える仲間と私は捉えています。その雇用にあたって一番大切なのは、働く人に選択肢を作ってあげることだと思っています。会社の中に色々な人がいるのはいいことで、その中で各自が最大限の力を発揮できる環境は会社が作るべきではないでしょうか。
そうした様々なメンバーが団結力を持つのはいいことで、それであればサークルのように仲良しでも問題ないと思っていますね。ただ、弊社が今後発展することは日本の発展にも不可欠なので、サークルのノリであっても理詰めをするべきところはしっかりできるようにするのを社員には求めています。

最後に

弊社の社員の中でもプロ人材にあたるような社員は、他人に左右されずに自分で決めたことをやり抜く力を持っています。技術も大事ですが、それは後から身につけることもできます。それよりもやり抜く力や人間力を持った人、そして農業を変えたいという熱い意志を持った仲間とぜひ出会いたいですね。

インタビューした人

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大澤 亮

5度の事業立ち上げを経験し、過去に2度事業売却したシリアルアントレプレナー。
1996年に新卒で三菱商事株式会社に入社、タンザニア駐在経験(ODA担当)を経て、帰国。同社退職後、1999年に慶應義塾大学大学院(経営管理研究科修士課程)に入学と同時に起業、2度売却。(日本初の比較サイトを創業し米国企業に売却、EC事業を設立しサイバーエージェント社に売却)

その後、株式会社ドリームインキュベータに入社し、大手企業とベンチャー企業両方の経営コンサルティング、ベンチャー企業投資も担当。同社退職後、土屋鞄製造所に取締役兼C.O.O.として入社し、2年で売上20億円から45億円、経常利益も2倍以上にして退職。その間、人事担当役員として数百人を面接。

2009年 株式会社Piece to Peaceを創業、2013年にスキルのマッチングプラットフォームshAIR(シェア)を創業し、会員1万人に。2015年には、週2、3回で業務委託契約で働くプロ人材(助っ人プロ)と、人手不足の企業の仲介サービス「CARRY ME」のコンセプトを立ち上げ、1年で黒字化達成。300人以上の経営者や人事担当者から採用の相談にも応じている。
著書 「世界をよくする仕事で稼ぐ」 (プレジデント社より出版)

アカデミーヒルズ(六本木)等での講演多数。

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