働き方改革専門家

外国人雇用 ”非高度”人材の受け入れで何が変わる?

外国人雇用

企業の人手不足が解消する兆しがなく、採用の担当者であれば肌感覚で採用難をひしひしと感じていらっしゃるところだと思います。

各種統計上からもくっきりと「人手不足」の状況が読み取れ、有効求人倍率は、平成30年8月の数値をみると、1.63倍となっておりバブル期を大きく上回る「売り手市場」状態となっています。完全失業率も減少しておりこちらもバブル期に近い完全失業率の低さとなっています。

このような全国的に人手不足を解消するべく、現在政府では外国人労働者の受け入れについて活発に議論がなされているところです。

日本における外国人労働者政策の方針が大きく変わる

2018年6月に政府が公表した「経済財政運営と改革の基本方針2018(骨太の方針)」の中でも、必要な分野において、「専門的・技術的な知識やスキルを有する高度外国人材」ではない非高度外国人材に対して、就労を目的とした新たな在留資格の創設が明記されました。

これまでの政府の外国人労働者政策の基本的な姿勢は「専門的・技術的な知識やスキルを有する高度外国人材」を積極的に受け入れる一方、単純業務等の分野については労働力不足への対応等での理由では原則受け入れないというようなものでしたが、この方針を大きく転換することになります。

すでに我々の暮らしの中に多く存在している外国人労働者

実際私たちの暮らしの中に、外国人労働者は多く存在しています。

経済協力開発機構(OECD)加盟35カ国の最新(2015年)の外国人移住者統計で、日本への流入者は前年比約5万5千人増の約39万人となり、前年の5位から韓国を抜いて4位に上昇したという結果があり、このことからも日本に多くの外国人が流入していることがわかります。

現在日本で就労する外国人はどのような方たちなのでしょうか。

技能実習生

技能実習生

外国人雇用の問題が出る際に、「技能実習制度」というワードも頻出します。現在日本では
国内の外国人労働者の約20%がこの技能実習生というデータがあります。

そもそも技能実習制度は、途上国への技能移転による国際貢献を目的として1993年に始まった制度です。
制度開始当初は、在留期間は2年間、対象職種も17職種と限られていましたが、その後、在留期間の延長、職種の拡大が続き、現在は最長5年間、77職種139作業となっています。

制度開始当初は製造業メインであったものが、現在では農業や介護も対象となるなど業種も拡大してきています。

この技能実習制度は、人手不足に悩む地方企業等で実際は「途上国への技能移転による国際貢献」という意味合いが薄れ単純労働力として悪用される例等もニュース等で話題となりましたが、受け入れ企業での労働基準法違反行為や最低賃金を守らない等の問題は後を絶ちません。

留学生

また、日本に留学に来ている外国人留学生も現在コンビニや飲食店を中心に重要な労働力となっています。都心を中心にコンビニでは外国人の店員さんを多く見かけるようになりましたが、全国のコンビニで働く外国人は、大手3社(約5万店舗)だけでなんと4万人を超えているという統計もあるそうです。

外国人留学生については、そもそも「留学ビザ」で日本に在留しているわけですので、日本滞在の目的はあくまで「留学」です。そのため、無制限に働けるわけではありません。

具体的には、外国人留学生は「資格外活動許可」とう認定を受けた場合に、アルバイトを行うことができるようになります。

そのため企業の採用担当者は、その留学生が資格外活動許可を受けているかどうかを確認し、許可を受けている場合にアルバイトとして初めて雇うことができます。

資格外活動許可を受けている場合は、パスポートの許可証印又は「資格外活動許可書」が本人に交付されているのでそれを確認することになります。
この資格外活動許可を得た場合に、原則として1週28時間以内を限度として勤務先や時間帯を特定することなく、就労することが可能になります。(留学生が在籍する教育機関が夏休み等の長期休業期間は、1日8時間以内)。

資格外活動の許可を受けずにアルバイトに従事した場合は、不法就労となってしまいます。

会社にとっても、不法就労をさせたり,不法就労をあっせんした場合には「不法就労助長罪」 に問われることになり、3年以下の懲役・300万円以下の罰金が科せられますのでご注意ください。

外国人雇用と労務管理上の注意点

外国人雇用と労務管理上の注意点

外国人はすでに日本にとって欠かせない労働力となっています。実際すでに外国人を雇用しているという企業も多いかと思います。

外国人を雇用することになった場合に注意しなければならない点を確認しましょう。

①労働関係法令の適用・社会保険加入

日本国内で就労する外国人については、国籍を問わず労働基準法、最低賃金法、労働安全衛生法、労働者災害補償保険法等の労働関係法令の適用があります。
また、労働基準法第3条において、国籍によって労働条件を差別するということを禁止しています。

また社会保険や雇用保険についても、原則として、国籍のいかんを問わず日本人と同様の条件を満たした場合には被保険者として取り扱うこととしていますので、外国人だから社会保険に加入させなくてよいというような取り扱いをしてはいけません。

また、実務上外国人が「どうせ10年の受給資格期間は満たさないし、社会保険に加入したくない」というようなことを会社に要求してくるという話を聞きます。

外国人で、6か月以上社会保険に加入した方については、脱退一時金制度というもので払い込んだ保険料を一定程度還付される制度がありますので、こうした制度のアナウンスをして納得してもらうほかありません。

②外国人労働者雇用労務責任者の選任

 外国人労働者を常時10人以上雇用するときは、外国人労働者雇用労務責任者を選任する必要があります。雇用労務責任者は、外国人労働者の雇用や労働条件等に関する事項についての管理や、関係行政機関との連絡など、外国人労働者の雇用労務管理を担当することを職務とし、原則として人事課長、労務課長など各事業所の管理職の中から選任することになります。

③外国人雇用状況届出制度

会社は、外国人労働者(特別永住者を除く)の雇用または離職の際に、当該外国人労働者の氏名、在留資格、在留期間等について確認し、ハローワークに届け出ることが義務付けられています。

(1)外国人が雇用保険の被保険者の場合
雇用保険の被保険者資格の取得届(様式第2号)又は喪失届(様式第4号)に、
在留資格、在留期限、国籍等を記載して届け出ることができます。(雇入れの場合は雇入れ日の翌月の10日までに、離職の場合は離職日の翌日から10日以内に届出)

(2)外国人が雇用保険の被保険者ではない場合
届出様式(第3号様式)に、氏名、在留資格、在留期限、生年月日、性別、国籍等を記載して
届け出てください。(雇入れ、離職の場合ともに翌月末日までに届出)

外国人就労の新たな在留資格「特定技能」

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冒頭で述べたように、現在政府では深刻な人手不足に対応するべく、これまで認めてこなかった非高度外国人材に対しても就労を目的とした新たな在留資格「特定技能」を創設の検討を進めています。

この特定技能は、相当程度の知識又は経験を要する業務に従事する外国人向けの在留資格「特定技能1号」と熟練した技能を要する業務に従事する外国人向けの在留資格「特定技能2号」に分かれています。

特定技能1号

特定技能1号の在留期間は最長5年とされています。また家族帯同は不可とされています。

特定技能1号の対象として下記の14業種が対象として検討されています。
・建設業
・造船・舶用工業
・自動車整備業
・航空業
・宿泊業
・介護
・ビルクリーニング
・農業
・漁業
・飲食料品製造業
・外食業
・素形材産業
・産業機械製造業
・電子・電気機器関連産業

特定技能2号

特定技能2号の在留期間は制限がありませんし、家族帯同も可とされています。

そのため、その要件は厳しく運用されます。特定技能2号の対象としては特定技能1号の14の業種の中から下記の5業種が対象として検討されています。
・建設業
・造船・舶用工業
・自動車整備業
・航空業
・宿泊業

現在も議論が続いており、企業の採用担当者にとってもこの新たな在留資格がどうなっていくのかは引き続き注目していく必要があります。

外国人雇用の労務管理をチェックし、入管法の改正に備えよう

いかがでしたでしょうか。就労人口が減る中、企業においては働き方改革を進めることで女性の活躍やシニアの活躍などを促すという施策が進む中、外国人の雇用というのも避けて通れない状況にきています。

特に、飲食業界などにとっては特定技能の在留資格の創設によってこれまでの留学生のアルバイトだけでなく、本格的に就労してもらえるような環境が整うことになります。

今一度外国人雇用の労務管理などに不備がないか確認し、入管法の改正に備えたいところです。

この記事を書いた人

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寺島 有紀

寺島戦略社会保険労務士事務所 所長 社会保険労務士。 一橋大学商学部 卒業。 新卒で楽天株式会社に入社後、社内規程策定、国内・海外子会社等へのローカライズ・適用などの内部統制業務や社内コンプライアンス教育等に従事。在職中に社会保険労務士国家試験に合格後、社会保険労務士事務所に勤務し、ベンチャー・中小企業から一部上場企業まで国内労働法改正対応や海外進出企業の労務アドバイザリー等に従事。 現在は、社会保険労務士としてベンチャー企業のIPO労務コンプライアンス対応から企業の海外進出労務体制構築等、国内・海外両面から幅広く人事労務コンサルティングを行っている。 2019年4月に、「これだけは知っておきたい! スタートアップ・ベンチャー企業の労務管理――初めての従業員雇用からIPO準備期の労務コンプライアンスまで この一冊でやさしく理解できる!」を上梓。 寺島戦略社会保険労務士事務所 https://www.terashima-sr.com/

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