起業・パラレルキャリア物語

アクアビット航海記「ある起業物語」 vol.29〜流れにまかせ正社員へ

river-flowing-28761290721162mPZ

みなさん、こんにちは。合同会社アクアビットの長井と申します。昨年の8月からCARRY MEさんに連載している「アクアビット航海記『ある起業物語』」の第29回です。正社員になるにあたって、当時の私が何を考えていたのか、今回は掘り下げてみました。

流れにまかせ正社員へ

正社員になった私。それまでずっと派遣される側でしたが、これからは派遣する立場。第27回で、オペレーターさんとの絆がなくなったことでショックを受けたと書きました。私が正社員に取り立てられたことは、その断絶をさらに広げたはずです。

正社員の話をいただき、それを受け入れる決断。そこにどのような葛藤があったのか。正直なところ、自分自身のことなのにあまり覚えていません。正社員のお話が来たことで、これ幸いと満面の喜びを必死に隠し、内心で快哉を叫びながら受け入れたのか。はたまた、かつて尼崎市役所の外郭団体のお話を蹴った時のような気概を持ちながら、妥協の結果として正社員の話を受け入れたのか。うーん、どちらでもないです。そんな記憶はありません。

当時の私はただ、いただいたお話を受け入れた、ということだと思います。差し出された水を、さほど疑わずに飲むように。もちろん、水の匂いぐらいは嗅いだはず。つまり、正社員の話が自分にとって損か得か、は考えたはずです。

正社員を損得で考えると

hand-with-thumb-up-and-down
では、得とはなんでしょう。身分の安定。対外的な信用。収入の安定。挙げるとそんな感じでしょうか。逆に、損とはなんでしょう。収入の減少。束縛の発生。将来が固定。そんなところが思い浮かびます。当時の私は何をどう考えていたのでしょう。現在の私から当時の私へQ&A形式で問うてみたところ、怪しげな関西弁で返事が返ってきました。

まず損の観点から。

Q. 収入の減少についてどう思っていましたか?

A.スーパーバイザーの収入はなんやかんやと手取りで30万はもろてました。残業したら精算してもらえたっちゅうのも大きいです。いやぁ、ぎょうさんもらえましたわ。それまでのアルバイト、派遣社員、ブラック企業のどこよりもお金もらえてありがたかったです。当時ぼんやり思とったのは、実年齢よりも手取りが上回っとったらええんちゃう?ということ。ほんで、20代なかばの年齢でも30万はもらえてたからなぁ。正社員になったら、給与は固定性になるし、残業代も減らされるし。うーん。どないしょ、と思ったのは事実やけど、ま、正社員の提示額みたらせいぜい数万円ぐらいの減で済みそうやし、まあ損にはならんかぁ、と思いましてん。

Q.束縛が発生することは考えませんでしたか? 例えば社員としての身分に縛られるし、対外活動にも制約が課せられます。

A. うん、考えたよ。束縛はぼんやりとね。そらぁ確かに正社員の立場は損なるかもしらん。でも、社員になったからといって束縛されるかぁ? って思ってたぐらい。そもそも対外活動っちゅうても、SNSとかないし、どこにも何も書いたり喋ったりせぇへんし。そやからそもそも損とか全然思わへんかったわ。

Q. 将来が固定されてしまう、とかは思いましたか?

A. 正社員になったら、将来の自分のみちが狭なってしまうってか? たしかに関西におったときは、クリエイティブな職を考えとったけどね。そやから正社員になってもうたら、将来勤め人で固まってまうがな、っていう心配はちぃとだけ思ってました。でも、それまでも何回も転職繰り返しとったからね。まぁ次の道が決まれば辞めてもええかなぁ、くらいに思ってましてん。そやから将来が固まってまうこともあんまり損とか考えてへんかった。

続いて、得とは何かについて考えてみます。

Q. 身分の安定は得ではありませんか?

A. 確かにアルバイトとか派遣社員を転々としてばっかりやったからねぇ。でもあんまり正社員には憧れてへんかったなぁ。自分が人からどう見られるかも興味ないし。無頓着ってやつ? 身分がどうとかも興味なかったし、だから正社員になりたいとかもなかった。なので、得とはあまり思わんかったなぁ。

Q. 対外的な信用は得られたのではありませんか?

A. 確かにね。相方が歯医者やし、結婚するときも相方の親族からは結構冷たい視線を浴びたからなぁ。たしかに正社員になって見返したろ、っちゅう気持ちはちょっとあったかも。歯医者の夫やし、せめて正社員の肩書ぐらいは持っとかんとなぁ、という気持ちもちょっとはね。でもな、もうすでに乗り越えて結婚した後やったんよ。正社員の話って。これが結婚前やったら釣り合いとるために正社員にもう少し前向きやったかもしらんけど、すでに結婚してたから、いまさら対外的な信用、って言われてもピンと来うへんでしょ? そやから、対外的な信用って言われてもそれほど重要ではなかったなぁ。

Q. 収入の安定はどうなんでしょう?

A. これは、、、一番あったかもしれへん。所帯も持ったし、奥さんも派遣社員の不安定よりは、っていうことは思ってたかなぁ。でもね、一年ちょっとスーパーバイザーやってたけど、毎月結構なお金もろててんよ。定期的に。そやし、その頃はうちの相方も大学病院に勤めてたし、お金に不足は感じひんかったんとちゃうかなぁ。ただね、ちょうど正社員の話が来た頃って、相方がお仕事休まんならん事情ができたんよね。え?なんでかって? 子ども。子どもがでけてん。まぁ子供ができるまでもいろいろあってなぁ。話せば長くなるから、今日は堪忍して。ただ、子どものことでアクシデントがあったから、正社員にふらっと流れてしもたのかもしらんなぁ。

Q. 怪しげな関西弁でお答えしてくださり、ありがとうございます。

正社員になって変わったこと

Move Task Woman Job Monitor Relaxed Pose
結局、私が正社員の話を受け入れたのは、将来的な視点からというより、その時の事情、とくに子どもを授かったことが大きかったのです。でも、変なプライドで正社員の話を断ったりせず、さりとて、正社員に過大な幻想を抱くこともせず。私は自然に正社員の話を受けたのでした

正社員になったことで、より多くの仕事を任されます。それまでは派遣社員だから現場で滞りなく集計業務を進めていくだけでよかった。でも、正社員であるからには違う仕事も担って行かねば。正社員になったことで、私はより上のスキルや広い視野を得ました。たとえば、オペレーターさんやスーパーバイザーさんの出退勤管理システムのメンテとか。パソナソフトバンクに所属する皆さんは、出退勤の際に社員証に印字されたバーコードを読み取ります。Accessによって作られたそのシステムは、現場システムとYBPの別フロアにあるパソナソフトバンクの事務所にある分析システムの2つからできていました。ところが、このAccessはカスタムメイドで作られており、作った方もすでに離任していたため、メンテナンスを要したのです。私はこの勤怠管理システムのメンテナンスを任されます。また、これは少し後の話ですが、パソナソフトバンクからスカパーさんへ毎月提出する請負業務の請求書の作成も任されます。そして、これも少し後ですが、外のお客様の案件も手掛ける機会が来ます。スカパーの現場だけでなく、違う現場も経験させないと、という判断だったのでしょう。そんな私の下に、常勤のオペレーターさんがつきます。それは、毎日の集計作業の補佐が必要という判断から。そんな経緯で、私は上司になりました。人に指示する立場。それは私にとって久々の経験となりました。

結局、起業にあたって重要なのは、経験値だと思います。一つのことを突き詰めるのか。それとも広く浅く知見を持つのか。私は派遣社員から正社員に立場を変えたことで、広く浅い知見が得られました。ここで妙なプライドが邪魔をして正社員の話を断っていたら、私の成長にストップがかかっていたかもしれません。これは結果論ですが。でも、こういう話を頂いた時に躊躇せずすっと流れに乗っていけるのは、私の人生の特徴だと思っています。起業に至る人生で触れておくべきマイルストーンだと思っています。

次回は、仕事をいったん離れます。そして子どものことについて書きます。本稿でも過去の私が関西弁で語っていたけれど、初めて子を持つにあたり、いろんなことがありました。それらの出来事も、わたしの起業を語る上では外せないので。

この記事を書いた人

長井さんプロフィール画像
アクアビット長井

合同会社アクアビットの代表社員としてIT業界におります。kintoneエバンジェリストでもあります。独学の人生です。 旅行、読書、スポーツ、酒、音楽・映画、その他趣味嗜好は広く浅く持っています。
【URL】 http://www.akvabit.jp
【Facebook】
        個人 https://www.facebook.com/YoshikazuNagai.akv
        法人 https://www.facebook.com/akvabit
【Twitter】
        個人 https://twitter.com/akvabit
        法人 https://twitter.com/akvabit_llc

関連記事もご覧ください