起業・パラレルキャリア物語

アクアビット航海記「ある起業物語」 vol.27〜僕が僕であるために

みなさん、こんにちは。合同会社アクアビットの長井と申します。昨年の8月からCARRY MEさんに連載している「アクアビット航海記『ある起業物語』」の第27回です。僕が僕であるために勝ち続けなきゃならない。

今回は、成長に伴う痛みの話です。

集計担当であるために

「運用サポートチーム」で独り立ちし、集計担当となった私。当時、私が携わっていた業務の詳しい内容は忘れてしまいました。ですが、本連載を機会に思い出して書いてみましょう。

集計のサイクルは、大きく日次、週次、月次の3つだったと覚えています。特に重要だったのが日次です。毎朝、スカパーさん主催の朝会が開催されていたからです。「受付チーム」「登録チーム」「不備チーム」「変更チーム」「料金チーム」(第23回でパソナソフトバンクの管轄するチームについて書いた際、「料金チーム」を含めるのを忘れていました。)の前日分の結果をサマリーとし、A4用紙1~2枚にまとめた日報の提出が必須でした。その日報を提出するため、集計担当は朝一番で各チームが提出する集計レポートをチェックします。前後の日で数字に矛盾はないか。足し算がきちんと足されているか、累計、前週比などの計算に狂いはないか、などなど。内容に不備があれば再提出の依頼をチームにします。そして全チームの集計に問題がなければ、日報を作成し、印刷して朝会に提出するのです。

朝会はたしか午前中、10時か11時に開催されていました。つまり、集計担当はそれまでに各チームからの集計レポートをチェックし、それを取りまとめた日報を作成しなければなりません。時間的には結構タイトでした。朝会が終われば、その内容をどこか(確かスカパーさん)にデータにして送ります。午後は、チームごとに新たな運用フローが生じた都度、すり合わせて集計フローの変更を行います。合間を縫って週次や月次の集計タスクの対応。そして、集計業務自体を省力化するための試行錯誤の日々でした。 午後はそれほど差し迫った業務もなく、時間には余裕がありました。慣れてくると引き継いだ集計結果を提出するだけでなくその作業プロセスを省力化したくなるのが私のさが。次々と集計フローに工夫を加え始めます。

独りで受け持つ作業はそれまでにも経験がありました。日々のタスクがきっちりと決まった作業も「登録チーム」で経験済みです。ですが、朝のうちに締め切りが求められる作業は初めてでした。ですが、私には性に合っていたのでしょう。さほど苦労せずに業務になじんだように思います。

結局私は、2003年7月に離れるまで集計担当として3年半を送るのです。

学生の心であるために

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「運用サポートチーム」の日々は私に社会人としての基礎を教えてくれました。なにせそれまでの私はまともに就職した経験がなく、研修も受けなかったので。私が集計に慣れてゆくにつれ、「運用サポートチーム」の方々が安心の色を見せたみせたこともおぼろげに覚えています。

そして、私が集計担当としてなじんでゆくにつれ、各チームのスーパーバイザーからも集計について相談をいただきはじめます。場合によっては各チームに赴き、運用フローを伺うなど、外向きの活動にも徐々に手を出します。このあたりのことは正直、あまりよく覚えていません。が、仕事自体には悩みも行き詰まりもなく、順調に滑り出せたように思います。

ただ、それとは別に悩みは生じます。それは私自身の立場が変わったことによるものです。もともと私は立場や役職など気にしません。とはいえ、引き抜かれた私がどう見られたかは別です。前回も書きましたが「運用サポートチーム」へ移動したことは、所属していた「登録チーム」のオペレーターさんと私の間に距離を作ってしまいました。それは事実なのでしょう。実際にとあるオペレーターさんからも言われた記憶があります。私にとってはただ別のチームに移っただけのこと。移ったとはいえ、元のオペレーターさんたちとは楽しく過ごしていきたかった。私は変わらぬまま。たとえ結婚し、「運用サポートチーム」に移ったとはいえ。でも、周りはそうは見てくれない。そう、私の内面に変化が生じなくとも、立場が、外見が変わってしまったのです。

本連載の第9回で“起業”することで人付き合いの質が変わっていく、と書きました。わたしにとって高校、大学、そしてその後のアルバイト、派遣社員、そして「登録チーム」。どれもが学生時代の友達付き合いの延長でした。だからこそ私は「登録チーム」での日々が性に合ったのです。ですが「運用サポートチーム」に移ったことでその日々は終わります。学生さんが多かったオペレーターさんたちとの日々から、仕事のプロの集まる「運用サポートチーム」へ。それを機会に私は周りから社会人として見られるようになったのかもしれません。つまり、学生から社会人へ一段ステップを上がったのです。そのタイミングが私の結婚と重なったのは決して偶然ではないと思っています。

僕が僕であるために

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社会人として生きてゆくこと。それは果たして良いことなのか。いまも私にはわかりません。いや、社会人としての大人の判断が必要なことはよくわかります。「いつまでも学生気分やってんじゃねぇよ!」という言葉が、社会人と学生の違いを絶妙に言い表していることもわかります。そのように罵倒された社会人に猛省が求められるのもその通りでしょう。ですが、社会人になるということが、学生気分を捨てることと同じと言われると、今の私は首をかしげます。なぜか。

それは、この時の私が文字通り、余裕をなくしてしまったからだと思っています。現在の私はかなり悔やんでいます。そして20年近く悩み続けています。自分がこのとき、要領よく立ち回れなかったことを。学生の心でオペレーターさんたちに触れあい続け、一方で仕事をきっちりとこなす。その両立ができなかったことを。そうはいっても、当時の私には無理でした。多分、今の私でも無理かもしれません。それは私の性格の限界なのでしょう。いったん仕事モードに入ってしまうとチャネルの切り替えができない性格の。私は自分の心の不器用さに今もまだもがいています。本連載ではまだ書いていなかったと思いますが、私は仕事をしているときの私の性格があまり好きではありません。それは、この時の私が要領よく立ち回れなかったことで痛んだ心を今も引きずっているからだと思います。

当時の私は、「運用サポートチーム」に移ったことで、無意識に構えてしまったのでしょうね。「運用サポートチーム」に移っても同じ自分であり続けたい。自分と周りに壁を作りたくない。同じ自分であり続けなければ、とことさらに意識したくもない。当時の私はそんな風に考えていた気がします。ですが、結果としてそれは私には無理でした。くしくも結婚式の二次会で、オペレーターのU君と一緒に歌ったのが尾崎豊の『僕が僕であるために』。皮肉なことにこの曲を歌ったことで、私はオペレーターさんたちと離れてしまったのです。当時お互いをソウルメイトと呼び合ったU君とは現在も唯一付き合いが続いています。が、彼とも数年に一度会うのがやっと。他のオペレーターさんたちとはほぼ疎遠になってしまいました。あんなにもたくさんのオペレーターさんたちが二次会に来てくれたのに。

学生気分の甘えた考え。それを捨て、大人の社会のしきたりに自分をなじませること。それは、社会の一員として活動するには避けて通れない。でも、学生気分を保ったままでも仕事はできるはず。それが当時の私にはできなかった。これが現在も私の心に棘として刺さり続けています。決して「運用サポートチーム」の皆さんが悪いのではありません。仕事が悪いのでもない。それは私の心の問題です。仕事とプライベートを要領よくさばけなかった痛み。

この痛みこそが、30代半ばを過ぎてからの私を駆り立てています。たとえば、本連載を始めたタイミングで私が常駐先を抜け、完全なる独立に踏み切ったのもそう。Facebookで日々違うイベントを書きまくる理由もそう。すべては、その痛みに耐えられなくなった私が癒やしを求めての行動なのです。極論すれば起業もまたその行動の一つ。“起業”すれば、もう一度学生の自由さを取り戻せるのではないか。仕事の真剣さとバラエティに満ちたな日々を両立できるのではないか。それには日々違う自分で有り続けなければならない僕が僕であるために、書いてアップし続けなきゃならない。そんな無意識の衝動が潜んでいるように思えるのです。

これから先の連載で触れますが、30代前半の私は、仕事と育児と家の処分に明け暮れてゆくのです。そこには学生気分はみじんもありませんでした。

今回はいつもより重たく書いてみました。これに懲りず引き続きゆるく永くお願いします。

この記事を書いた人

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アクアビット長井

合同会社アクアビットの代表社員としてIT業界におります。kintoneエバンジェリストでもあります。独学の人生です。 旅行、読書、スポーツ、酒、音楽・映画、その他趣味嗜好は広く浅く持っています。
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