起業・パラレルキャリア物語

アクアビット航海記「ある起業物語」 vol.18〜航海記 その7

みなさま、こんにちは。合同会社アクアビットの長井と申します。この8月からCARRY MEさんに連載している「アクアビット航海記『ある起業物語』」の第18回です。前回に続いて起業に至るまでの歩みを語っています。今回は、私が社会に出るために足掛かりをつかもうとする話です。

データ入力の派遣社員を目指そうとするのですが。。。。

2つのデータ登録の仕事で思った以上にお金がもらえたことに味をしめた私。それまでは先輩に頼りきりだったので、自分でも派遣社員として他の会社に登録しました。時代は1998年。派遣社員に登録する作業も現在のようにWeb経由では行なえなかった頃です。多分、電話か何かでアポイントを取り、訪問したのでしょう。たかが登録。現在のわたしから見ればなんのことはありません。ですが、当時の鬱からの回復途上にあった私にとってみれば、回復の証でもあると思います。その会社の名はエキスパートスタッフさんです。現在も派遣業界では大手で通る会社ですよね。

登録からほどなくエキスパートスタッフさんからオファーが来た仕事が、FileMakerへの入力でした。自宅のパソコンにFileMakerをインストールし、東急ハンズの商品のポップを作成し、納品する。デザインスキルは不要で、価格や商品名を入力する仕事だったように覚えています。それは、私にとって初めての在宅ワークでした。

話はそれますが、本稿をアップする10日ほど前にFileMakerの案件を受注しました。そして私がFileMakerに携わるのはこの時以来、19年ぶりなのです。当時は右も左もわからないオペレーターとして、現在は起業したエンジニアとして。この記事を書くタイミングでFileMakerの案件が受注できたことは何かの縁なのでしょうか。感慨もひとしおです。

さて、FileMakerへの入力を行なっていた私ですが、この案件は程なく終わってしまいます。そして、それとともにパタリと新規案件が来なくなったのです。当時の私は派遣社員とは、派遣会社から依頼された作業を受けるだけ、と考えていました。つまり、受け身です。ですが、それではダメなのですね。たちまち収入が途絶えてしまいました。現在なら反省できますが、当時の私は自分の仕事ぶりを評価してもらうための働きかけをまったくしていませんでした。例えば、営業さんに積極的に連絡するなど。これは日本ワークシステムさんの時もそうでした。この時、私がすべきだったのは、案件ごとに私の仕事ぶりがどうだったかを謙虚に教えてもらい、それを次に生かすことです。これがまったくできていなかった。私は完全に受け身で流されていました。

収入が途絶え、困った私はまたしても政治学研究部に頼ります。ところがこの時私を助けてくれたのは、政治学研究部の先輩ではなく後輩でした。彼が入っていたバイト先を抜けるにあたり、後任として私を紹介してくれたのです。後輩にも感謝しかありません。そこは社会保険労務士事務所。西中島南方駅の近くでした。

派遣社員からアルバイトへと戻る

日本の自転車

この社会保険労務士さんの名前は菊池(地?)さんだったように思います。ですが、事務所はもう閉じてしまわれたのかもしれません。当時、菊池さんはすでに年配だったし、いま検索しても見つからないし。こちらではオフコンに社会労務のデータを登録していました。社会保険労務士さんですから、取引先の給与データなどを入力していたのでしょうか。もう記憶のかなたです。データ入力以外で覚えているのは、印刷した伝票を週2回ほどのペースで福島区の取引先に届ける作業です。この時、私は西宮の自宅から毎日自転車で通勤していました。そして福島区への伝票お届けも自転車でした。いわば趣味と実益を兼ねたような日々。いま思えば気楽な作業でした。この時の私に研ぎ澄まされた才気があれば、ソクハイさんみたいなサービスを立ち上げていただろうに。そして今頃はキリマンジャロの頂上でアイスかき氷を食べていただろうに。ともかく、そんな私の自転車通勤の日々は数カ月で終わりを告げます。確か1998年の10月いっぱいまで。社会保険労務士のアルバイトを辞めるいきさつは次の連載で触れたいと思います。

芦屋市役所から社会保険事務所まで続いたデータ入力オペレーターの日々は、私の打鍵能力を鍛えてくれました。後年、システムエンジニアとしてさまざまな現場を渡り歩く中、自らの打鍵スキルには数えきれないほど助けられました。ですが、いくらキーボードの入力に長けていようとそれだけです。身を立てるには足りません。ましてや、結婚して家族を持つとなると。そう、私は結婚を考えるようになっていたのです。結婚のことを触れるには、1998年の秋から少し時間を遡らねばなりません。

結婚するにはデータ入力スキルだけでは無理

bulletin board system title

それは忘れもしない、1998年の2月末日です。その日、私は後日結婚したいと思える方と初めて会いました。言うまでもなく現在の妻です。なれそめを紹介すると長くなるのでここでは書きません。ただ、その一つにネットのBBS(電子掲示板)が絡んでいたことは言っておくべきでしょう。SNSがまだ市民権を得るどころか存在もしていなかった頃。メールが電話や手紙や電報に変わるコミュニケーション手段として存在感を増していた頃です。当時、ウェブサイト上で交流できる仕組みとして、BBSがあちこちにありました。要は、インターネット上の掲示板のことです。古きを知る方はパソコン通信のフォーラムを、または、いまや5chと名を変えた2chを想像していただくとよいでしょう。現在で言えば、SNSのグループタイムラインが相当するでしょうね。その電子掲示板で私と妻は初めて会話を交わしました。私がその掲示板を訪れるきっかけは長くなるので書きません。が、私の小学校の頃からの友人H君が関わっています。そして、私がその掲示板を訪れ始めてからしばらく後の2月末、H君が町田まで会いに行くというので私も付いていったのです。それまでエンもユカリもなかった町田。そこで現在の妻と初めて会いました。この時の道中は、いくつもの若気の至り系エピソードに恵まれ、いまでも思い出深いのですが、本連載では割愛したいと思います。

当時、時間だけはたくさんあった私。相変わらず本は読みまくっていました。ですが、一方で黎明期のネットにもはまりました。当時の言葉でいえばネットサーフィンです。いろんなページを巡っていました。メールや上にも書いたBBS、ICQなどを駆使して盛んにコミュニケーションもしていました。タイや香港、スコットランド、ロンドンの人とオンラインでやりとりしていたのもこの頃です。1998年といえばフランスワールドカップの年です。私はこの時、フランスワールドカップに観戦に行こうとしました。そしてその旅費を稼ぐため、スコットランドのマッカラン蒸溜所に英文の手紙を送り、雇って欲しいと頼んだこともあります。まだ付き合う前の妻を半蔵門のイギリス大使館や赤坂のイングリッシュ・カウンシルに連れ回したのもこの頃です(この後すぐに付き合ってくれ、とお願いすることになります)。

このころ、私はネットの世界からたくさんの恩恵を受けました。皮肉なことに沈んでいた私を飛ばせてくれたのは、内向的なオンラインの世界だったのです。上に書いたBBSやICQ以外にお世話になったのがメーリングリストです。当時、あちこちで立ち上がっていたメーリングリストにはよく参加しました。特に、2つのメーリングリストのオフ会には何度も参加し、交流範囲を広げました。重要なのは、当時の私がネットの世界だけで閉じこもらず、オフ会やイベントなどオフライン、つまりリアルな場で交流を深めようとしたことです。多分、オンラインの世界だけにこもっていたら、現在の私はなかったことでしょう。オンラインで知り合った方とオフ会で実際にお会いして見聞や知り合いを広げ、BBSで知り合った女性とリアルで会う。この時にオフ会で知り合った方々にはその後もとてもお世話になりました。女性とは結婚にまで至りましたし。この時に培ったさまざまな知見が、後の起業にも役立っていることは言うまでもありません。良き妻を得られたことも含め。

鬱に陥った過去を吹き飛ばすかのような活発な日々。この頃の私は自分が何になれるのか、何で糧を得るのか、自分の将来を必死に模索していました。物書きとして身を立てる道を探り、本を読み漁って世に出るヒントを得ようとし、オフ会に出て人との繋がりを求め。この時期の私に、まだ起業という考えはありません。ですが、私の心の在り方はすでに起業を目指す人のそれでした。勤め人におさまろうという気持ちはこの時点でもまったくありませんでしたし。

ところが、そんな私が勤め人になろうと試みます。私が入り込んだそこは、ブラック企業でした。次回は、そこでの日々を振り返ってみる予定です。

この記事を書いた人

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アクアビット長井

合同会社アクアビットの代表社員としてIT業界におります。kintoneエバンジェリストでもあります。独学の人生です。 旅行、読書、スポーツ、酒、音楽・映画、その他趣味嗜好は広く浅く持っています。
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