起業・パラレルキャリア物語

アクアビット航海記「ある起業物語」 vol.8〜起業のデメリットを考える その2

みなさま、こんにちは。合同会社アクアビットの長井と申します。先月からCARRY MEさんに連載している「アクアビット航海記『ある起業物語』」の第8回です。これまで、第2回~第6回までは、起業の利点を中心に語ってきました。前回第7回からは、正面から起業の欠点を取り上げています。今回も引き続き起業のデメリットを探っていきたいと思います。

定期収入の優先がほとんどの方の本音です。

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安定した収入が見込めなくなる。これこそ、ほとんどの方が起業に二の足を踏む原因ではないかと思います。実際、“起業”すれば不定期な収入を覚悟しなければなりません。間違いなく。

勤め人であれば、毎月の収入額はほぼ決まっています。しかも正社員としての雇用契約の元で働いているのであればなおさら。給与テーブルに応じた額があり、それに諸手当が加算されます。ベースアップがあれば給与は底上げされますが、給与テーブルベースとした額であることは変わりません。変動する要素があるとすれば、残業時間に応じた時間外手当か、部門や個人の業績に応じて考課され、支給されるボーナスの大小でしょうか。

我が国の世帯の家計も、定期収入に基づいて設計されることが一般的のようです。特に定期的な支出については、定期的に定まった額の収入が入ってくる前提で計画されます。公共料金や租税公課の支払いが月単位になっているのも、給与が毎月一度支給される慣習があるから、といってよいでしょう。家賃やローン、光熱費に通信費、学費、習い事、保険。だいたいが月単位で支払われます。配偶者や扶養家族の有無によって違いはあるでしょうが、毎月決まった額が財布から世間へ旅立っていくのです。

毎月発生する支出の重みは、家庭を持っていればより感じられることでしょう。そのような毎月決まった額の支出ができるのも、毎月決まった額が収入として見込めるからです。ローンの審査にあたっては、毎月の返済能力が重要視されるといいます。また、分割払いのオプションでボーナス払いが一般的なのも、金額の多寡はともかく、夏冬2回の賞与が一般的に設けられているからです。「宵越しの金はもたねぇ」とたんかを切れるのも財布に金があるから。金もないのに宵越しも何もあったものではありません。事前に収入があるから使い果たせるのです。「マスター、今日はツケといてぇや」と言えるのも先に支払っていた実績があるから。そうでなければ、皿洗いの刑が待っているだけの話。

起業すれば不定期収入が主となる。

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“起業”するとは、定期収入の道が絶たれることを意味します。当たり前です。“起業”したら、あなたがあなた自身に給与を支払うことになるのですから。支払うためにはそれ以上の額を稼がなければなりません。ない袖は振れないのです。毎月決まった額の支払いが必要なのに、毎月決まった額の収入が見込めない。これは大問題です。だからこそ、”起業”してからも定期収入が得られるよう、皆さんあの手この手を模索するのです。私のように請負契約として大手企業の末端で作業したり、顧客と定期保守契約を結んだり。何とかして定期収入を維持しようとするのです。

本連載の第一回で、私はこう書きました。「そもそも“起業”できたとも思っていない」と。そう書いたのは理由があります。上にも書いたとおり、私は個人事業時代の多くの時間を大手企業の末端の現場で仕事して過ごしました。毎日同じ場所に通い、毎月決まった額の収入を得る。もちろん、勤務形態に応じていろいろなパターンはあるでしょう。ですが、情報技術業界にいる私を例に挙げれば、大手企業の開発現場に毎日通い、開発や設計に従事していました。つまり、はたからみれば私の日々の行動や金の流れは勤め人と変わらなかったのです。ただ違うのは契約形態が請負か正社員かどうかだけ。または職務や職能が違うだけ。そういう状況を自分で一番わかっていたからこそ、私は真の意味では独立も起業もできていないと書いたのです。(なお、補足しておきますと、本原稿がアップされたのは2017年9月末です。私はその直後の10月から常駐現場を離れました。その意味ではようやく独立・起業が達成できたわけです。)

本来なら起業とは独立自立の姿であるべき。ですがそれは理想の姿です。実際は“起業”したとはいえ半独立の方が多いのではないでしょうか。私自身がそうだったのですから。私が属する情報技術業界を例に挙げると、大手システム案件の開発現場には同様の方が多いように見受けられます。システム請負会社の社員でなければ、多くは個人事業の主か社員が一人だけの法人代表として頑張っていることが多いようです。なぜそうした方が多いかといえば、上に書いた通りです。定期収入が見込めるから。

実際の話、定期収入のあるなしでは経営にも家計にも多大な影響があります

起業すれば支払うべき金額も増える。

しかも、“起業”するとさらに払うべきお金は増えます。それは所得税や住民税などの税金、会社が加入している公的年金、さらに健康保険や雇用保険などの保険料などです。会社に正社員として勤めていれば、そういった支払いは会社が立て替えておいてくれます。毎月の給与のうち、決まった額が会社によって支払われているのです。つまり、サラリーマンは手取り額以上の額をもらっているわけです。え?知らなかった? 大丈夫。私も会社に勤めていた頃はほとんど興味なかったですから。そんなものに興味は湧かないですよね。

ですが、“起業”した以上はそれらモロモロの支払いを自分でしなければなりません。それは上に挙げた支出項目に限りません。租税公課だってあります。支払うべき項目が増えることは、元手となる資金がより重要になってきます。手元の資金の増減に敏感にならざるをえません。勤め人の頃と違って収入が不安定になり、なおかつ支払うべきお金は増える。この点をおろそかにしてはなりません。怠ると苦労します。わたしのように。

金銭にまつわるストレスは人によって違うはずです。それは、人によってはとてもつらいはず。特に家族を持つ人にとってはなおさらです。収入が不安定になれば、家族にまでそのしわ寄せがいきます。家族に嫌な思いはさせたくない。だからこそ起業を望まず、つらかろうとも会社勤めを続ける方がほとんどを占めるのです。もしくは“起業”したとしても、実質的には勤め人と同じような働き方に甘んじるか。

起業に向けての最大の障壁。それはまさに、安定収入の確保にあると思います。逆に、安定収入のめどさえつけば、起業に向けてのハードルは下がります。または不定期収入であってもサラリー額を軽くしのぐだけの金額を得るビジネスモデルを確立するか。それらをどうやって得るのかは、熟慮と実力、それにつきるのです。

そんなことを書いている私自身が、熟慮することなしに独立へ踏み出しました。そして今もなお、試行錯誤を繰り返しています。その辺りの経緯については、おいおいつづっていくつもりです。

次回も引き続き、起業のデメリットを語っていこうとおもいます。ゆるく永くお願いします。

この記事を書いた人

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アクアビット長井

合同会社アクアビットの代表社員としてIT業界におります。kintoneエバンジェリストでもあります。独学の人生です。 旅行、読書、スポーツ、酒、音楽・映画、その他趣味嗜好は広く浅く持っています。
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